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そこは桃源郷…|#シロクマ文芸部

街クジラを知っている?
太古の昔から大海原を気ままに泳ぐ、大陸のような大クジラ。もしも会えたら、是非その背中を見てほしい。鬱蒼とした森林に覆われた奥に、美しい街が作られている。

街クジラの背中は不思議な世界。
もしも背中に降りることができたら、初めにマングローブのジャングルみたいな所を通り抜け、だんだん山の中に入っていくように登っていく。見たことのない鳥たちのさえずり声や、見たことのない花々の香りに包まれてずんずん進むと、突然ぽっかりと視界が開ける。そこに、街がある。

おとぎ話に出てくるようなお城や赤い屋根の家などが並ぶ、どこか懐かしい感じのする街並みだ。でも、誰も住んでいない。遠くで教会の鐘の音が聞こえても、誰も祈りを捧げていない。ただ、静寂があるだけだ。

街クジラの背中の世界は、つかの間の夢。
気がつくと、ゆっくり海の中に沈んでいく。
街に長居をすると、知らないうちに海の世界へ連れて行かれる。海の中では、たくさんの魚たちが往来する賑やかな街になる。まるで、かつてその街で暮らしていた住民たちのように…

街クジラは、今もどこかの海をゆっくりと泳いでいる…かもしれない。海の底で眠っている…のかもしれない。

もしも街クジラに出会えたなら、潮吹きも見てほしい。それはそれは美しい虹が空にかかるから。夜空の潮吹きなら、星が歌い出すだろう。

[約600字]
今週も、空想の翼をたくましくしてみました。
なんとなく摩天楼がそびえ立つ街…ではなくて、中世のヨーロッパみたいな感じの街が頭に浮かびました。
どこかの古代遺跡風でも良かったのですが、パッと浮かんだ(行ったことないけれど)ヨーロッパの古い街並みにしてみました。

#シロクマ文芸部

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