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【LAD】なぜ山本由伸は打たれるのか

みなさんこんにちは。ELiです。シーズンも開幕してもうすぐ1か月。打者なら100打席、投手なら40回程度を投げ、今シーズンのパフォーマンスがある程度予想できるようになってきました。
ドジャースでは投手ならタイラー・グラスナウがサイヤング級の活躍を見せれば、打線ではムーキー・ベッツ、大谷翔平、フレディー・フリーマン、ウィル・スミスの上位4人が相手投手を破壊するような打線を構成しています。

さて、日本人ならみんなが気になるのが今季投手史上最高額の12年$325M契約で新加入した山本由伸の具合だと思います。ここまでの山本の成績が以下の通りです。

5先発 22回(1試合平均4.4回) ERA 4.50 xERA 4.07 fWAR 0.5
K%32.3(メジャー379人中47位) BB% 5.4 (メジャー379人中75位)

今永昇太の無失点記録に隠れていますが、メジャー1年目25歳としては、なんだかんだ平均的な先発投手としての成績を残しています。
一方で高年俸を払っているのも事実であるため、物足りない感は否めません。現地過激派の中では既に「詐欺契約ではないか」との声も出ています。



カーブ/スプリットは効果アリ

山本の球種別成績を見てみると、カーブ/スプリットはメジャーの打者にも効果的であることが分かります。

変化球別の打球成績

カーブ/スプリットの両方が被打率.210以下に抑えられており、伴ってその他の指標も優秀になっています。(こう見ると千賀のフォークってすごい)

山本由伸カーブ投球割合

球種全体の結果構成を見てみると、カーブは球速が遅いのも相まって、空振りを奪う球というよりは、見逃し(Called Strike)を取るボールとして機能しているようです。タイミングを合わせて上手く打たれることもありますが、配球さえ気を付ければ非常に効果的な球になっています。

山本由伸スプリット結果別割合

スプリットはカーブと比べて空振り(Whiff)を狙いに行く変化球ですが、バッターに見極められることが多くなっています。千賀のフォークと比べると変化量が小さく制御が簡単だと思われますが、メジャーのボールに慣れていないのかボール球が多くそれ程アウトを取れる球にはなっていません。

千賀晃大フォークボール結果別割合

ストライクゾーンからボールゾーンに落とすのが理想ですが、ゾーンを大きく外れる場所に落としてしまい無駄にピッチカウントを増やしてしまうことが多いです。バッターの目がゾーン真ん中~低めに集中しているので、スプリットが見極められ空振りを奪えていない可能性があります。
若干変化量は異なりますが、レンジャースのネイサン・イバルディのような結果(ボール球⤵、空振り⤴)を出せれば理想と言えます。

イバルディスプリット結果割合

山本のフォーシーム問題

課題はあれど優秀なパフォーマンスを見せているカーブ/スプリットと対照的に打たれまくっているのがフォーシームです。
打たれた時の長打率は.710とこれは大谷翔平の長打率を超えています。

現状の山本はフォーシームをゾーン真ん中に投げているため、ボコスカ打たれてしまっています。

上のツイートでは右でどこに投げているかを、左はどこで打たれているかを表していますが、両チャートで赤の部分が一致しています。
言ってしまえばダメージを受けるところにまんまと投げているわけです。

山本のフォーシームのスペックを見てみると、それほど並外れた物ではないことが分かります。

空振りを奪うのに必要な縦変化量も16 inchしかなく、レベルとしては"そこそこ"の部類に入りますが、スペンサー・ストライダー(17.32 inch)やカルロス・ロドン(18.06 inch)のようにフォーシームで押していくピッチングができるわけではありません。

しかし打者に対するDeception(欺くこと)という視点から見れば希望が見えてきます。
フライボール革命は日本でも有名になっていますが、これは「バットを下から上に振ることで打球の角度を上げ長打を増やそう」という理論です。

https://www.washingtonpost.com/graphics/sports/mlb-launch-angles-story/

自分で棒を持ってイメージするとわかりますが、この場合高めかつフラットにやってくる球には弱くなります。
故にメジャーリーグの投手たち、とくに縦変化の多い投手たちはゾーン高めにフォーシームを投げるわけです。

では縦変化が少ない山本ですが”縦変化があるように見せる(欺く)”ことは可能です。単純に下から上に投げれば良いのです。

https://www.youtube.com/watch?t=21&v=w6jXdyo8zhI&feature=youtu.be

上の図でRelease Pointの点を下げて、打者付近の点を上げればフラットになりますね!
下から上に投げることによって、打者はボールが浮き上がってくると錯覚し、空振りしてしまうわけです。

山本のリリース高は5.4 ftとメジャーでは低いほうに入るため、これが可能です。

上のウィーラーのヒートマップのように赤の中心がゾーン高めに来るようにしたいところです。
山本の場合変化球がカーブとスプリットなのでその球種を活かすためにも高めに投げる球を増やしたいです。
これまでの登板でも高めの速球が威力を発揮する場面は見えており、効果を最大化できれば成績は持ち直すのではないでしょうか。

球種の追加は必要か?

ここまで山本の球種における高vs低について取り扱いましたが、ここで抜けているのが横の変化です。
山本の球種割合を見てもスライダー系を全く使っていません

ただしカットボールは左打者に対して10%程度使っており、今後も使っていくかもしれません。

ただこれもどこに投げるか次第で効果が変わってきます。
元ホワイトソックス育成部門所属のAdam Naliwajkoは2023年のゾーン別のカッターの効果を上げていますが、ゾーン内で下がるほど打球速度、xWOBAが上がることを示しています。そのうえで左打者のゾーン上かつ内角に投げられれば、弱い打球を打たせることができるとしています。

スライダー/スイーパー系は現状1球も投げていません。1球記録されていますが、計測ミス/投げミスだと思われます。
現状山本は右打者に対して苦戦しています。

WHIP: 対右 1.50 対左 0.87

そのため、右打者に対する空振り球としてスイーパーを投げてみようとなることはあるかもしれません。これは正直どう転ぶかはわかりません。
昨年メジャーにやって来た千賀は当初スイーパーを投げていましたが、あまり効果のない球だと認識すると投球割合を落としていきました。

まとめ

・カーブは見逃しを奪う球として機能している
・スプリットはコントロールが課題だが、優秀な球である
・フォーシームは高めに投げて打者を騙すべき
・カッターは左打者の内角に投げれるなら使う
・右打者の対応に苦慮するようならスイーパーを追加するのもアリ

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