既読の夢
最近では誰もが利用しているチャットアプリには「既読」という機能がある。
メッセージを送り、相手が開封したら既読となる。
大抵ワシが誰かにメッセージを送っても、なかなか既読はつかない。
ワシのやつだけ壊れておるんかいなと思ってお月様に問いかけるも、お月様は呆れて首を振るだけだのだ。
現代人の大半は暇さえあればスマートフォンをいじっているのに、ワシのメッセージには気づかないフリをする。
その時の言い訳が酷いものばかり。
「寝てた」
「死んでた」
「疲れてた」
「忙しかった」
「ハゲた」
「スマホいじってた」
「ラインしてた」
「悲しかった」
「楽しかった」
「筋トレ」
「夢」
「幻」
「あなたは誰?」
「キモいんですけど」
「あんま興味ないかな(笑)」
「返事遅くなってごめん!あと体調悪いからもう寝るね!」
ワシは機械類に明るくない。
もちろんスマホも得意じゃない。
けれども基本的なことは分かる。
お前がメッセージを寄越してから30秒と経たずに返事をしたのに、「寝てた」とはなんだ?ということがある。
お前はのび太か。
ちがう。
お前は大学に行ったそうだな。
のび太は0点しか取れないから大学はおろか高校入学も危うい。
既読機能はつまらない嘘を炙り出す。
しかし嘘をつかれていることを知ることで、知った側もまた涙を飲む。
このチャットアプリというもので幸せになった人は果たしているのだろうか。
そんなことを考えていると、ワシがメッセージを送ったのにずっと既読をつけていない奴が、集団でワイワイやっていた。
「そうだ!あの子も呼ぼうぜ!」
「お!いいね!誘うわ!」
「うわ!もう既読ついた!」
「さすが!笑 マジサイコーだわ!」
みんな幸せそうだった。
ワシは涙を飲む。
ワシのことを超一流であり続けさせてくださる読者の皆様に、いつも心からありがとうと言いたいです。