東国原の蓮舫に対するコメントを批判する前に


東京都知事選において、完全な無所属といえる(バックに色々いる可能性は十分あり得るが、明確な証拠がないので取り敢えず無視)石丸氏が2位の獲得票で、無所属立候補とは言え、立憲民主党や共産党のバックアップがあった蓮舫氏を抑えたことは驚きの声を持って迎えられた。

そのような中で、蓮舫氏の「惨敗」をどう考えるかということが、「やけに」声高にメディアに言及され、色々な意見が出された。

特にTBS系昼のワイドショーである「ゴゴスマ」における、東国原氏の「蓮舫は生理的に嫌われていたから」という言動について、様々な反応、特に批判が寄せられたことは言うまでもない。

確かに、この発言は蓮舫氏に対する「侮辱」という意味合いを含んでいたことは事実であろうと推測される。もっと砕けた言い方をすれば「嫌がらせ」である(「いじめ」という表現で批判しているケースも目に付いた)。

しかし、ある意味この東国原氏のハラスメント染みた言動は、今回の蓮舫氏側の人々は真摯に受け止めるべきだったのではないかという思いも持っている。

例えば、蓮舫氏の敗戦理由として、「自民党批判による国政を全面に出しすぎた」、「共産党と組んだから」や、その余波による「連合からの積極的支援を得られなかった」、他にも「蓮舫の攻撃性が嫌われた」、または「石丸氏により無党派層が割られた」、「蓮舫陣営の選挙戦術の失敗」のような様々な意見が出されていた。おそらく、確かにそれらの要素も、小さな敗因の1つ1つではあったのだろう。

だが、今回の敗戦の主たる原因は、この「蓮舫氏が嫌われていた」というのがもっとも正しい敗戦理由だったのではないかという思いが強くある。
その1つの事例として、2016年の民進党所属時代の蓮舫氏は、参院東京選挙区で112万票取得してトップ当選であった一方で、その次の2022年では、立憲民主党から出馬し67万票で4位当選であることを挙げたい。
尚、2019年における別改選選挙では、蓮舫氏より知名度では到底及ばない立憲の塩村あやか氏が68万票余りの獲得で当選している。
つまり、蓮舫氏は確実に獲得票をどんどん落としているのである。もっと言えば、2010年の改選では、蓮舫氏は170万票も獲得していることも付け加えておく。

この間に何があったかと言えば、民主党政権の瓦解の中で、蓮舫氏の「2位じゃ駄目なんですか」発言や、党首となった際の二重国籍問題などが挙げられよう。
つまり、蓮舫氏に対するマイナスイメージが、その知名度のメリットと同等かそれ以上に進んでしまっていたという「事実」があるのである。

翻って今回の都知事選に視点を戻せば、石丸氏が無党派層の多くをかっさらい、それが蓮舫氏より得票を稼いだ根源であることは言うまでもなかろう。
確かに石丸氏の「フレッシュさ」や「ネット戦略」には耳目を集めやすい要素はあった。しかしながら、蓮舫氏の選挙と比較して、若年層はともかく中年以上の一定の「経験のある」有権者への訴求性があるほどの中身があったかと言えば、正直疑問符を付けざるを得ない。そもそも熱狂的支持のあった若年層からの得票など、投票総数全体から見れば、投票率も含めて大した影響はない。

言い換えれば、「小池都政を支持する気もないが、蓮舫さんにいれるぐらいなら、何かやってくれそうな石丸さんにでも入れておこうか」という層が多かったと見る方が合理的である。

尚、この「蓮舫さんに入れるぐらいなら」に対し、蓮舫氏側についた市民運動家や共産党関係の「選挙応援の仕方が」云々言う「連中」も多いが、大抵の選挙民はそんなことまで見てない(そこまで注意して見ている層は、そもそもこれ以前から色々と問題が取り沙汰されていて、東京と何の関わりもない石丸氏になぞ、こぞって入れるはずもないし、詐称疑惑の小池氏にも入れない)ので、「惨敗」の理由にすらならない。

そもそも東京は「国政選挙」においては、立憲共産の協力関係が現在もうまく行っているケースも多く、そのような中でも割と似たような選挙戦術が取られているので、特にアレルギー反応が出たというのはお門違いである。

また、共闘により連合の協力云々という話もあるが、連合の一部は蓮舫氏に協力したし、そもそも連合の東京での確実な票数など、積極支援している国民民主党候補の惨敗ぶりを見ればたかが知れている(他にも国民民主党の東京での参院比例投票数を見ても同じ)。

つまり、蓮舫氏の惨敗理由としては、正直「蓮舫氏が有権者に嫌われていた」と言う東国原氏の侮辱発言が、残念ながら概ね正しいと言わざるを得ないのである。

一方で、蓮舫氏以上の「弾(たま)」を左派側が立てることが出来たのかと言えば、考えられる限りは確実にNOであろう。つまり、最初から左派側に勝つ要素は、表向きは失点の少ない(あくまで表向きは)小池氏への信任度合いと相まって今回は(も)なかったと言って良い。
「誰が悪い」、「何が悪い」と、本質的な問題から目をそらして、「内部の誰か」のせいにしつづける事自体が滑稽と言わざるを得ない。

ここまでの言動をもってすれば、私もまた蓮舫氏やそのサイドを嘲笑する側ではないかと思われた方もいるかもしれないが、それは明確に違う。

その「蓮舫氏が嫌われていた」ことに対するケアを、この都知事選以前に蓮舫氏もしくは立憲側は積極的に行っていたのか、そしてそれを怠っておきながら知名度だけで何とかなると高を括っていたのではないかという疑問であり、蓮舫氏そのものの「資質」以前に選別されてしまっていただろうことに対する「もったいない」という感想故である。

例えば、まともに事業仕分けの顛末を追っていれば、「2位じゃ駄目なんすか」発言をあげつらうことの滑稽さhttps://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9b519304311299be202344acd262e9ae2714f340には気付くはずだし、二重国籍問題は、(帰化ではなく法改正による自動取得による二重国籍)すでに解消している。

しかしながら、ネトウヨ系の「攻撃」は年数を経ても止むことはなく、そのような言動がネットで拡散し続けることで、蓮舫氏のイメージは想像以上に一般の「受け」を低下させていたことは、得票数の経過を見れば明らかである。その現実を無視し続けたことが今回の結果であると言っても過言ではあるまい。

結局、この手の「誹謗中傷」に対してどうケアしていくかということが、左派が本来とるべき「ネット戦略」の「本道」であり、石丸氏にあやかりTikTokだYouTubeだなどということは、その次に取るべき「手段」なのである。
東国原氏の「嫌味」には批判すべき部分もあるが(特に「生理的」という部分は看過出来ない)、「嫌われたのが最大の敗因」という分析は、事実関係だけ取り上げるなら実は正しいと言わざるを得ない。

左派はネット戦略を重視すべきであるが、そのネット戦略においても「本道」より「脇道」を見てしまうことは、これ以降の選挙においても自らを苦しめる要素を残すだけであることを強く主張しておく。

追記。その点DAPPI裁判のように積極的に動くことは重要であり、言論の自由を履き違えた連中(特に積極的にデマ流す連中)については、ネットによる「反論」はもちろん訴訟含め明確に駆逐していくことを望む。

また、共闘云々という、毎回「負けた」時に出てくる分析は、奏功したケースでは全く「出てこない」のでいつも呆れている。尚、当然共産が付くことでマイナスになる「地方」もあることは事実だろうが木下チガヤなる人物の見当違いには毎回呆れる限りだ。



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