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航空自衛隊三沢基地 視察報告

<期 間>
令和年5年10月11日(水)・13日(金)

<視察先>
(1)青森県三沢市
(2)航空自衛隊三沢基地(現地視察)
(3)三沢航空科学館 (現地視察)

<調査事項>
1,三沢基地の概要について
2,騒音対策・周辺対策について
3,三沢航空科学館 (現地視察)

<三沢市の概要>
市政施行 昭和33年9月1日
人口37,946人 (令和5年6月1日現在)
世帯数  19,455世帯
行政面積 11,987平方キロメートル
本州の最北端の青森県南東部にある三沢市は、東は太平洋に臨み、西は小川原湖を隔てて東北町、南はおいらせ町、北は六ヶ所村に接している。東西11キロメートル、南北25キロメートル、面積119,87平方キロメートルの長方形で、海抜57メートルの頭部への緩い傾斜をもった平坦地である。近郊の小川原湖をはじめ、十和田湖、八甲田山などの自然に恵まれた地域であり、伝統的な文化遺産および歴史的遺産も数多くみられる。

1,三沢基地の概要について

(1)基地の概要等
 三沢基地は終戦直の昭和20年9月に米陸軍の第32施設工兵隊が進駐し、米陸軍航空軍のための飛行場として拡大整備が行われた。昭和33年に航空自衛隊の北部航空方面多隊が発足して、基地の日米共同使用を開始し、以降わが国の安全保障環境の変化に合わせて順次部隊等の改変が実施され、現在に至っており、自衛隊及び米軍の戦闘機が常駐しており、安全保障上でも大変重要な基地である。
 航空自衛隊でも数少ない日米共同使用基地である三沢基地は、市域の約20%を占める。提供施設は、三沢飛行場施設(1,578ha)を中心として、三沢対地射爆撃場(766ha)、八戸貯油施設(17ha)からなり、総面積は約2,361haとなっている。また、自治体および運航会社と地元企業が出資する「三沢空港」もあり、軍民共用空港の顔ももっている。
 三沢市の令和5年度国庫支出金45億2,180万1千円のうち基地関係は12億8,734万9千円、基地交付金は21億8,279万4千円で14,7%が基地関係となっている。

(2)米軍の主な配備部隊及び機種
 主な米軍の配備部隊は、米空軍第35戦闘航空団、米海軍三沢航空基地隊、米海軍第7艦隊哨戒偵察航空群/前方艦隊航空司令部 隷下部隊等、米陸軍統合戦術地上ステーション三沢情報運用センターとなっている。配備機種はF-16戦闘機(40機)、P-8A長距離対潜、対地哨戒機(7機)、C-12 輸送機(1機)、EA-18G戦闘機(6機)。

(3)航空自衛隊の主な配備部隊及び機種
 配備部隊は北部航空方面隊司令部、第3航空団、北部航空警戒管制団、北部高射群、三沢ヘリコプター空輸隊、偵察航空隊となっている。配備機種はF-35A戦闘機(37機)、 T-4中等練習機 E-2C・D早期警戒機(13機) CH-47J、輸送ヘリ(10機)、RQ-4Bグローバル・ホーク(3機)となっている。

(4)三沢基地関係者の人口


(5)市及び市民への影響について

①騒音問題
 三沢市は米軍が三沢基地に進駐して以降、飛行騒音問題に悩まされている。三沢市、三沢防衛事務所、自衛隊の3か所の受付があり苦情発生件数その合計は、令和元年408件、令和2年度 548件、令和3年度401件、令和4年度177件となっている。三沢市における飛行騒音の要因は三沢基地に常駐している米軍機、航空自衛隊機、さらには国外の各基地から飛来する戦闘機の諸訓練と沖縄を除くと本土では唯一の対地射爆撃場での諸訓練によるものである。特に米軍F―16によるデモフライトには多くの苦情が寄せられている。現在、騒音度調査が行われている。

②米軍関係者による事件・事故及び基地周辺住民とのトラブル
 米軍基地を抱える自治体の共通課題は、米軍人等による事件、事故の発生とこれが及ぼす基地周辺住民の被害問題であり、三沢基地も例外ではない。現在までに米軍人による婦女暴行致傷、強制わいせつ、傷害、窃盗、住居侵入などの事件が発生しており、その都度による再発防止の要請を行っている。
 また、市内の米軍家族住宅から出される不法投棄された粗大ごみや基地内の汚染水処理施設から悪臭と騒音が発せられるとの苦情が寄せられるなどの衛生上の問題も発生している。


(6)市民との交流等について
 共存共栄の理念に基づいて、三沢市と三沢米軍基地はお互いの努力により非常に良い関係を築いている。公式行事ではジャパンデーやアメリカンデーなどの交流事業、米軍からの共同募金、防災における相互協力、ボランティア活動、小学生による日米交流などを通じ、地元や米軍との関係については非常に良好であるとの説明を受けた。三沢商業高校の生徒が米軍基地内でのホテル、娯楽施設食料品店でのインターシップも行われている。
 また、自衛隊北部航空音楽隊は学生への演奏指導やアメリカンデーでの演奏などを行っている。そして、令和4年から三沢基地の隊員食堂で提供されている「空自からあげ」三沢市内の飲食店で提供する事業をプロジェクトを三沢市と共同で実施している。現在23店舗で提供。

