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ミルシムを主催してみたい人へ向けての覚え書き(後編)

本稿はこちらの記事の続きとなります。
未読の方はぜひ前編からお読みください。



レギュレーションについて

ミルシムイベントを標榜するからには、やはり「普通のサバゲー」とは異なる雰囲気や状況を作り出すため、独自のレギュレーションを設ける必要があるでしょう。このあたりは主催者の目指す方向性にもよりますので正解というものはありませんが、主要な観点を紹介しますので参考にしてください。

装備統制

見た目に関する規定です。最低限チーム毎に迷彩服の指定(マルチカム vs ウッドランドのようなイメージ)があると、識別用のマーカーをつけずに済むのでサバゲーっぽさを軽減することができます。
イベントによっては装備の年代やモチーフとする国に制限を設けていたり(例えばWWⅡの英米独の装備のみ参加可など)、ヘルメット及び特定の重さ以上のプレートキャリアの着用が必須だったりすることがあります。

携行弾数

参加者数や状況の長さにも左右されますが、自分のイベントでは1回の状況(90分間)につき携行弾数を小銃手270発/機関銃手600発くらいに設定していました。イベントによっては補給物資を受け取ることでBB弾の補充ができる等のルールを設けていることもあるようです。

LMGの火力は攻めにも守りにも不可欠

被弾の扱い

四肢への被弾はその腕/脚が使えなくなるものの戦闘続行可能としたり、ヘルメットやプレキャリへの着弾は1発耐えるなどのルールを設けると戦闘への没入度が高まります。片手だけでリロードするために銃を膝に挟むとか、歩行できなくなった隊員に肩を貸して運ぶといったシチュエーションが自然と生まれるためです。また、負傷者の手当はメディックだけが行えるというルールも定番ですが効果的です。

ATAKについて

現代戦をモチーフにした近年のミルシムイベントではATAK(Android Team Awareness Kitの略。詳しくはこちらを参照のこと。)というスマートフォンアプリを使用していることが多いです。これは米軍で使用されているATAK(Android Tactical Awareness Kitの略)の民生版で、軍専用の機能が幾つか削除されているほかは殆ど同じものです。味方の現在位置や地形、ランドマーク、敵の兆候などをリアルタイムで共有することができるため、プレイヤー視点からも運営視点からもとても便利なアプリです。

地図の上に座標のグリッドや目標の位置などをオーバーレイすることができる

しかし実際に導入しようと思うとチームごとのVPNまたはサーバーを用意する必要があり、多少インターネット関係の技術的な知識が必要になります。研究や仕事でプログラミングをしている人にとっては大して難しい内容ではないですが、未経験の人にとってはやや骨の折れる作業になるでしょう。

ではそのようなハードルを越えてでも必ずATAKを導入する必要があるか?と考えると、自分の答えは「No」です。「必ずしもATAKである必要はないが、参加者の位置を把握できるアプリは可能な限り導入したほうがよい」というのが個人的な見解です。
これには2つ理由があり、位置共有アプリが無いとプレイヤー間での「今どこにいますか?」というやり取りが頻発して無線を占有しますし、参加者が立入禁止区域に迷い込んでいても気づけないと安全管理上のリスクが生じるためです。

ATAKの代替案としては第一にAres Alphaが考えられます。これはエアソフト用に開発されたスマートフォンアプリで、iOS/Androidともに提供されています。国内でも何カ所が採用しているサバゲーフィールドがあるようです。

【余談】
民間向け限定でiTAK(iOS Team Awareness Kit)というアプリもありますが、ATAKから数年遅れてリリースされたため機能が足りないとか、UIが異なりすぎてATAK用のマニュアルが役に立たないといいった問題を抱えています。
運営側に参加者からの質問に対応する十分なリソースが無い場合はATAKに統一するために全員にAndroid端末を用意してもらうとか(中古の型落ち品なら放出品のポーチより安いものもあるはずです)、Ares Alphaを採用するなどの措置も現実的になってくると思います。
iPhoneユーザーはどんなアプリもiOS版が先にリリースされるのが当たり前になっているかもしれませんが、日本のいち民間人にはとても解決できない問題なので、あまり運営に不満をぶつけないようにお願いします(切実)。

オプション要素

ここまで説明してきた指揮系統、無線、火力支援、負傷ルール、位置共有アプリがあるだけで十分ミルシムとして成立すると思いますが、直近自分のイベントで導入して好評だった追加要素があるので紹介しておきます。

鉄条網とバンガロール

鉄条網(を模したPPロープ)を支給し、このロープが張ってある箇所はくぐったり跨いだりすることを禁止します。フィールドの地形に変化を加えることで、レイアウトのマンネリ感の軽減を期待できます。

気づいてもらえないと意味がないので、視認性の高い色のロープを使う

鉄条網はバンガロール(爆破筒)でのみ破壊できることとし、攻撃側にはそれを模した塩ビパイプを支給しました。プライベート・ライアンの冒頭で使ってるアレです。
本物は筒から伸びるワイヤーを引くと時間差で起爆する?ようですが、再現する方法が思い浮かばなかったので今回は音だけタイプのクラッカーを鳴らすことで起爆の合図としてもらいました。

長さ1.5m、直径5cm程度。それなりにかさばるし目立つ

ワイヤートラップ

たまたまYoutubeで発見したワイヤートラップがシンプルかつ大きな音が出て使えそうだったので導入してみました。パワーソースがカネキャップ火薬と輪ゴムのため入手しやすく、作動不良も少ないです。
ワイヤーにつながったピンが抜けると作動する方式なので、ワイヤーさえ発見できれば簡単に解除できます。今回はタコ糸を使用したので比較的見つけやすかったようですが、透明で細めのテグスを使えば強力な障害になりうると思います。

※メルカリで品切れになっていても作者の方にXでご連絡すれば再生産して頂けるようです

MVP表彰

状況中もっとも活躍していたプレイヤーを各チームから選出し、閉会式で発表します。受賞された方自身はもちろんですが、友人や同じ分隊の仲間が評価されても嬉しいもので、自然と皆さん笑顔になっていました。
自分のイベントでは有難いことに複数社から協賛品をご提供いただけたのでミルシムに役立つアイテムをお渡ししましたが、記念パッチや賞状など予算に応じて色々な賞品が考えられると思います。

ぶっちゃけ幾らくらいかかるのか

ここまで紹介した要素を盛り込んで20人 vs 20人規模のミルシムイベントを開催する場合をシミュレーションすると、貸し切り利用が3500円/人のフィールドと仮定して1人あたりの参加費がだいたい5000円くらいになります。(ちなみにこの金額設定でも主催の利益は0円です!詳細な内訳は下記のスプレッドシートを直接確認してください。見て貰えば分かります。)

募集開始時点では参加費の目安だけ提示しておいて、参加人数がある程度分かってから必要品を購入、それをもって1人あたり負担額を決定、のように進めると予測が外れて大赤字という事態は避けられるはずです。

おわりに

この記事を書き終わった時点で既に定員に達しているのですが(ありがたいことです)、2024/6/22(土)にミルシムライトin関東Vol.3を開催予定です。
新しい知見が得られればまた追加で記事を書くかもしれませんので、宜しければnoteでフォローのうえお待ちください。

また、もし本当にミルシムを主催してみようと思ってくれた方がいらっしゃれば自分にできる範囲でサポートしますので、XのDMでお気軽にご連絡ください。

それではまたどこかのミルシムでお会いしましょう!

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