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病気やハンデのある子がいることを恥ずかしいとか迷惑とか思う大人が恥じるべき

このツイートが思いがけずバズっていたので補足。

1969年から続く子供向け教育番組「セサミ・ストリート」には、お馴染みのビッグバードやバート&アーニーといったキャラクターの他に、様々な問題に向き合う子どもたちのために限定で登場するスペシャル・キャラクターがいます。

子どもにもわかるように、そして決して同情してもらうためのお涙頂戴ストーリーではなく、理解してエンパシーを育てる(このempathyという言葉、ピッタリ来る日本語が思いつかないくらい今の日本に欠けているものだと思うのでこのまま使います)ために登場して、他のキャラクターやゲストと絡みます。

私が初めて目にして画期的だなと思ったキャラクターは、小さい頃に受けた輸血が原因で、HIV/エイズになったという設定のKamiキャミというキャラクター。性別はおそらく女の子で、ちょっとスペイン語のアクセントのある英語をしゃべる不思議っ子。

アメリカでもエイズは発覚当初、同性愛者やドラッグ常用者の病気とされ、感染ルートも治療法も解明されていなかったので、患者の人たちはものすごい差別を受けていました。映画『フィラデルフィア』やトニー・クッシュナーのドラマ『エンジェルス・イン・アメリカ』は素晴らしい作品だと思いますが、子供向けではないですものね。

セサミ・ストリートでは、このキャミというキャラクターが、自分がどうやってエイズにかかってしまったのか、どういう治療をしているのかといった事情の他に、HIV陽性反応であることで、どういうことをされたり言われたりすると悲しくなるのか、周りの人にどうやって接して欲しいのかをつつみかくさず話してくれるのです。

ユニセフのコマーシャルにクリントン大統領と出演したことも。

アメリカではもうHIV/エイズへの理解や治療もだいぶ進んで来たし、じっくりセサミ・ストリートを観る機会もないので、そういうキャラは期間限定で引退したのかなと思ったら、どうやらキャミちゃんはナイジェリアなどまだまだエイズが深刻なアフリカなどの国で放映されるセサミ・ストリートで活躍しているようです。

この他にもセサミ・ストリートでは、その時代にそった設定でキャラクターを登場させています。タイム誌の記事でも、親が兵役で不在だったり戦死したりした子どもと関わるキャラクターや、両親が離婚したキャラクターを紹介しています。

だから、今回の自閉症のキャラクター登場は画期的でも実験的でもないのです。このキャラクターの設定について、セサミ・ストリートの制作チームは多くの民間のNPO団体とも相談して、情報が医学的にまちがっていないか、子どもたちに分かりやすい言葉を使いながらも誤解が生まれない表現をしていないか、十分に検証した上で2〜5歳の自閉症の子どもたちとその親だけでなく、すべての子どもたちが使える教材を、ウェブサイトで提供しています。

自閉症スペクトラムという幅広い症状があり、今までアスベルガーと呼ばれていた軽度の疾患も別の病気ではなく、そのスペクトラムの一端であることがわかってきたりして、その原因や治療法もこれからの解明が待たれる、脳神経の異常なわけですが、アメリカでは、自閉症の子どもは平均の5倍の確率で、いじめの対象になるという調査報告もあり、スペクトラムのどこかの自閉症と診断される子どもは68人に1人、という計算だそうです。

もちろん、こういったキャラが登場する度にクレームをつける大人もいます。「子どもに見せるには早過ぎる」だの、「それが普通だと思ってしまうのはいかがなものか」とか。でも、セサミ・ストリートには、明確なミッションがあるので、自分の偏見が良識だと勘違いして難癖をつけてくるクレーマーに“考慮”して、いったん作ったキャラを引っ込めるなんてことはしないでしょう。

っていうより、やっぱりいちばんの“敵”は、親の偏見が子どもたちに植え付けられることなんですよね。日本だと特に、先天性の遺伝病でも、回避できないいきさつで病気になっても「親(それも決まって母親)が悪い」ってなりがち。病気や異常のある子どもはなるべく外に出さないように、人の目に触れないように、その方が子どもが傷つかないからというお為ごかしを言い、いっさい周りに迷惑をかけないようにって、隠してしまう。すると、かえってそれが物珍しくなってしまって、どうしても色眼鏡で見てしまうというスパイラル。

私は最近、縁あって『自閉症の僕が跳びはねるわけ』がThe Reason I Jumpとして英訳され、ヨーロッパでもヒットした東田直樹さんに会う機会を得ましたが、自閉症の症状や能力には個人差があって、なによりも、対人コミュニケーションで本人の気持ちやリアクションを直接本人から知ることができないので、誤解されてしまうことが多いんだなぁということが肌身を持ってわかりました。NHKが彼を取材したドキュメンタリーは、児童福祉文化賞や、イタリアでもシグニス特別賞を受賞。(ちらっと出ているので探してみてくださいw)

ということで、このジュリアというキャラクターが自閉症をどう表現するのか、憎めないおせっかいキャラのエルモが彼女の友だちとして、どうジュリアを紹介するのか、見守ることにします。






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最近は東京ベースの文芸エージェント。日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。Hon.jpにて海外の出版ニュースやコラムを提供中。ツイッター垢は@lyngualiinaで密かに復活。

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コメント (2)
はじめまして!フォローありがとうございます!この記事があまりに衝撃で、コメントを残したかったのですがうまくまとめられず・・・。シェアさせて頂きました。日本ももう少し、ハンデのある子に対して暖かい国になってほしいです。 これからよろしくお願い致します。
はじめまして。私は知的障害者の施設で生活支援をしているのですが、知的障害を伴う自閉症の子がセサミストリートが大好きで、毎日飽かさずセサミストリートのDVDを見ています。社会においても少しずつ、障害のことを理解してくれる土壌をこういった形を通して作れたら良いなと思います。しかしセサミストリートって結構シビアなアニメだったのですね
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