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ラムネとコーラス|#シロクマ文芸部(約800字)

ラムネの音感は、ちょっと残念だ。声がとても良いから、よけい目立つ。なんというか、自由に歌いすぎるのだ。コーラスには向いていないのかもしれない。

「ラムネ!そこはユニゾンだから、みんなとそろえて同じ音とリズムで歌ってくれないと…」
「ごめんね。空を飛ぶようなイメージがしたから… 」
「あとでソロのパートあるから、そこで好きなように歌いな」

友だちのミルクやココアたちから、また注意された。歌うのは大好き。だから原っぱや海岸で、自分の作った歌を一人で自由に歌っていた。それを聞いたココアたちが、コーラスに誘ってくれたんだ。でも… 僕の歌い方って変みたい。

「ラムネくん、一人で歌うことに慣れすぎていたんだね。君の歌には君の気持ちがとてもこもっているよ。だけど、大勢で歌うときは、みんなと心をひとつにすることが大事なんだ。わかるかな」
「わかる…と思うけど、多分わかってない」
「その気持ちがあるなら、大丈夫だよ」

サイダー先生も気にかけてくださる。

今日もコーラスの練習だ。歌うことは大好きだけど、ほんの少し憂鬱な気持ちも持ちながら。

「なんか今日のラムネ、声が小さかったんじゃない?喉が痛いの?」
「体調は悪くないよ。心配かけてごめんね」
「ならいいんだけど。この前ラムネが『空を飛ぶイメージ』って言っていたところ、私もなんだかそんな感じ湧いてきて… そしたら今日はラムネが静かに歌うから変な気がしたよ」
「そうなの!ココアが言うみたいに、私も今まではただ楽譜通りに歌っていたけどラムネの言葉で印象が変わったというか…」
「僕は『空を飛ぶ』って思っていたけれど、みんなはどう思っていたの?」
「私は風が通りすぎる感じかな」
「私は花びらがハラハラと舞うような」

ラムネはなんとなく、なんとなくわかった気持ちがした。みんなと一緒に歌を歌うということが。自分の感情だけで歌うのではないこと。仲間の声にも耳を傾けて思いやることの大切さを知った。


これ… 某漫画キャラから名前を借りてます。(人物設定とかは全く異なりますけれど)約30年前の…『NG騎士ラムネ&40』(エヌジーナイト ラムネアンドフォーティ)です😅
ラムネから懐かしい漫画を思い出し、自分のコーラス体験を絡めて書いてみました。

#シロクマ文芸部
#ラムネの音

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