意外にもマイルドなエステート。すごく優秀なクルマだけど...... Subaru Levorg 試乗記録 #8
今回乗ってみたのはSubaru Levorgだ。かつて私の祖父がBP系 Legacy Touring Wagonに乗っていて、そのスポーツカーのようなアイポイントの低さと当時のAudiのような紳士的な内装が好きだった。あの頃のLegacyの遺伝子を最も濃く受け継ぐクルマが10年ほど前にデビューした初代Levorgであるわけだが、その2代目は果たしてどのようなクルマなのか、湘南や群馬へのロングツーリング、都内や群馬県内での日常使いなど、さまざまなシチュエーションで確かめてきた。
Information
Subaru Levorg
年式:2022年式
グレード:GT EX
パワートレイン:1.8L 水平対向4気筒 + ターボチャージャー
トランスミッション:CVT
駆動方式:AWD
最高出力: 174馬力(5,200~5,600rpm)
最大トルク: 300Nm(1,600~3,600rpm)
車両重量:1.58t
Driving
スポーティでスタイリッシュなエクステリアからクルマの性格を予想して期待してしまうと、間違いなく拍子抜けするだろう。なぜなら、このクルマの運転感覚は、総じて遊びが大きく、愉しさやスポーティさからかけ離れたマイルドなものであるからだ。
このクルマをマイルドなものにしている理由の1つにステアリングがある。非常に軽い。例えばVW系は低速域ですごく軽くて30〜40km/hあたりから安定してくるが、Subaruは50km/hくらいまで出さないと、緩すぎてちゃんとステアリング入力が伝わっているか心配になるレベルだ。また、50km/hを超えても必ずセンター周り回転角5度くらいは無反応でゆるゆるなバッファがあり、それを越えるとはじめて操舵できる感じ。つまり、ドライバーのしたい操作がクルマに全く伝わらない領域がある。ただし、5度を越えるとちゃんと反応してくれるので、綺麗にコーナーを通過できるし、5度を越えると機敏とは言えないが操舵に対する追従性は良好なので、Toyota Corolla TouringをはじめとするToyota車によくある"どの角度でも常に若干の緩さがある雑味"は感じられない。
もう一つ、このクルマをマイルドにしているのはスロットルレスポンスだ。踏み込むと1秒くらい遅れてクルマが動き出す。比喩とかではなく本当に1秒1.5秒遅れる。このクルマが搭載するのは1.8L水平対抗4気筒エンジンで、ターボチャージャーで過給して最高出力は174hp、最大トルクは300Nmを発揮する。かなりトルクが太い。そして、低回転からしっかりトルクが発揮される特性なので、エンジンの性能自体は街乗りからロングツーリングまで扱いやすく優秀だ。ただ、組み合わされるトランスミッションがCVTなのが全てをダメにしていると思う。CVT特有の籠るような不快なエンジンノイズや、追い越しや合流のような踏み込んで加速する場面で言うことを聞いてくれないもっさりとした感覚が強い。折角のエンジンパフォーマンスが台無しだ。もちろん、それなりに速度が乗ってくるとエンジンの性能が発揮されて、十分なパワーを感じるのだが、踏み込んだ時のラグが大きすぎる。あと、ラグが大きすぎるせいで、踏んだとに「あれ?全然動かないじゃん!」って思ってさらに踏み込むと、1.5秒くらい遅れて一気にパワー全開になるので、普通に危ない。
ちなみに、S/I Driveというモード切り替えがある。普通のクルマでいうところのNormalモードがIモードで、SportモードがSモードとなる。Sモードにするとステアリングは若干重みがついて他メーカーのNormalモードくらいにはなるが、センターの遊びは変わらない。アクセルに対するレスポンスはSモードにして漸くあからさまなラグが弱まる。ただし、街乗りレベルで"マシ"になるくらいで、それ以上に速い速度域を含めた加速だと、相変わらず1秒程度のレスポンス遅れが感じ取れてしまう。
ボディ剛性やシャシー自体はすごく優秀で、高速域でもばたつきやぶれはなく、安定感・安心感があり、クルマ自体の作りの良さは感じる。
ブレーキは他メーカーと比べてかなり良い出来で、踏んだ量に対するブレーキのかかり具合がちょうど良いし、強めに踏んでもボディ全体がブレることがない。急な挙動でもボディが不安定にならず、すーっと滑らかに減速できる。ただし、ペダルの反発が強いので、Mazda 6の方がブレーキの挙動だけでなくペダルの踏み心地も含めて自然な仕上がりとなっている。
