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black/whiteについての議論はもう終わってるんで今さら言葉狩りで揉めなくても

IT業界の人が、優良企業/悪徳企業みたいな意味でホワイトリスト/ブラックリストというのは止めようというツイートをしていて、それをそのまま日本でもやりましょう、みたいなツイート見たんだけど、なんだかんだ言って女性に対してもマイノリティーに対しても鈍感なアメリカのIT業界では必要かな、とは思いますが、日本でこれをやっても表面的な言葉狩りで終わるっしょ、みたいな話です。

アメリカでblackといえば、奴隷という労働力で農園を回すためにアフリカ大陸から強制的に連れてこられた人を祖先に持つ人、つまり黒人の人たちという意味で使われているが、これが差別用語なのかという話ね。これについてのディベートは実はアメリカでは既に終わって一段落ついている。ブラックという言葉がネガティブな意味で使われることが多いので、Afro-AmericanとかAfrican-Americanという呼称にしようという動きもあったし、そっちを支持して自らをそう呼び変える人もいた。

でも、アメリカにきて何世代にもなったし、自分はアフリカ文化になんの親近感も感じないから、アフリカ系アメリカ人というのもしっくりこないという人も大勢いた。しかもそれだと、近年、アフリカから自らの意思で移民としてアメリカに来ました、って人こそアフリカンアメリカンって名乗るべきじゃねーの?みたいな話もありますしね。

結局、Black Pride、Black is beautiful.というスローガンが生まれたことからわかるように、ブラックという言葉が問題じゃなくて、なくして欲しいのはブラックであることに対する差別なんだ、というところに落ち着いている。その他にも色々言葉があるんで、語感やコンセンサスという視点から紹介しておく。

nigger これはもうれっきとした差別用語で、公的な場で使ったりしたらそれだけで職を追われるようなタブーの言葉。今とは時代が違うととはいえ、マーク・トウェインの古典「ハックルベリー・フィン」でも使われているのでディベートがあるくらい。書くのも憚られるので一部隠したりする。noteではわからないので、一応そのまま書いてみましたが。

ただし、黒人の人が自ら使う場合には連帯感を持った呼びかけとして許されています。血は繋がってなくても同胞の黒人の人、という意味でbrother、sisterと呼びかけるのと似ています。ラップの歌詞では綴りをniggaとする場合が多いですね。ただし、他の人種の人が呼びかけに使うのはアウト。

negro  これも一般的にはアウト。ただし、60年代の公民権運動前後には公的な文書で黒人の人を指す言葉でもあったので、公民権運動前から黒人の生徒に奨学金を出しているUnited Negro College Fundなど一部残っています。キング牧師は自分をこう呼んでいたけれど、マルコムXはこの言葉を否定してAfro-Americanと自称してましたね。

colored    これはさらに公民権運動の前のsegregation人種隔離政策時代に黒人を指す言葉。まぁ有色人種、と訳しちゃえばわかりやすいかも。聞くだけでああ、旧い言葉だなぁ、という語感です。

minority   少数派、ということで白人以外をひっくるめてこう呼んできたわけですが、あと5年ぐらいでアメリカでは白人がマジョリティーではなくなるというのもあってか、最近は使われなくなる傾向にあります。

マスコミやSNSで発言しているブラックやラティーノの活動家の人たちはもう自らblack and brown peopleと臆面もなく呼んでますね。いや流石にアジア人が自らをyellowと呼び日がくるとは思えないんだが。

最後に余計なことを書いておくと、個人的には差別用語を禁止するより、まず差別をなくせよ、っていつも思います。特に日本は差別用語さえ使わなければ差別がないみたいな、すり替えが多いので。言葉に敏感なのはけっこうだけど、行動が伴わなければ意味ないって。


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