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音楽の専門学校に通っていた頃の話(3)

 作編曲、DTMコースの生徒は、レコーディング科の人と一緒に授業を受けることが多い。なので、作曲やDTMを専攻している生徒は、レコーディング科の生徒とは繋がりやすいだろう。

 さて、肝心の授業だが、滅茶苦茶簡単な音楽理論、滅茶苦茶簡単な聴き取り練習から、ミックスに必要な知識まで、一通り教わる事になる。が、結局これらの知識は無駄にはならないが、経験に勝る学習は存在しないという、大学の頃にお世話になった教授の教えを改めて理解する。ここで教わる知識やスキルというのは、結局作品があって、その作品を仕上げる時に初めて使って意味を理解出来るので、やってみるその時までは教わった事の意味を本当の意味で理解する事が出来ない。

 しかし、ミックスで使うプラグインの効果を体感したり、実際に触ってみる事が出来る授業は価値がある。何だかんだ座学も大事で、実際に私が知りたかった知識というのは授業でだいぶ補わせてもらった。

 こういった座学や制作を行う意味を理解する為、そして業界が実際に行っている事を学ぶための授業も存在する。それがプリプロダクション(以下プリプロ)だ。

 恐らくどの専門学校へ行っても、一番価値のある授業ではないだろうか。プリプロとは、アーティストに提供する楽曲だったり、制作を行う前のデモみたいなものの作成と思って頂いていい。尤も、最近の音源はプリプロの段階のアレンジをそのまま使われるケースが出ているのだが....

 この授業を乗り越えられるかどうかで、今後の進路が決まってくると言っても過言ではない。まさに作詞作曲編曲ミックスマスタリングと、全ての作業を行わなければならない授業だからだ。全学年対象の授業で、メンバーも完全にシャッフルとなる。勿論プリプロに参加できないと判断した学生は、補修を受けるという選択も可能である。

 ちなみにこの授業を乗り越えられるかどうかというのは、授業についていく事だけではなく、環境を整えるという意味も含まれる。

 実は専門学校へ入学する生徒の中には、既に楽器やらDAWやら、自前のものを揃えている人もいる。

 プリプロの提出期限は大体3週間。しかも、授業としてやるのは週に1回。つまり、授業外の時間も使って作品制作に取り掛からなければならない。よって、プリプロを行える程度のスキルか、環境の準備が必要となる。という事は、学校で用意されている機材だけを頼りにしていては、間違いなく楽曲制作を行う時間が確保出来ない。

 ここで察するのが、授業を受けていく度に、自前で絶対に揃えなければならない機材の存在を知る事となる。

 まあ、卒業後にプロとしてやっていく事を考えるのであれば、在学中にPCやらDAWやらインターフェースやらと、揃えなければ仕事は出来ないので、この機材を揃える段階で挫折するようであれば、残念ながら専門学校を辞めていく事になるだろう。(或いはコースを変えるパターン)

 大きな壁となるのは、この機材を揃えるという所だ。決して学生にとってこの機材を揃えるというのは簡単な事ではない。学費はまだ払ってもらっている生徒が多いと思うが、機材まで買ってくれる両親は少ないだろう。

 DAWを使う為のPCも10万程はするだろうし、DAW自体も大体5万ぐらいは掛かってくる。インターフェースもミックスやマスタリングをするとなれば、10万以上するものは用意したいし、スピーカーもそれぐらいはする。最低でも30万以上は掛かってくる計算だ。これらの資金を学生のバイトでどれだけ賄えるのか、そしてそれらを稼ぐ為に割く時間、体力と計算をした時に、どれだけの制作時間を確保できるだろうか?

 しかし、卒業生はこれらの課題を何らかの方法でクリアしている。ちなみ私は大学の時点でPC、DAW、プラグインと必要なものに関しては揃えており、インターフェースもオークションで安く手に入れている。

 自分で楽曲の制作環境をある程度揃えておかなければ、勉学の上でも困る事になる事を、入学後に知るケースも多いのではないだろうか?

 どうしても専門学校へ行くというのであれば、PC、インターフェース、DAWは最低でも揃えておかないと、間違いなく泣きを見る。出来る事ならこれらは高校の3年間の間に揃えておく事が望ましい。

 尚、現場は今やMacもWindowsも関係なくなってきているが、専門学校はまだまだMacが主流という所が多いので、PCはMacをオススメする。私のように入学の時点でWindowsでNUENDOを使っていて、音源やプラグインをある程度揃えてしまっていたような人だと、学校側で用意している恩恵の半分は受けられなくなる。機材を持ち込むことも出来るが、レコーディングの場所やミックスの場所の確保ぐらいしか恩恵が得られなくなってしまう。但し、スキルとして学べる事が出来る内容はWindowsもMacも関係ないので、Windows派の人でも問題はないだろう。

 ちなみに専門学生で一番多いのは、MacでLogicを使う人。次に同じくMacでデジパフォを使う人だ。Windowsユーザーはやはり少なく、Cubaseは居ても、NUENDOを使っている人に出会う事はなかった。恐らく今もそれは変わらないだろう。

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