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【LAD】山本のフォーシーム問題

こちらの記事の続編です。良かったら先にどうぞ!


なぜ高めのフォーシームを投げないのか

経緯

前回の記事では山本由伸のフォーシームをもっと活かすにはどうすれば良いかを説明しました。詳しくは前述の記事を読んでほしいですが、ざっくり言うと、山本のフォーシームはリリースポイントが低く、フラットな軌道を描くことから、高めに投げてメジャーのアッパースイングを逆手にとり、空振りを量産せよ、と言うことです。
高めに投げる選手の例としてザック・ウィーラーを出しました。ウィーラーの投球頻度ヒートマップと山本のヒートマップを比べてみると、やはり山本の方が低めに投げる傾向があるようです。

右がウィーラー、左が山本

なぜ高めに投げないのか?

ドジャースはメジャーにおいて最も投球分析が発達した球団の一つです。なぜドジャースは山本に高めに投げさせないのでしょうか。何か高めにフォーシームを投げることのできない理由があるからでしょう。
これについてFangraphsなどに寄稿するMichael Rosenが興味深い考察をしています。
先ず山本の身長は低いです。現在のドジャースには46人が登録されていますが、下から5番目の身長5フィート10インチです。
そして山本はその小さいからだをフルに活かし、体を目一杯打者に向かって伸ばしボールをリリースします。

https://www.latimes.com/sports/dodgers/story/2024-02-28/yoshinobu-yamamoto-dodgers-spring-training-debut


このとき山本は縦に腕を振りながらボールをリリースします。時計で言うと腕の角度が12時→6時に振る感じです。この場合リリース時に下向き成分が多いため、低めに投げやすいですが代わりに高めに投げにくくなります。

山本のリリース
https://pitchplots.substack.com/p/the-curious-case-of-yoshinobu-yamamoto

比較対象としてアーロン・ノラを用意します。ノラはリリース時にサイドスロー気味になります。腕の角度がリリース時は時計の2時方向を向いています。この投げ方だとリリース時の下向き成分が減り高めに投げやすくなります。

アーロン・ノラのリリース
https://pitchplots.substack.com/p/the-curious-case-of-yoshinobu-yamamoto
アーロンノラの投球頻度ヒートマップ
アームアングルのイメージ
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=6Nm6I9Cf-No

「イマイチわかんねぇんだよ」と言う人は自分で山本とノラのリリースをマネしてみてください(ボール無しでも可能、投げなくて良い)。腕を上から下に振るよりもサイドスロー気味に投げる方がゾーン高めに投げやすそうだなぁというのがなんとなくわかると思います。

この腕を縦に振る投げ方により、山本のゾーン低めのコントロールは抜群に良いです。これが低めが重視されるNPBで無双していた大きな要因だと思います。

MLBに移籍してからも低めのフォーシームとそこから落ちるスプリットのコンビネーションがある程度通用しています。

マーク・プライアー投手コーチを筆頭としたドジャースコーチ陣も山本の投球メカニックを早いうちから変えることには消極的なようで、カーブ、スプリットなどの落ちる球を活かすために時々高めに投げる程度で良いというスタンスのようです。
ただフォーシームが高めで最も生きるというのは紛れもない事実のため、今後長い期間での調節があるかもしれません。

組織としての方針?(おまけ)

カブスの放送局で分析を務めるLance Brozdowskiはドジャースが組織として高めのフォーシームを減らしている(対右打者に限る)点を指摘しています。
ドジャースのピッチャーのフォーシームの形を並べると以下のようになります。
VAA: 球がプレートを通過する角度(値が低いほど高めに投げると良い)
adj. VAA: VAAから投球の高さを排除した指標(値が低いほど高め)

データ上はフォーシームを高めに集めたほうが良いということになります。
しかしヒートマップを見るとあまりその意識がないように見えます。
前述のノラやウィーラーと比べてみてください。

右:ストーン, 左: 山本
右: ミラー, 左: グラスナウ

前述のLance Brozdowskiは考えられる理由として

①スライダーとのトンネル効果
②球種の予測のしやすさ
③カウントとの兼ね合い

この3つを挙げています。
①スライダーとのトンネル効果はPitching Ninjaを見ていればよくあるやつです。

右打者の外角へフォーシームを集めることで、ゾーン外へ逃げていくスライダーとのトンネル効果を作ろうというわけです。
事実、先ほどの表で挙げた投手全員がスライダーを持っています。

②球種の予測のしやすさはわかりやすく言えば「投球の場所を分けることで、打者が狙う球を絞れないようにしよう」と言うことです。

カウントとの兼ね合い外角へターゲットをセットすることで、コントロールミスをした際に真ん中高めへボールを逃がし、カウントを投手有利になるようにしよう、という考えです。
カウントを投手有利にすることはとても大事です。これはカウント別フォーシーム長打率にも表れています。

https://www.youtube.com/watch?v=3bpzKuAwDiQ&t=212s

投手有利の場合の長打率.299は打者でいうとリーグ最下位レベルですが、打者有利の長打率.655は大谷翔平の長打率より高くなっています。

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https://twitter.com/sweePhillips59


参考記事

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