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猫の道 ふたりはともだち

我が家にはかつて琳という名前の猫がいました。

琳くん


琳くんは外が好きな猫だったので好きなように家と外と出入りしていた。
大晦日に天に召され、6年間という短い人生に寄り添っていた中で、いなくなってから友達がいたことが分かった。大きな猫が我が家に現れるようになり、「あれ、琳くんは?」という目をしている。食べきれなかったごはんを食べてもらう日々になり、やがてそのごはんも底をつき、とうとう友だちのごはんを用意する生活になっていく。
飼い猫と地域猫。琳くんとニャンコは人の勝手で肩書きが変わるけど、この二人はなんてことなくすらっと友だちになってた。

そんなこんなで一定の距離感を楽しみながら八百屋がスタート。
家の前の軒下で急にお店をやることになって、猫をニャンコ店長と呼ぶように。
お客さんにも好かれて、地域猫なので好きな時に現れる。
時に午後から現れると「ごめんごめん」といった感じ。
無愛想な割にはずっと一緒に店番をする時間は二年ほど続き、暑い日も寒い日も見守ってくれた。
そして、ニャンコ店長も友達を連れてくるようになって「こいつにも何か食わせたってくれ」。なんとも美人な猫でキクちゃんと呼んでいた。キクちゃんの食欲がすごくてお腹に虫でもいるのかなと思うくらいだったが、本人は至って元気そう。二人を見守っていく日々。琳くんがいなくなってからは、もう猫とのご縁は途絶えるんだろうなと思っていた。

猫との縁が繋がっていく。

ニャンコ店長今日もよろしくと思ったある土曜日、品出ししているところにスピードのあるタクシーが通り、ニャンコ店長がはねられてしまった。病院へ急行したが乗っているタクシーの中で息を引き取ったことが重みで分かった。悲しみに溢れながら週末を終えた。

キクちゃんが現れ、「ニャンコ店長いないんだけど」という視線に一応事情を話し、黙々とごはんを食べては消えていく。
このニャンコ店長ー地域猫との距離感は飼っているという感覚はなく、独特な気持ちがあって特別な友だちを失った気分だった。
琳くんが与えてくれたようなニャンコ店長との時間がなくなってしまって、悲しみに溢れていた。
【つづく】


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