銭湯の帰り道|#シロクマ文芸部
月の耳だね、ほら!
銭湯の帰り道、なにげなく見あげた夜空に浮かぶ月を見て、アユムが言った。
月の耳?どうして?
僕には月の耳が何のことか、さっぱりわからなかった。子どもの想像力には、いつも驚かされる。
耳の形してるでしょ?アーちゃんのくまさんと、同じ形してるでしょ?
あぁ、やっとわかった。半月が少し痩せたような月の形が、アユムの大好きなクマのぬいぐるみの耳の形を思い出させるんだな。
本当だ。でも片方しかないね。お顔も見えないね。ちょっと寂しいね。
後ろ向いてるんだよ。そして、もう一個の耳は、お掃除してるんだよ。
アユムは夜空の月を見つめて、巨大なクマ(もしくはパンダ)が片耳を掃除している後ろ姿を想像しているようだ。親バカ丸出しかもしれないが、うちの子は天才かもしれない。
ママに赤ちゃん産まれたら、赤ちゃんにアーちゃんのくまさん、ちょっとだけなら貸してもいいよ。
えらいな、アーちゃん!いいお兄さんになるな。ママに月の耳のお話もしてあげようね。
うん。
それからしばらくして… 月がニッコリ笑う頃に、アーちゃんはお兄さんになりました。
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三日月を見て「お口みたい」と思うことは良くあると思いますが、半月前後を見て「耳に見える」と感じること… ありますよ…ね😅
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