涙の海

私の心にはくじらがいるそのくじらは
涙の海を気持ち良さげに
悠々と泳いでいく

悲しい涙でも
嬉しい涙でも
乾いた心が何かで満たされて
涙の海が出来た時、くじらはどこからともなく現れて
気持ち良さげに泳いでいく

だけど
小さい頃、くじらが死んでゆく時の話を聞いたことがある
くじらは自分が死ぬのだと悟った時
最後の潮を吹く
最後の潮を吹くのだと知りながら
そのためだけに力を振り絞り、潮を吹く
そうやって潮を吹いた後は
ただ 体を波に委ねて
ひっそりと海の底へ沈んでいく
誰も、知りようもなく
ただ 海の底で横たわるなんて寂しくて
悲しいのだろう

私の中のくじらは
悲しい涙の海も
嬉しい涙の海も
悠々と泳いで
私を慰めてくれる

きっと、これからも
悲しい涙の時も
嬉しい涙の時も
一緒に生きて
一緒に死んでいく

私と私の中のくじらは
そうやって寄り添い合っていくのだから

最後の時は
寂しくも、悲しくもないだろう

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