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秋が好き|#シロクマ文芸部

「秋が好きなら告白しちゃいなよ!」
「ふたり、お似合いだと思うよ」

他人事だから、そんな風に言えるんだよね。私だって、チャンスがあるなら言おうと思っているよ。でもさ、みんなが知らないだけで、秋…秋山君も好きな人がいるんだよ。私じゃない誰かのこと…

秋山君を見ていると、切なくなる。友だちがたくさんいるけど、時々ふっと空の雲を眺めていたり、川面のキラキラを見つめていたり、独りになりたいのかな… と感じるときがある。私もそんな時があるから、そんな一瞬が被ることが多いから、つい秋山君を意識して見てしまう。でも、彼はそんな私のこと全然気がつかない。そしてそんな時は多分、私じゃない他の誰かのことを考えているんだろうな。

秋山君が教室の窓から校庭を見下ろして、下にいる友だちと何やら声をかけ合っていた。とびっきりの笑顔だ。その笑顔も大好き。私にも見せて欲しいと思いながら、遠くから眺めている。

「どうしたの?春川さん?」

突然、秋山君が振り向いて声をかけてきた。

「えっ?いや、仲がいいなぁと思って。元気な声だったし」
「うるさかった?ごめんね。春川さんは静かなのが好きだもんね。よく窓の外眺めてたりするよね。俺も雲を眺めるのが好きだけど『あの雲はソフトクリームみたいだな』とか、しょーもねーこと考えてるし」
「うるさくなんかないよ。それに静かなのが好きなわけじゃないし。私も雲を眺めてると『あの雲の上で眠ったら気持ちいいだろうな』とか思うし。ソフトクリームなんて普通だし、想像で何個食べたか覚えてないくらい。だから一緒だよ」
「なんか意外だったな。ものすごく真面目な堅い女子のイメージだったけど、春川さんって意外と面白い人だね」
「そ…そう?ありがとう」
「俺、認識変わった!変える」
「ありがと…」

秋山君は私に、とびっきりの笑顔を見せてくれた。

「俺の女子の友だち第一号でヨロシク!」
「えっ?あ、はい!」

これは… 脈あり?


[約820字]

曲からイメージとは違いますが、頭の中では↓の曲が流れていました。

#シロクマ文芸部
#秋が好き

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