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化学漢字 第0章

 中国語では化学元素を全て漢字1字で表している。その多くは日本語には無く、ここ百年やそこらで作られた新造字である。つい最近、2016年にも新元素の発表に合わせて新しい漢字が新造されたばかりだった。これからも新元素が見つかる度に増やしていくだろう。
 元素のみならず、同位体や化合物用にも限定的ではあるが、その代わりかなり斜め上な造字が為されている。そこで、元素を表す漢字を元素漢字、他の化学種を表す漢字も合わせて化学漢字と称して、以下に紹介してみる。

§0.1 総目次

第0章では、新造字の表示確認と対処法や表記などメタな説明を行う。
第1章では、元素周期表を中心に、元素を表す化学漢字を紹介する。
第2章では、文字に纏わるドロドロした歴史的な話を少々。
第3章では、元素以外の化学種を表す化学漢字を宣伝して、
第4章では、言葉の観点で化学漢字について思うことで綴って締める。

 なお、化学と漢字、化学と言語という視点は面白い割りに世に珍しいらしい。今後も増やしていきたいので、この総目次もその都度に膨らむだろう。

 また、本章の次節以降は、文章を正しく表示させるメタで技術的な話になるが、その技術が日進月異であり、待てば問題が解決されたりと変化が激しい。今使っている note という媒体も進化すれば、書く側でも改善できるかもしれない。これらも状況が変わる度に、情報を更新して行きたい。

§0.2 新造字の表示確認 「鿫」

 さっさと楽しい本題に入りたいのだが、残念ながら技術的問題によりこの文章、というよりも紹介しい漢字そのものが正しく表示されるかを確認しておく必要がある。正しく表示できなければ、先に表示させたり、代案を講じる必要がある。
 もちろん、後回しも可能である。実際問題として、メジャーなOSを使っていれば、表示できない可能性があるのは5文字しかない。とりあえず第1章に進み、読めなくなったときに戻ってくれば良い。

 2020年現在、一番新しい元素は元素番号118番の Og オガネソンである(ref: https://ja.wikipedia.org/wiki/オガネソン)。オガネソンを表す漢字は2016年に発表され、気構え「气」の下に奥地の「奥」と書いて「鿫」。この「鿫」さえ正しく表示できれば、他の元素文字も問題なく表示できる。

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 上の図は実際の表示例。左が正しい表示。右は適切なフォントが無いため、「鿫」の代わりとして「⊠」「▯」や「⍰」が表示されている状態。

 もし Windows, Mac OS, Linux を利用中であれば、§0.3 で紹介するフォントをインストールすれば、正しく表示できるようになる。もし Android や iOS を利用中であれば、現時点ではユーザがフォントを簡単にインストールできず、OS が対応するまでに待つしかない。
 次善案として、この文章では、表示できない可能性の高い漢字に関しては、代替表記を併記する。例えば、Og は「鿫〔气奥〕」のように表記する。その表記法の詳細は §0.4  で説明する。

§0.3 Unicode CJK統合漢字 対応フォント

 結論から言うと、Source Han Sans を入れると良い。厳密には、簡体字用に SourceHanSansSC 系、繁体字用に SourceHanSansTC 系をインストールする必要がある。Source Han Sans 自体は https://github.com/adobe-fonts/source-han-sans/tree/release で配布され、 README に該当フォントへのリンクがある。
 今必要なのは、Simplified Chinese (简体中文) と Traditional Chinese — Taiwan (繁體中文—臺灣) である。
https://github.com/adobe-fonts/source-han-sans/raw/release/OTF/SourceHanSansSC.zip
https://github.com/adobe-fonts/source-han-sans/raw/release/OTF/SourceHanSansTC.zip
 それぞれをダウンロードして、展開すると太さの異なるフォントファイルが7つずつ得られる。これらをインストールしてコンピュータごと再起動すれば、「鿫」を正しく表示できるようになる。 なお、フォントのインストール手順は、各OSの操作を参考して下さい。
Windows: https://opentype.jp/fontinst10.htm
Mac: https://support.apple.com/ja-jp/HT201749画像2

