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メラニアに同情する気がみごとにこれっぽっちもなくなる暴露本「Melania and Me」

前々から早読みするよ〜と言っていた、元トランプの個人弁護士マイケル・コーエンの暴露本の方は、事前にマスコミに見本刷りが配られたみたいで、ワシントン・ポスト紙などから内容が少しずつ漏れてるんで、明日の夜中から読み始めるのもなんだかな〜という気もするのだが、そっちの刊行を待っている間に、夫人のメラニア・トランプと親友だと思って就任式のパーティーやら、ファーストレディーの慈善事業やらあれこれ世話を焼いた挙句、あっさり裏切られてトランプ陣営相手の訴追調査3件に協力中という女性の「メラニアとアタシ」なる暴露本にまで手を出してしまった。

著者の名前はステファニー・ウィンストン・ウォルコフ。「ウィンストン」はあの宝石で有名なハリー・ウィンストンの家系で、それを聞くといかにもワスプでエリートで上流社会のお嬢様が、スロベニア出身の玉の輿狙いのモデル崩れのビッチに騙された…と思うかもしれないが、ちょっと違う。母親の再婚相手で、自分を養女にしてくれたのがハリー・ウィンストンの息子だった、といういきさつで、著者のステファニーは、元々はキャッツキル在住のユダヤ系家族。祖父母がホロコーストの生存者だったという家柄。兄2人に負けないくらい背が高かったので少女時代はバスケや空手に没頭し、大学も自分で稼いで通ったそうな。

そんな著者がどんないきさつでメラニアと知り合ったのかといえば、ステファニーは大卒でサザビーズという2大オークションハウスの一つに就職、富豪相手にイベント担当してたら、アナ・ウィンター編集長のあのヴォーグ誌に引き抜かれ、そこでもPR/イベント担当として、ニューヨークでももっとも華やかとされるメトロポリタン美術館のガラパーティーや、ファッションウィークをプロデュースするようになったからだった。

2003年に、まだ20代の無名のモデル(しかも就労ビザなしに仕事していた疑いあり)だったメラニア・ナウスは、ドナルド・トランプが二人目の妻との離婚協議中(つまり手切れ金や養育費がいくらかというカネを巡ってのエゲツない攻防)に、一方的に見初められ、ヴォーグ誌が彼女を「シンデレラガール」として売り出した。その際に、「どのデザイナーの服を着ればいいか」「パーティーでどうふるまえばいいか」など、親切にあれこれステファニーがアドバイスしているうちに親しくなったというわけだ。

毎週のようにいっしょに高級レストランの目につかない席でランチをしてはお互いのことを話しているうちに、あれよあれよとドナルドが大統領になってしまい、メラニアが就任式で着るドレスの世話なんぞを焼いているうちに、トランプ陣営から「就任式のパーティーのお膳立てをやってくれ」と頼まれて、そっちも引き受けた。就任後はボランティアで一銭も受け取らないのに、メラニアの個人的なアドバイザーとして、彼女のファーストレディーとしての慈善事業立ち上げにも尽力していた。なのに、就任式パーティーの際の寄付金集めのカネがどこに行ったのかわからない(トランプ一家で着服したに決まってるんだが)ことの責任を問われ、給料が支払われていたわけでもない仕事から解雇され、さらに評判が地に落ちてもメラニアが庇ってくれない、という事態になって、ようやく都合よく利用されていたことに気づいてこの本を書いた、といういきさつだ。

メラニアって本当に何考えているのかわからなくて、マスコミからはじっと逆境に耐えている妻、本当はドナルドが嫌いで離婚したいと思っている、みたいに書かれてきたけど、この本を読むと、実はそうでもなかったんだな、ということがわかる貴重な資料かも。以下は、思い出すままに、メラニアの本性が書かれていた部分を書き出してみる。

まず、イヴァンカとまじで仲が悪い。というのも、イヴァンカは自分が目立とうと思って、本来ならファーストレディーの役目とされているホステス役の行事に顔を突っ込んできて、あわよくば自分がファーストレディーとして振る舞おうとするから。

