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PC-6601SR版「オホーツクに消ゆ」(非公式・勝手移植)紹介

2024年6月9日 記事作成
2024年6月10日 誤字・言い回し修正
「追記(2024年6月10日)」の部分を追加


 こんにちは、teshima takashi です。
 
 (株) ジー・モードさんが鋭意製作中のリメイク版「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ ~追憶の流氷・涙のニポポ~」、当noteでも情報を追っかけていて公に判明している情報を掲載しています。
 先日新しいPVや発売日が決定されて、各ECサイトで既に予約も始まっていますが、当noteの記事もその内更新する予定です。

 今回の記事はリメイク版ではなく、ちょっと変わった「オホーツクに消ゆ」について触れてみたいと思います。


公式移植版

 「オホーツクに消ゆ」は1984年の一番最初のオリジナルから、大まかに分けて以下のような感じで他機種に移植され販売されています。 

  1.  PC-6001版・PC-8801版 (1984年12月21日発売)

  2.  PC-9801版・FM-7版・MSX版 (1985年発売)

  3.  ファミリーコンピュータ版 (1987年発売)

  4.  PC-9801版 (1992年発売 LOGiN DISK & BOOK版)

  5.  フィーチャーフォン版 (2001年~2005年頃)

  6.  Windows版 (2003年発売 Project EGG)

 この内、1.と2.は「初期PC版」とも言われているみたいですが、1987年のファミリーコンピュータ版はシナリオが大幅に加筆され、ファミコンの機能を活かした素晴らしいリメイクとなりました。「オホーツクに消ゆ」の各版の中でもファミリーコンピュータ版が一番人気が高く有名であるのはご承知かと思います。

勝手移植版「オホーツクに消ゆ」

 有名なゲームには、そのゲームのファンが作ったいわゆるファンメイドの移植版というのがあったりするもので、「オホーツクに消ゆ」にもそういう非公式の勝手移植版というのが存在します。

 今から10年前の 2014年5月24日、東京都某所にて レトロPC の
PC-6000/6600シリーズの愛好家が集まったオフ会が行われていました。私もこの時のオフ会に参加させていただきまして、楽しい時間を過ごさせていただきました。関係者の皆様、その節はありがとうございました。

 この時、PC-6601SR向けに移植された「オホーツクに消ゆ」がお披露目されました。

 写真に写っているコンピュータは NEC PC-6000/6600シリーズの最後発かつ最上位機種であったPC-6601SR(以下「66SR」)です。1984年11月に発売され「Mr.PC」の愛称で親しまれました。俳優の武田鉄矢さんを起用した広告が作られ「六本木パソコン」という名称の方も知っている方もいらっしゃるでしょう。
 66SRは、1985年1月に発売された大ヒット機種PC-8801mkIISRに押されてしまい、PC-6000/6600シリーズもこの機種を最後として終焉を迎えることとなりました。

66SR版「オホーツクに消ゆ」のアバンタイトル


 移植をされたのはゆみたろさんという方で PC-6000/6600シリーズのエミュレータ「PC-6001V」の開発者であり、「ぱぴこんのこころ」というサイトで公開しています。

66SR版の特長


 そのゆみたろさんが66SR向けに移植した「オホーツクに消ゆ」に私は驚いたと共に嬉しくもなりました。それは以下のような形を取って移植されていたからです。

 ・シナリオ部分は PC-6001版
 ・グラフィック部分は PC-8801版
 ・BGMは ファミコン版

 PC-6001版とPC-8801版はシナリオがほとんど同じ(細かい所で違いがある)なので、PC-6001版のシナリオを利用しつつ、PC-8801版のグラフィックを流用するのはそんなに難しくないのかもしれません。ちなみに、PC-6001版のゲーム画面は以下になります。

PC-6001版「オホーツクに消ゆ」画面

 シナリオに追加変更分があるファミコン版を使おうとすると、その分新規にグラフィックを起こさねばならなくなるので、その分移植作業が大変になってしまいます。また、66SRのグラフィック機能は、PC-8801のそれと近い性能を持っていた為、PC-8801版のグラフィックを表示させることが可能でした。ゆみたろさんが作った66SR版では以下のようになっています。

66SR版の画面。PC-6001版と比べると表現力に歴然とした違いがある。
比較として PC-8801版「オホーツクに消ゆ」の画面。PC-88エミュレータはXM8を使用。

 さらに、上記のPC-8801版と比較してもわかるように、66SR版はテキストが漢字かな混じりの表記になっています。漢字を表現するにはピクセル数的に厳しい物も有りますが、それでも判別できるものとなっています。おかげでテキストが読みやすくなっています。

66SR版のゲーム画面

 今回記事を書くに当たり、66SR版の通しプレイを久しぶりに行ったので、いくつか画面を紹介していきたいと思います。超絶【ネタバレ】を含みますのでご注意ください。

東京・高田馬場にある栄通り。キャバレー「ルブラン」に向かいます。
釧路市大川町 第一の殺人事件の被害者「増田」の居住地。洗濯をしているのが増田の奥さん。
網走港 第三の殺人事件の被害者「白木」の部下・坂口
紋別の慰霊碑(実際に紋別公園に有ります)
主人公(新田哲司)の東京での部下・黒木。