足は思いの外しなやかで、快適性が高い。逆にスポーティな感覚は薄く、万人ウケしそうな仕上がりだ。だいぶ前に乗った先代型の方がBP系Legacyに近い地を這うような感覚だった気がする。そして、Civicのようなどっしりとした重厚感は薄く、普通にマイルドなファミリーカー然とした乗り心地だ。コーナーでのリーンは抑えられているので不快感はなく。また、ロードノイズが抑えられていて、風切り音も少ないので、総じて快適な移動を実現できていると思う。
このクルマの売りの1つにEyesight Xがある。Eyesight Xの運転支援装備は非常に優秀で、一定条件下の渋滞でステアリングを離すこともできる機能もある。アダプティブクルーズコントロールとしても優秀で、(5秒を超えると流石にクルマから手を離すなと言われるが)高速を巡航する時は基本的に手を添えるくらいで大丈夫だ。そのくらい信頼性と精度が高い。
その反面、システムの自我が強く、好き嫌いが別れると思う。例えばレーンキープアシストは「これでいいんだから動かすな!」というくらいステアリング制御が強いので、ドライバーがステアリングを修正しようとすると勢い余って逆に振れすぎてしまうので、素直にEyesightに任せた方が良い。車線変更をしたい場合でも、方向指示器を出したらEyesightが安全に操舵してくれるので、Eyesightに素直に従おう。
自我の強さが気に入らないならEyesight Xをoffにしても良い。私も一度そうした。しかし、前述した通りステアリングが緩すぎて高速でのステアリングの安定感がほぼ無いので、「これならまだEyesightに任せるほうが良いか……」となってしまった。
Eyesight Xの作動状況はフロントウィンドウ(たいていのクルマではHUDが装備される場所)にも投影される。正直、これを装備するほどの価値を感じなかった。これをやるなら、欲しいのは速度計やナビゲーションが表示されるHUDを装備してほしい。
視界はかなり良い。ウィンドウの下端が低いのが顕著であり、どの窓も広く作られているので、全方向の見通しが良好だ。また、大きな三角窓により斜め前も見やすく、斜め後ろもピラーが比較的細身なので見やすい。ボンネットに鎮座するインタークーラーのダクトも気にならない。たいていのクルマでは運転支援装備のカメラがフロントウィンドウの中央を遮っていしまいがちだが、Eyesightのカメラはあまり場所を占拠しないので、全体的に見通しが良くなっている。
その他の安全装備でいうと、サイドミラーのブラインドスポットモニタリングがすごく見やすい。初めて乗ると「ウインカーかよ」って思うくらい大きいライトが点灯する。他にも、シートエアバック、歩行者用エアバックなど、安全性に対する意識の高さが伺える。また、特にお気に入りなのは全てのシートベルトでロッキングタングを採用していることだ。これは衝突時に身体が前方に動いてもシートベルトが胸部を過度に締め付けないようにするタングで、HondaやToyotaの一部車種の前席のみ装備されているが、Subaruは全ての席のシートベルトに採用している。
Interior and Practicality
Front
インテリアもエクステリア同様にスポーティな雰囲気のデザインとなっている。初代Levorgのデビュー時からの代表的なボディカラーであるアイスシルバーメタリック塗装のパーツで構成されているのも特徴的だ。ただ、全体的にこのクルマは(駆動系や安全装備など)メカニズムに多くコストを割いている印象があり、Cセグメントエステートとしては意外と高価格な割に内装の高級感は薄い。基本的に触れるところは合成皮革か柔らかい樹脂になっているものの、フェイクカーボン素材は子供っぽいのでやめた方が良い。
ドアのカップホルダは十分な大きさで、細身の1Lペットボトルと500mLペットボトルが同時に入る大きさが確保されている。Golfのようにそれ以上の奥行きや収納はないが、必要な大きさは確保されている。
フロントシートの座り心地は良好で、スポーツカーではないが適度なホールド性が確保されていて安定感と居心地が良い。また、センターコンソールは膝が当たる位置(ちょうどシフトノブの横)が窪んでいるので、硬い樹脂パーツに膝が当たりにくいようになっている。ステアリングのテレスコピック操作の幅は十分だが、チルト操作の範囲はちょっと狭く、中央から変更しようとするとバネ(?)のように中央に戻ろうとする挙動があるため変更しにくい。
