NookはB&Nという親から捨てられるのではなく、自立して電子教科書という子どもを産むのかも
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NookはB&Nという親から捨てられるのではなく、自立して電子教科書という子どもを産むのかも

りんがる aka 大原ケイ

バーンズ&ノーブルが電子書籍事業であるNook関連事業を分社化、というニュースは、アマゾンのキンドルとの競争でNookが低迷したから、という理由だけでは片付けられない。

今回の分社は以前から予測されていたものだったので、驚くに値しない。書店経営とEブックのR&D/販売という2つの相容れないビジネスをそれぞれ独立した上場企業にし、株を買う投資家が期待するものを分けて考えた結果だからだ。少しずつ衰退(B&Nは既にこの先10年で現在全米に700店ある店舗のうち3分の1をクローズする計画を発表している)しながらも、まだまだ手堅い紙書籍を扱う書店ビジネスと、これからもハード開発向けの投資を必要しながらも、キンドルを寡占企業にしないためのリスクを負い、将来的な見返りに投資するビジネスとに。

ところが、そういう考え方で分けるのならば、おやっと思わせるのが、Nook Media社の方にB&Nの教科書ビジネスが入っていることだ。アメリカにおける電子教科書ビジネスというのは期待されてはいるがまだまだ未開発の分野で、将来、高等教育機関で使われる教科書もやがてEブックが主流になるという見解だ。この20年で毎年高騰する大学の学費と同様、元々高値の付いた教科書の値上がりも相当なもので、大学側も生徒の負担を軽減するために積極的にEブックを取り入れようとはしているものの、肝腎の学生の反応が今いちで、思ったほど普及していないのが実情だ。B&Nの紙教科書ビジネスはこれまでずっと安泰で、実は一般書に代わって書店での売上げを支えてきたのが、新刊・古書双方の教科書の売上げだった。

Nook Mediaの頼みの綱と言えば、マイクロソフト社からの資金援助だ。両社の合意では、まずベースとなる株買収で3億ドルの投資に加えて、レベニューシェアの前払いとして毎年6000万ドル(最低3年)、コンテンツ買収のための費用が年2500万ドル(5年間)、こちらも全部で同じ約3億ドルになる計算。

B&Nとしてはこれまで海外進出は具体化できなかったが、SEC発表の文書ではマイクロソフトとB&Nは海外マーケットや英語以外の言語マーケットも視野に入れ、共同で事業を進める計画があることがわかった。

今回の分社でBN.comの事業もNook側に行くのは納得できるが、教科書ビジネスがNook Mediaに入っていることが今後マイクロソフトが考えていることを示唆しているものと思われる。折しもB&Nはこの4月にYuzuという電子教科書のアプリを発表し、iPadやウェブ上で使えるようにしている。もちろんこれはアップルのiAuthorなどと比べると地味で、ニュースにさえならなかったが。

これからは教科書がEブック化するのは必至であると考えているからこそ、マイクロソフトはデバイス事業を引継ぎ、あるいはマイクロソフトのタブレットでもNookのコンテンツを展開できる権利もキープした。そしてこのビジネスには学術書大手のピアソンも興味を示し、マイクロソフトとの提携を望んでいることからもわかる。

分社化された後も、B&Nの店舗ではもちろんNookオンリーで店内に販売スペースをキープし、デバイスを販売していく。ただ、稼ぎ頭だった教科書ビジネスがなくなったことで、いよいよ書店ビジネスに見切りをつけるための準備だったのではないかという考え方もできる。書店チェーンの方がリストラのための隔離部屋に送り込まれた、という図式だ。

バーンズ&ノーブルの四半期の業績の数字はここで見られる。
http://www.marketwatch.com/story/barnes-noble-reports-fiscal-2014-year-end-financial-results-2014-06-25?reflink=MW_news_stmp

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りんがる aka 大原ケイ
最近は東京ベースの文芸エージェント。日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。Hon.jp、文化通信にて海外の出版ニュースやコラムを提供中。