66SR版のサウンド

 66SRはYM2203(OPN)というFM音源チップも搭載していた為、サウンド機能が当時としては充実していました。
 一方、PC-6001版は AY-3-8910(PSG) という音源チップを積んでいましたが、オホーツクに消ゆに関しては一部で曲が流れるだけでした。また、PC-8801版はBEEP音のみとなっており、ゲームプレイ中にBGMが流れるようなことはありませんでした。
 これが1987年のファミコン版になると、プレイ中にBGMが鳴ることは当たり前となっていました。ゲヱセン上野(上野浩幸)氏作曲によるBGM曲群はサウンドトラックもリリースされ、今でも名曲として名高い評価を受けています。
 ゆみたろさんが作った 66SR版では、これらのBGMをゲームプレイ中に流すことを目標とし、見事にその目標を果たしています。
 また66SR版では、エンディングに PC-6001版とMSX版で使われたエンディング曲(こちらも上野氏の作曲)が流れた後に、ファミコン版のエンディング曲「エンディングテーマ ~新たなる旅立ち」を流し、かつファミコン版のスタッフロールの再現も試みています。ファミコン版のスタッフロールはローマ字表記でしたが、66SR版ではこちらも漢字かな混じりとなっています。

 これらはいくら文章で説明しても実感がつかみにくいのでは…と思いましたので、ダイジェストの動画を作成して Youtubeにアップロードしました。

 再生時間14分強とちょっと長いですが、オープニングとエンディングは全て入れてみました。よろしければご覧になっていただけると幸いです。こちらの動画も【ネタバレ】を多数含みますので、ご注意ください。
 ちなみにオープニングのこの演出も公式移植版には無かったであろう演出で、秀逸だと私は感じております。

 なお、移植されたゆみたろさんよりオープニングとエンディングについて、コメントを頂きましたのでここに掲載させていただきます。

(1)オープニング
 取扱説明書に書いてあるプロローグをそのまま使っていますので、オリジナリティはないのですが、SRのハードウェアスクロール機能を無理やり使ってみたくてあんな形になりました。
 ファミコン版みたいにタイトルを出そうかとも思いましたが、ドラクエⅢのオマージュ的にシンプルにテキストのみにしました。途中でアイキャッチ的にオープニング画面が出ますしね。

(2)エンディング曲
 最後の曲だけFM音源を使ってます。
PC-98版のアレンジがとても良かったので触発されて耳コピに挑戦しましたが、音色づくりも含めて思った以上に苦労しました。でも個人的には満足いく出来になりました。

2024年6月9日 ゆみたろさんのコメントより

さいごに

 今回、勝手移植である66SR版「オホーツクに消ゆ」を取り上げたのは、「オホーツクに消ゆ」が一番最初のPC-6001版・PC-8801版がリリースされてから、ちょうど今年が40周年であること。リメイク版が今年リリースされること、そして一部の現役PC-6001ユーザーにはおなじみ「P6月間」だったからでした。
 勝手移植とはいえ、こんな素晴らしい移植が有るのにこのまま埋もれさせてしまうのはもったいないと思い、ゆみたろさんにご連絡させていただいた所、快諾いただき記事にさせていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
 余談ですが、2014年5月25日すなわちオフ会の翌日に行われた「ゲームレジェンド 20」において、サークル「TinyProject」が実機展示をしたのは最初の方でも触れましたが、このとき会場で目にした方も多かったのではないでしょうか。
 このゲームレジェンドで66SR版「オホーツクに消ゆ」を最後までプレイしてクリアしたのは、どこの誰でもないこのオホーツクバカの私です。

 それでは、皆様ごきげんよう。

追記(2024年6月10日)

 ごきげんようと締めてOK!と思っておりましたが、某方からこの点を取り上げるべき、というありがたいお言葉をいただきましたので追記します。

(1) PC-8801版には存在しない場面グラフィック

 PC-6001版とPC-8801版ではシナリオに若干差異があるというのは最初の方で述べさせていただきました。実は、PC-6001版にはあってPC-8801版には無い場面が有ります。
 それが屈斜路湖・和琴温泉(正確には共同浴場だそうです)の外観です。

PC-6001版和琴温泉外観。PC-8801版にはこの場面のグラフィックは存在しません。

 実はゆみたろさんはこの場面を実現するために、66SR版でグラフィックを新規に描き起こしていました。

66SR版でゆみたろさんが新規に描き起こした和琴温泉外観。

 絵心の無い私からしてみれば、この一枚絵を描くだけでも途方もない時間が掛かると思うので、これには脱帽です。

(2) ファイティングシュンスケ

 Youtubeの動画の方を見ると一目瞭然なのですが、最後の方でシュンが北竜会の男達と戦って逮捕にこぎつけるシーンが有ります。PC-6001版もPC-8801版でもBGMは流れません。ファミコン版では「ファイティングシュンスケ」という曲が戦闘シーンの時に流れます。

66SR版のシュンが戦うシーン。
「ファイティングシュンスケ」がBGMとして流れるが、テキストがタイミングよく表示される。

 ゆみたろさんが作った66SR版でもこの曲を流していますが、テキストの表示がこの曲のメロディーにタイミングを合わせて表示されるように調整されています。これもゆみたろさんのこだわりのポイントの1つと言えるでしょう。ぜひYoutubeの動画を見てみてください。

というわけで今度こそごきげんよう。

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