シフトノブ横のViewボタンを押すと、現行型(2023年10月以降)は標準装備の全周囲カメラが表示される。今回乗った個体はそれ以前のモデルなので、左前とリアのみの表示となる。シフトをリアに入れなくてもリアビューが確認できたり、助手席側のコーナーが見られるのは狭い路地や駐車場で重宝した。これをインフォテインメントシステムに入れず物理ボタンにしているからこそ、アクセスしやすくて役に立った。
センターコンソールの立て付けはかなり良好。ピアノブラック塗装がよろしくないが、運転席の囲まれ感が強くなるような配置なので、スポーティな方向性にあっている。センターディスプレイの下には、12Vソケット、AUXソケット、USB Type-AとType-Cポートがそれぞれ1つずつある。ほとんどのクルマはType-AとType-Cのどちらか一方のポートが装備されるが、このクルマのように、両方の端子に対応しているのが一番嬉しい。ここにはスマホを置くことが想定されている収納もあるが、現代のスマホにとってはちょっと小さい。(ケース込みで)iPhone 7くらいまでならいける。ケース付きのiPhone 12だと厳しかったので、後述するカップホルダの仕切りを外してスマホ置き場としていた。
センターコンソールにはカップホルダが2つある。シフトノブの手前にあるので、カップホルダに入れたボトルとシフトノブを操作する腕が干渉するかと思ったが、カップホルダ自体低めの位置にあるので、500mLペットボトルを入れた場合でも干渉しなかった。なお、カップホルダの仕切りを外して1つの収納として使うこともできる。大きめのスマホとかに良いだろう。
センターコンソールボックスのサイズは平均的だが、深さはそれなりにある。中に12Vソケットがあった痕跡が見られたが、12Vソケットは前述の通りセンターディスプレイの下にあるので、これは別の車種から流用した部品と思われる。
グローブボックスは適度に減衰が入っていて、サイズも十分だ。今回乗った個体はETC機器がこの中に装着されていたが、それでも収納として余裕のあるサイズだった。
バニティーミラーはちょっと小さいが、ちゃんと照明が装備される。
Rear
後席の室内空間は十分で、身長176cmの私が座っても頭上空間、膝回り共に余裕がある。私のドライビングポジション(シートは後ろめで座面を低くしがち)の後ろに座っても足先を前席下に入れる余裕があり、膝前は拳2個の余裕がある。VW Golf Variantの方が若干幅があって広い感じがするが、Cセグメントの中で特に足元空間の余裕があるCivicと比べても遜色ない寸法で、Corolla Touringとは比べものにならない広さであり、ひとまわり大きいMazda 6よりも余裕がある。また、全体的に窓が大きいくピラーが細いので、顔横や肩周りの圧迫感がなく、キャビン全体の閉塞感もほとんどない。
また、真ん中のシートも特別高くなっていないことと、AWDなのにプロペラシャフトを通すトンネルの幅が意外と小さいことから、後席に大人3人並んでの乗車も悪くない。
後席の質感は前席同様で、特にコストカットされた形跡はない(VW Golfなど後席ドアトリムだけチープな素材を使う車種が散見される)。ドアポケットは高さ的に1Lペットボトルは厳しそうだが、500mLなら2本余裕で入るので、Cセグの後席ドアとしてはかなり優秀な部類だ。ちなみに、リアドアのウィンドウはちゃんと一番下まで下がる。
後席用のエアベントは当然のように装備されていて、現在は廉価グレードのSmart Edition EXを除いて全グレードでリアシートヒーターが標準装備される。リアシート用のUSB給電ポートは全グレード標準装備だ(現行型はType-AとType-Cそれぞれ1つずつ)。センターアームレストのカップホルダは2つあり、ボトルを固定するためのラバーもあるので、質感も利便性も申し分ない。総じて、後席の利便性がしっかり考えられていて、丁寧に設計されている印象を受けた。
ドアの開口角度はかなり大きめに確保されていて、幅が広くルーフが寝ていない車体形状もあり、乗降性は極めて良好だ。チャイルドシートの着脱もしやすい。(ISOFIXアンカーポイントは後部左右席にある)
