クローザー・則本から読み解く2024楽天投手陣


楽天・則本のクローザー転向が報じられて何日経ったでしょうか。

首脳陣は後ろから決める=クローザー、セットアッパーから固める方針を表明し、松井裕の移籍に伴って空いたクローザーの席には、先発陣の中で最も優秀な防御率を残した則本の配置転換という形を示しました。
その理由は「三振が取れて気持ちが強いから」。

疑問符の付けられる方もいると思いますが、個人的には勇気あるよい判断と感じます。
昨シーズンの楽天は投手力の弱さに苦しんだので、松井裕の移籍に伴って更なる苦戦が予想される中継ぎ投手を課題と捉え、改善に取り組んだことを評価したいと思っています。

とは言え、楽天は先発陣の高齢化という別の課題も抱えています。こちらを補強しないことには根本的な解決には至らず、言い換えると先発を補強すれば中継ぎも改善されて一石二鳥だったはず。

それでも中継ぎを固めることにこだわった楽天。
則本のクローザー転向からは首脳陣の苦心が垣間見えました。

先発の陣容、大丈夫?

楽天の先発投手(候補)には、シーズン通して投げたことのある中堅世代の選手がほとんどいないと個人的には思います。
その層に当てはまるのは、恐らく則本と瀧中、そして故障がちな早川の3人しかおらず、特に則本は1年目から投げまくって故障も経験、そろそろベテランと呼ばれる歳に差し掛かって年齢以上に激しく消耗しているようにも感じます。
また、この他は今ひとつ抜け出せない若手と下り坂のベテランに二分されるため、「イニングを計算できる先発がいない」という問題が浮き彫りになります。

楽天は、イニングを稼げる先発を確保することが昨シーズンからの史上最重要課題でした。
とは言え、この先発陣の「改善」に必要なのは120球とか7回8回とかをバリバリ投げきれるエース級の投手。
大変残念ながらそんなハイクオリティな投手は手の届く市場には恐らく存在せず、質の高い投手を外から補充する選択肢はありませんでした。
かと言ってイニングを稼げない先発投手を増やしても効果はありません。
1試合ごとの「質」が求められる先発投手の課題を克服するには、今いる戦力を育成・強化するしかなかったのです。

幸い、チームには25歳前後の早期に主力になり得る投手が数多くいます。
ドラフト1位で前出の早川や荘司、新加入の古謝に掛けられる期待は大きく、更には前出の瀧中や先発転向の内、松井友といった面々の出来がチームの命運を左右することになるでしょう。中継ぎ転向が噂される藤平も先発へ復帰する可能性はあります。
ファームの日程が過密になりますので、アピールの機会が増えたと捉えて張り切って欲しいですね。

では中継ぎ陣は?

中継ぎ投手陣の問題点についても目を向けておきます。
2023年はクローザー松井裕を除いてこちらも不安定でした。シーズン途中から渡辺翔がセットアッパーに定着したとは言え、各投手の登板数が嵩む結果に。
パ・リーグ最多登板の鈴木翔の61試合を含め、50試合以上登板した選手が楽天からは5人、更に宋49試合、酒居47試合と続きます。
多すぎです。

これは先発が長い回を投げ切れないしわ寄せが中継ぎに回った(持ち堪えるにはそれしかなかった)と解釈していいと思います。
実績の少ない若手を塩漬けにしつつ、勝ち継投が定まらないまま同じ投手をわちゃわちゃと起用したため、ブルペンの負担は想像以上に大きなものだったはず。
全員が試合序盤から肩を作っていたという噂もあり、果たして昨シーズンの負担がどこまで回復しているか気掛かりでなりません。

正直、昨シーズン以上に中継ぎが危ないんじゃないかと思っています。
松井裕の移籍という大穴が空き、内も先発転向。他に退団した投手もおり、前述した通り長いイニングを期待できる先発投手も今の所は不在。
少しでもマシな投手から使い潰してしまったブルペンは、陣容を変えなければいつ崩壊してもおかしくありません。
仮に先発投手陣が昨シーズンと余り変わり映えしないようであれば、また中継ぎフル回転で持ち堪えるしかないのです。
したがって、何が何でも中継ぎの層を厚くし、尚且つ改善することも喫緊の課題と考えるべきでしょう。

こちらも新しい投手の台頭が不可欠です。
例を挙げれば補強したターリーや現役トレードの櫻井、故障から復活の津留崎や西垣、2年目の小孫、伊藤茉、林、新人の松田らに掛かる期待は大きいでしょう。
更にブルペンの運用方法にも気を配り、「誰を、どこで」登板させるか、役割分担を設ける必要もありそうです。
登板プランを守れれば投手個々のコンディションの維持や改善に繋がり、より質のよい投球は望めると思います。
無論、プロたるもの甘やかしたり勝ち負けを度外視したりすることは許されませんが、中継ぎローテや登録の積極的な入れ替えなど柔軟にチャレンジしてみて欲しいと思います。

クローザー・則本の役割とは

こうした展望ですので、クローザー転向の則本に求められる役割は非常に大きなものになります。
クローザーはブルペン全体の運命を決めると言っても過言ではありません。
一番いい投手に一番後ろを任せ、その前を逆算しながら少しずつ固めてゆくことで、各投手の役割分担がより明確になり、トータルの負担も軽減できるでしょう。
「8回まで凌げば勝てる」という希望も心理的影響は大きいはずです。
1イニング投げるおかげで全投手にいい影響があるとすれば、先発として毎週活躍する以上に、毎日魅力的な貢献をチームにもたらしてくれるかもしれません。

こうした大役に則本をチョイスしたのはいい判断だと思います。
豊富な経験と気持ちの強さは首脳陣も認める所ですし、近年は鳴りを潜めていた奪三振能力もショートイニングで再点火する可能性は大いにあります。
不安定だった中継ぎから消去法で回すのではなく、先発で最も安定していた則本を転向させたことは、首脳陣がそれだけの危機感を持って臨んでいる証。
ファンとして、この判断がいい方に向かうことを祈っています。

つまり?

中継ぎがヤバいということです。
先発で最も活躍した則本がブルペンに回るほどブルペンがヤバいと首脳陣は見立てているのかもしれません。
松井裕の幻影を求めたのではなく、ブルペンの決壊を阻止するための決断というか。

日替わりクローザーでは投げる方も心許ないでしょう。
神経を使う守備イニングを1回でも減らすことで、これから育ってゆく若い投手たちのプレッシャーを少しでも和らげてあげたいのだと思います。
中継ぎを使わない・使えないという背水の陣的なスパルタ起用法でも、育つ投手は育つかもしれませんが、ちょっと無責任なので。
首脳陣としても何とか助けようと悩み抜いた末のクローザー・則本だと思っています。

先発・中継ぎの転向も複数あるようですので、お互いの気持ちが分かる陣容になるかもしれません。
挑戦あるのみです!

間違ってたらすいません!


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