2,騒音対策・周辺対策について

(1)三沢市における基地対策について 
 「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」に基づく各種施策
 中核である「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」に基づく各種施策として、障害防止工事の助成(法第3条)、個人住宅防音工事助成事業(法第4条)、移転補償及び集団移転先地公共施設整備事業(法第5条)、民生安定施設の助成(法第8条)、特定防衛施設周辺整備調整交付金(法第9条)等の事業が挙げられる。
 防音工事は対象戸数7,400戸、実証済み約6,400戸(86%)の実績となっている。中でも市域の広い三沢市ならではの移転補償及び集団移転先地公共施設整備事業では5つの地区552戸が移転した。移転跡地は、公園やドッグラン、牧草地として活用されている。民生安定施設の助成事業では、配水場の築造工事、医療機器の購入、特定防衛施設周辺整備調整交付金による消防車両の整備、再編交付金交付事業では三沢駅前広場整備事業で園路・歩道・照明施設等の外構整備(交通ターミナル)公共交通機関の待合室等の建物整備が行われている。

(2)三沢市と三沢基地米軍との連絡協議会
 三沢市と三沢基地米軍との綿密な協力により相互の親善を図るとともに、両者の社会関係を改善することを目的に、昭和28年に条例が制定された。発生する諸問題に関する情報の交換や、市民と米軍相互間にある問題について協議している。共存共栄の理念のもと、緊密な協力により相互の親善を図るとともに、両者の社会関係を改善することを目的とし、情報の交換や両者相互に関係のある問題について協議を重ねている。
 過去の案件として三沢市からは、「提供地内緑地の臨時使用」「ごみの不法投棄防止」「交通安全の徹底」「三沢空港発着路線の開設、利用促進」「グローバル人材養成セミナーへの協力」「自家用車両の任意保険の加入の徹底」「市防災行政無線による英語版津波放送の周知」などが提出された。
また米軍からは、「道路案内標識等の英語標記」「基地外住宅周辺の除雪作業」「地元の祭りに対する米軍人の参加」「転入オリエンテーションへの支援」「米軍人の住宅不足問題」「基地内スクールバスの市内運行の際の安全協力」などについて提案されている。

3,三沢航空科学館 (現地視察)


 青森県立三沢航空科学館は、「未来力溢れる社会~未来を担う人づくり」を重要な柱として位置づけている新青森県長期総合プラン、また青森県科学技術振興指針における、知恵の輪、技の輪、人の輪づくりをテーマとして、創意・工夫を結集する環境を整えることと等を具体的に実現する拠点施設として設置された。
 館内「航空ゾーン」には、1931年、三沢市淋代海岸から旅立ち世界初の太平洋無着陸横断飛行を達成した、ミス・ビードル号のレプリカ、戦後初の国産輸送機YS-11の展示、小型ビジネスジェット機HondaJet(ホンダジェット)の展示、その他、無重力体験できる360度回転装置、空を飛ぶ仕組みや科学の原理等を学べる「科学ゾーン」、宇宙探査や地球観測について知ることができる「宇宙ゾーン」など、また青森県が日本の航空史に果たした役割など、子どもから大人まで空と科学の魅力を楽しく学ぶことができる。

【所感】
 三沢市は基地との共存共栄の理念のもと、良好な関係を築いている。この共存共栄は、お互いの立場をよく理解し、またお互いの利益を追求することなく、相互の文化交流を図りながら、お互いの生活の資質を向上させ共に暮らしていこうとの趣旨だ。
 共存共栄を掲げ市政運営が行われている点が福生市との相違点である。米軍も国際交流事業やイベントへの参加、ボランティア活動、学校との交流などあらゆる機会を通じて市民との交流を積極的に行っている。
 一方で、騒音問題だけでなく米軍関係者による事件・事故及び基地周辺住民とのトラブルも発生しており大きな課題となっている。こうしたなかで協力関係の構築を目指し様々な課題について率直に話し合うための連絡協議会が設置されている点は大変参考になった。
 福生市でも市内小学校と横田基地内小学校の交流や米兵によるボランティア清掃、各種団体との意見交換が定期的に行われている。また福生駅周辺の犯罪防止パトロールなどは憲兵とOSIが参加し警察や町会、防犯協会などとの連携が見られ市民との関係性は保たれていると考える。
 しかしながら令和2年に、パラシュートの落下、フィンの落下など、度重なる事故起き、福生市議会は、これ以上、基地機能強化をしないことを、米軍及び国に求める「横田基地の基地機能強化に関する決議」を可決している。
 また、泡消火薬剤に関して、横田基地では2010年から2012年の間に3件の流出など、現在、PFASへの市民の関心は高く、基地外の環境への影響を懸念する声は、決して小さくとは言えない。そして2023年11月29日に鹿児島県屋久島(やくしま)の沖合において、米空軍横田基地所属のCV-22オスプレイ1機が墜落した。オスプレイについては、今般の事故以外も本年8月にオーストラリアでMV-22の墜落事故が発生、9月には4回、計6機のMV-22が予防着陸を繰り返すなど、市民は不安を更に募らせている。現在は飛行停止措置が講じられ、市と議会は原因究明、再発防止、安全確保の徹底などを訴えているが基地があることに起因する市民の不安は拭い去れない。
 さて、自衛隊基地内では写真撮影こそ叶わなかったが、配備されているF-35Aについて説明を受けた。研修を担当していただいた自衛官の言葉からは、任務に対する誠実さと責任感が伝わってきた。平成28年度の過去最高記録以降も高水準が続く緊急発進の状況等を伺い、三沢基地が北部防衛の要であり、安全保障上でも大変重要な基地であることを実感した。


 三沢基地も横田基地も国防の観点からは大変重要な基地であり、昨今の国際情勢を鑑みるとその重要性は益々高くなっている。また、福生市の基地に対して「横田基地はないことが望ましいものの、当面は動かしがたいものとの前提の下、今後も現実的な対応を図っていく」との考えがある。その実現的な対応のためにも、周辺市町との連携はもとより、基地を抱える他自治体との連携を一層密にしていく必要がある。三沢市とは共通の課題も多く、それらに対する取組など参考になった。今後の活動に生かしていきたい。

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