 以下に、フォントの仕組みと使えるフォントをもう少し詳しく紹介しておく。現在、コンピュータで文字を扱うには、文字コードとフォントの 2 つの仕組みを利用する。文字コードは文字を数字で表す仕組み、フォントはその数字を人が読める文字の絵に変換する仕組みである。
 コンピュータで扱う以上、最終的に 0 と 1 の数字列になる。Unicode (ユニコード)という、世界のあらゆる文字に番号を割り付けようと努力している巨大な文字コードが優秀で、今や世界標準である。note もUnicodeで文字を扱っている。
 フォントは要は文字の画像である。Unicodeは世界中の文字を扱えるが、全収録が大変な割りに、大抵の人は限られた文字しか使わないため、普通は一部しか収録しない。化学漢字を表示するには、最新の漢字と、普段使われない漢字まで収録したフォントが必要であり、選択肢が限られる。2020年05月現在、以下のフォントが使えることが分かっている。
 ・Source Han Sans ゴシック体
 ・Babelstone Han 明朝体
 ・Unifont ドットフォント

 Source Han Sans は日本語で「源ノ角ゴシック」とも呼ばれるフォントである。note では以下の順にゴシック体のフォントを指定していて、MacOS ならヒラギノ角ゴシック、Windows ならメイリオで表示される。指定される全てのフォントに収録されてない文字は、コンピュータにインストールしたフォントを探し出して表示される。化学用字ではその仕組みを使う。その結果、ゴシック体のフォントを追加しないと、ゴシック体の文章の中に明朝体やドット文字が混ざって読み難くなる。

-apple-system, BlinkMacSystemFont, Helvetica Neue, Segoe UI,
Hiragino Kaku Gothic ProN, Hiragino Sans, ヒラギノ角ゴ ProN W3,
Arial, メイリオ, Meiryo, sans-serif

 Babelstone Han は Unicode の文字を多く収録している フォントである。
https://www.babelstone.co.uk/Fonts/Han.html で配布している。ページの一番下にダウンロードのリンクが一覧されている。ZIP archive を展開すると TTF file の BabelStoneHan.ttf が得られて、それをインストールすれば良い。紙面に印刷して配布する明朝体ベースの資料を作る際に便利である。
https://www.babelstone.co.uk/Fonts/Download/BabelStoneHan.zip

 Unifont もまた Unicode の文字を多く収録したフォントである。http://unifoundry.com/unifont/index.html で配布している。ドットフォントであり等幅なため見た目の綺麗さでは他のフォントに及ばないが、収録数が多いので最後の砦として。

§0.4 フォントを要求しない漢字の表示

 iOS など化学漢字を表示できない上に、ユーザが自由にインストールできない環境に備えて、本記事では日常的に使われる文字だけを使った代替表現も併記する。以下にをの規則を一覧する。

 ① 代替表現は部首が分かる場合は部首と残りの順に分解して表す。例えば、「銀」は金部の右に「艮」のため、「銀〔金右艮〕」と表す。
 ② 入れ子の場合は右優先で解釈する。例えば、「錫」は「錫〔金右易〕」と表すが、もし右側をさらに分解する場合は「錫〔金右日下勿〕」と表す。

 ちなみに、Unicode には漢字の構造を表す漢字構成記述文字も用意されている。例えば、「⿰」が左から右の構造を表し、「銀」は〔⿰金艮〕と表せる。問題は、化学漢字を正しく表示できない環境では、漢字構成記述文字が表示できる保証もないため、本文章では不使用とした。

§0.5 参考文献

● オンライン記事
https://qiita.com/hakatashi/items/2ea4bac438001233a555
 Qiita @hakatashi  Unicode文字からそれを表示できるフォントを探す方法
http://www.fileformat.info/info/unicode/char/search.htm
 Unicode Character Search

● ja.wikipedai.org の関連項目
https://ja.wikipedia.org/wiki/漢字記述言語#漢字構成記述文字列_(IDS)
https://ja.wikipedia.org/wiki/源ノ角ゴシック
https://ja.wikipedia.org/wiki/オガネソン

● en.wikipedai.org の関連項目
・https://en.wikipedia.org/wiki/Source_Han_Sans
・https://en.wikipedia.org/wiki/GNU_Unifont

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