具体的なエピソードとしては、2016年の就任式に大統領が聖書に手を置いて宣言する際、そばに立つのは妻と子どもたちという風習だが、イヴァンカはその瞬間に父に近いベストな位置で写真に写ろうとしていた。それを著者とメラニアが「イヴァンカ ブロック作戦」と称して、座席の位置やカメラの位置を調べて、アップにした画像ではイヴァンカはカットされ、イヴァンカがバノンの後ろになるようにした。これだね。

ドナルドの度重なる不倫スキャンダルに関しても、メラニアは結婚する前から彼がどういう男なのか、すべて承知しているので、バロンを産んだ直後にドナルドがポルノ女優やプレイボーイバニーと浮気していたことが報道されても、ちっとも驚いていないし、傷ついてもいない。

さらに、ドナルドが何をしても、今さら自分が何か言ったところで聞かないことをわかっているので、口出しをすることもない。ただ1度だけ、バカ息子たちのドンJRとエリックが、アフリカ象のハンティングがやりやすくなるように(無抵抗の野生動物を殺してその死骸を飾るという、ロクでもない趣味だ)お父ちゃんに法規制を緩くしてもらおうと頼んできたときに、メラニアが反対してやめさせた、というのはあるけど、それだけ。メキシコ国境で難民の親子が引き離されようとも、自分みたいにアメリカで成功することを夢見るドリーマーが国外追放になろうとも我関せず、なのだ。

メラニアのファッションと言えば、ナゼこのTPOでその服を着るよ?! それって何かメッセージ発してるの? みたいなことが度々あったけど、マスコミに対してそれに答えたことがない。でも友人のステファニーに言わせると「なんら意図があるわけではなく、ただ単に着たいものを着ているだけ。

例えば、浮気スキャンダルが発覚したすぐ後の一般教書演説の際に、白いパンツスーツで登場した時がそう。全身真っ白というのは、英米で女性参政権運動の時に、活動家の女性が着たシンボルカラー。ヒラリー・クリントンも民主党大会で大統領候補に正式指名された時も白いパンツスーツ姿だった。だから当然、マスコミはこれをメラニアが夫に当てつけているとか、何かしら女性の権利を主張していると捉えたけれども、ステファニーによれば「単に前からディオールのこの白い服が着たくて、一般教書演説がたまたまその機会だったというだけ」なんだそうだ。

そもそも、主要なアメリカのデザイナーはほとんどアンチトランプ派なので、メラニアにタダで服を提供するブランドがないから、自分で着たいものを選ぶしかない、というのもある。メトロポリタン美術館のパーティーの時はあんなに自分をチヤホヤしてくれたヴォーグ誌のアナ・ウィンターは、メラニアの服装のことを聞かれて「ミシェル・オバマは本当に着る服すべてに意味のあるファッションを見せてくれたすばらしいファースト・レディーよね」と答えるなど、もはやメラニアの存在さえ抹殺しているかのようだ。(ちなみにミシェル・オバマは夫の在任中に3回、ヒラリー・クリントンは1回、ヴォーグの表紙を飾っている。メラニアは、ドナルドと結婚した時にウェディングドレスで出たのが最初で最後)

そして物議を醸したメラニアの服といえば、テキサス州をハリケーンが襲った後に現地に向かうときに着たジャケットにデカデカと I REALLY DON'T CARE DO U?(どーでもえーわ、そうでしょ?)と書かれたのを着ていたというのがあったよね。

これはどうやら、トランプ大統領が何か良いことをしてもマスコミが取り上げないので、取り上げざるを得ないようにしてやった、というのが真相らしいが、それにしてもあんまり賢いチョイスとは言えないわな。

つまり、メラニアは相変わらず英語ができない、というのが真相のようだ。この間の共和党大会のスピーチでも、4年間で全く上達してないのがすごい、と思ったぐらい。トランプ政権側が発表したメラニアのプロフィールでは、英語と母国語のスロバニア語だけでなく、フランス語、スペイン語、イタリア語を含む5ヶ国語に堪能、とか書かれていたけど、誰もフランス語やスペイン語を話しているのを聞いた人はおらず、息子や両親ともスロベニア語で通しているとか。