Boot
荷室は561L確保されていて、VW Golf Variantの611Lには及ばないが、Toyota Corolla Touringの392Lを遥かに凌ぐサイズである。Cセグメントのエステートとしては期待通りの大きさだ。また、荷室入り口の段差も小さく、バンパーの厚みも適度なので、重い荷物や大きな荷物の積載がしやすいし、後席を立てた状態でも十分な奥行きがある。さらに開口部の幅が広く、奥行きも高さもしっかり確保された箱形なので扱いやすい。
全グレードでスペアタイヤではなくパンク修理キットが装備されることもあり、床下空間には十分な深さがある。当然ながらトノカバーは床下に収納できる。ただし、トノカバーを取り出すには両サイドの床板を外さないといけないので、少々面倒な作業が必要となる(取り外ししにくいし嵌め込みにくいし、力がいる)。
そして、当然ながら後席を倒すとさらに広大な荷室空間が広がる。荷室壁面のスイッチを操作するだけで後席を完全に倒すことができるので、直接リアドアに回り込んでシートを操作する必要はない。スイッチ一つでフルフラットになるし、ほぼ水平の床面になるので、重い荷物や大きな荷物の積載がしやすく、車中泊といった用途も可能だ。
さらに、後席が40:20:40分割可倒式であるから、成人4人が快適に乗車したままスキーや釣竿、鋤などの長尺物を積載できる。大変素晴らしい設計だ!さすが群馬が誇るSubaru、家族4人でスキーに出かけたり、草掻きや鍬を積んで山の手入れに行ったりする群馬県人のライフスタイルをわかっている。
Infotainment System
このクルマは全グレード11.6インチのセンターディスプレイが装備される。タッチパネル自体はレスポンシブで感心したし、UIの視認性は良好なのだが、このインフォテインメントシステムはこのクルマ最大の欠点と言って良いだろう。なぜなら、エアコンの操作が画面に取り込まれているからだ。
流石に、温度調節とデフォッガー、ハザードは物理ボタンとなっている。しかし、それ以外は全て画面からの操作で、エアコン自体のon/off切り替え、風量調節、シートヒーターの調整をするには画面のUIをタップしないといけない。タッチパネルを使ったインタフェースは視線を画面に向けないと何を操作しているかわからないから、運転中にエアコンをつけたいドライバーの視線を奪うことになり、危険極まりない。このインタフェースの設計を担当した者はそんなこともわからないのか。
さらに、風向調節、内気/外気切り替え、デュアルゾーンクライメートコントロールのSync切り替えは一度ボタンを押してダイヤログUIを出さないと設定できない。もしかしてこのシステムの設計者は免許持ってないのでは?クルマを一度でも運転したことのある人はこんな設計しないでしょ。
ナビゲーションのショートカットキーは当然存在せず、現在地ボタンは画面内に鎮座している。また、アイドリングストップを解除するボタンも画面内にある。(ちなみに、アイドリングストップはクルマを再起動するたびにonになってしまう。)
実はこれでも改善した方で、途中でアップデートが入る前の初期モデルではシートヒータをつける時も、一度ダイヤログUIを開いてからonにしたり調節したりする必要があった。アイドリングストップ切り替えはもっとひどい位置にあって、インフォテインメントシステムのホーム画面を開いて、設定を開いて、ドライブ関連のタブを開き、やっとのことでアイドリングストップoffのトグルスイッチに辿り着く設計で、クルマを起動するたびにこの操作をするのは本当に面倒だった。
Apple CarPlayとAndroidAutoには有線接続のみ対応している。
一方で、ドライバースディスプレイは素晴らしい設計となっている。全グレードで12.3インチフル液晶のドライバーズディスプレイが標準装備となり、Audiのバーチャルコックピットほど機能があるわけではないが、メーター表示、Eyesight X作動状況表示、そして全面マップ表示の3パターンを切り替えられる。特に、全面マップ表示は簡略化されたものではなくセンターディスプレイに表示される車載ナビゲーションと同等の地図が表示されるので、視認性が高く、わかりやすい。国内メーカーのドライバーズディスプレイの中では一番好きだ。
Is the Subaru Levorg a good car?
このクルマに乗る前は「スポーティな運転と高い利便性を両立した魅力的なクルマに違いない」と思っていたのだが、それは間違いであった。このクルマはマイルドで安心感のあるファミリーカーの優等生だ。車体の安定性とグリップ性能は、スポーティさを演出するものではなく、安心感を与えてくれるものだった。そして、当然ながら十二分な利便性と室内空間を備えている。特に40:20:40分割可倒式リアシートは4人家族にとって最強の機構だ。確かにCセグメントのクルマとしては高価格であるものの、それ相応の機能は備えているので納得できる。ファミリーカーといえばミニバンやSUVのこの時代に、それらを差し置いて選ばれるポテンシャルがあるクルマだと思う。
しかし、(私のように)走る愉しさを重視しつつ、同時に利便性を両立したクルマを欲しているのなら、このクルマはおすすめできない。ステアリングにはほぼ無反応で軽すぎる区間があり、意のままの操舵以前にふらふらして心許ない。アクセルを踏んでもクルマが動き出すまで大きなラグがある。クルマとの一体感を重視して、同じくらいの予算でエステートを選ぶなら、Mazda 6 Estate 25S あたりを探すべきだと思う。
Pros
・40:20:40分割可倒式リアシートなど、利便性の高い荷室
・利便性・居住性に優れた後席
・装備が充実している
Cons
・アクセル操作に対するラグが大きい
・ステアリングに明らかに軽くて操舵が伝わらない領域がある
・エアコンなど運転中に必要な機能がタッチパネル操作になっている
Alternatives
Mazda 6
Levorgより一回り大きいDセグメントエステートだが、価格は同等となる(20S系はLevorgより安価で300万円を切るグレードもあるが、明らかにパワー不足なのでおすすめできない)。基本設計は古いものの、運転感覚とインテリアの完成度は非常に高く、価格帯以上のレベルを実現している。クイックなステアリングフィールが特徴のMazdaにしては比較的穏やかな性格をしているが、クルマとの一体感は満足できるレベルで、快適性と楽しさを両立している。荷室は522LとLevorgより小さく、後席の空間も膝回りが若干Levorgに劣るが、決して悪い数値ではない。したがって、予算はそのままに、積載性を僅かに妥協して走りの楽しさと内装の質感を手に入れたいなら良い選択肢となる。
VW Golf Variant
価格は若干上がり、1.5L eTSIモデルは概ねLevorgの2.4Lモデルと同程度の価格となるが、VWらしく基本設計の完成度が高い質実剛健なクルマだ。ボックススタイルの車体で室内空間も荷室もLevorgより一回り大きく、運転の楽しさにフォーカスした性格ではないが、中・高速域で安定感のあるステアリングとキレのある優秀なDCTにより、街乗りから長距離まで快適に運転できる。エアコン操作などのインタフェースの使いにくさや、価格の割にチープなインテリアなど欠点もあるが、Levorg並みかそれ以上の利便性を確保しつつ、運転感覚も満足のできるクルマを求めるなら良い選択肢となる。
Toyota Corolla Touring
210万円から購入できることが最大の魅力であるCセグメントエステート。ただし、荷室の大きさは広めのハッチバック程度であり、後席空間は(ハッチバックも含めても)Cセグメントとして狭い部類となる。また、内装の質感や遮音性はイマイチ。とはいえ、前述の通り車両価格の安さと経済性はクラストップレベルであり、足回りも先代型に相当するCorolla Fielderの頃から大幅に進化していて"安かろう悪かろう"というわけでもなく、価格の割に快適だ。したがって、積載性に優れる"Cセグメントハッチバック"を探していて、クルマにかかるコストを最大限削りたい場合にはおすすめしたい。