それで思い出すのが、トランプが最初に候補者に指名された共和党大会でのスピーチ。アメリカの子どもたちの将来を思いやる素晴らしい内容で、一生懸命プロンプターを読んだはいいが、後で内容の一部が他ならぬミシェル・オバマのスピーチを盗作していたことがわかって、あれこれ言われた。親友のステファニーとしては、こういう無防備さがあるのでそれ以降、彼女のスピーチをチェックする役目を買って出たらしいが、結局、メラニアのスピーチにミシェル・オバマの文章を紛れ込ませたのは、ロシアと共謀した罪で、選挙対策本部長のポール・マナフォートとともに起訴されたリック・ゲイツで、こいつはメラニアの行動を探ってはイヴァンカにチクっていたらしく、盗作を仕向けた犯人はイヴァンカということらしい。

言語能力で人を判断するようなことはしないが、なんだかんだ言ってメラニアは自分を買いかぶっているところがある。11月の大統領選挙で当選した候補には、翌年の就任式までの間、President-elect(次期大統領)という肩書きが使われるが、メラニアはドナルドが当選した後、パーティーへの招待状や、就任までの肩書きを自らFirst Lady Electにしたがったという。でもあなたは選挙に勝ったわけじゃないし、他のファーストレディーもそんな変なタイトルは使わなかったとステファニーがなんどもたしなめたという。

それだけではない。アメリカでのファーストレディーの慣習として、何か自分のオリジナルの慈善事業を選び、ファンドレイジングや施設訪問を行う、というのがあって、例えばミシェル・オバマは子どもの肥満解消を目的にLet's Move!という運動を始め、ビヨンセと一緒にエクササイズビデオを作ったり、学校を訪問してダンスを教えたりしていた。メラニアが選んだのは、子どもの情操教育のために、話を聞き、表現活動を支援しようという運動だったのだが、自分でこれにBE BESTという名前をつけた。でもこのフレーズってネイティブが聞くと、変な具合で、BE YOUR BESTとかBE THE BESTじゃないとおかしくない?ってステファニーが進言しても、自分で考えたから、これでいい、ロゴも自分で考えた。また他の人の意見を聞いて盗作したと言われたくないとこのアドバイスを突っぱねた。(結局、ステファニーという後ろ盾を失って、この運動は有名無実のものになっている)

メラニアの過去には、売れないモデル時代のニュード写真が出回ったこともある。私は興味がなくてGQに載っていたあの写真ね、まぁ乳首もアソコもかくれているし、このくらいいんじゃないの?と思っていたんだけど、もっと昔のおっぴろげなのもあったんだね。しかもこれを流出させたのは、自身のスキャンダルから世間の目を反らせたかったドナルド自身だったらしいし。

結局、この本から読み取れるのはメラニアも夫に負けず劣らず、自己チューでエンパシーというものを持ち合わせず、夫との違いは感情を一切表に出さないところぐらいのもの。親友だと思っていたステファニーとメールをやりとりする時はハートやハグの絵文字ばっかりで、ステファニーが脊髄を痛めて手術しても、就任式パーティーの闇金疑惑の後も、ヘーゼンと絵文字メールちりばめた「お願い」メールを送ってくるだけだったという。

というわけで、これまでメラニアはトランプの人気終わったらサクッと離婚してバロンくんつれてスロベニアに帰ればいいよ、と思ってたんだけど、こうなったらいっしょに訴追されるか、犯罪人の妻として添い遂げてもらってもけっこう、という気になってきたね。ドナルド・トランプの方はもう暴露することがないほど、何を聞いても読んでも驚かないが、メラニアという人間が少しでもわかったのはオドロキだったし、けっこうお似合いのカップルなんだな、という感想しかありませんでした。チャンチャン。

あ、そうそう、暴露されてみればいちばん笑えたのが、ネットでバズっていが「トランプが振り向くと満面の笑顔なのに、向こう向いた途端、しかめっ面になるメラニア」映像。これなんだけど。

著者がメラニアに聞いたところによると、隣でそわそわしていたバロンくんがうっかり足を動かして、それがメラニアに当たっていきなりケリが入ったんで「痛ぇ!」となった瞬間だったらしい。なんだ、そんなことかい。バカバカしい。

あ、そうだ、安倍麻呂とアッキーが真っ先に会いに行った時のエピソードを忘れてたよ。そのうちそれを付け足して、このコラム、有料にしようかな。

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