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「科学的な適職(鈴木祐)」〜自分の仕事はこれでいいのだろうかと漠然とした不安がある方にお勧めしたい一冊〜

私は新卒からずっと同じ会社で気がついたら、10年働いている。

現在、3回目の育児休暇中で、今年の4月に職場復帰する予定だが、毎回の育児休暇中、また復帰直前の時期には、職場復帰への期待と不安とともに「自分の仕事はこれで最適なんだろうか。」「自分は仕事を楽しんでやれているんだろうか」「転職するなら適齢期もあるだろうし、今考えるべき、、?」とモヤモヤ考えることが増える。

そんなときにタイトルに惹かれて、読んだ一冊。

モヤモヤが晴れた気がしたのでご紹介する。

適職とは何か。

元来のイメージでは「自分の能力が発揮できる仕事」「自分の好きなことができる仕事」であったが、この本では「あなたの幸福が最大化される仕事」と定義している。

そんな「幸福な仕事選び」に役立つ5つのステップが紹介されていた。

ざっくり言うと以下のとおり。

ステップ1「幻想から覚める」:仕事の幸福とは関係がない要素を知る

ステップ2「未来を広げる」:幸福に繋がりやすい要素を知る

ステップ3「悪を取り除く」:幸福を破壊する要素を知る

ステップ4「歪みに気づく」:意思決定する際のバイアスを取り除くための手順の解説

ステップ5「やりがいを再構築する」:仕事満足度尺度で職場を判断し、失敗であれば転職を選択し、さほどの不満ではない場合には、現職での問題解決方法の解説

①幻想から覚める

仕事選びでやりがちなミスとして、「好きを仕事にする」「給料の多さで選ぶ」「業界や職種で選ぶ」「仕事の楽さで選ぶ」「性格テストで選ぶ」「直感で選ぶ」「適性に合った仕事を求める」の7点が挙げられていた。

中でもインパクトがあったのは「好きを仕事にする」ことに関する考察だった。

「好きを仕事にする」って人生の大半を占める仕事時間が楽しいものになるので、間違いなく幸せなんだろうな、と思っていたが、実際の調査などをみるとそうでない人より幸福度が低かったり、幸福感が長続きしないようだ。

理由としては、好きでやっている仕事とはいえ、現実には、それに付随するあまり関係のない仕事(例えば旅費精算や対人トラブル)が起きた際に、「本当に今の仕事が好きなんだろうか?」とか「この仕事にむいていないかもしれない」という気持ちがより強くでるからだそうだ。

仕事への情熱も同様で、情熱をもてるかどうかは、注いだリソースの量に比例するため、「本当の情熱」とは、何かをやっているうちに生まれてくるものだとのこと。

つまり、自分の好きな事はなんだろう、自分の情熱はどこに注ぐべきなのか、と永遠と考え続ける事は、適職選びの上では、あまり役にたたなそうなことがわかった。

②未来を広げる

仕事の幸福度を決める7つの項目「自由」「達成」「焦点」「明確」「多様」「仲間」「貢献」が紹介されていた。

どの項目ももちろん、幸福度に寄与することに理解ができたが、中でも「達成」「多様」「貢献」については特に寄与度が高い気がしたのでご紹介。

「達成」

これは最近読んだ本などでもよく出てくる内容ではあるが、やはり達成感(物事が前にすすんでいるか)が仕事のモチベーションを大きく左右するため、小さな達成感を得られる環境が整っているかが大事である。(例えば目標設定やフィードバック方法など)

「多様」

人間はどのような変化にもすぐに慣れてしまうので、日常の仕事でどれぐらいの変化を感じられるか、で幸福度は左右される。

元々、仕事などにおいては、役割を固定化、細分化したほうが、効率がよく運営できて、その分野のプロフェッショナルになれると思っていたが、幸福度と相関するのは「いろんな仕事ができること」のようだ。(例えばプロジェクトの川上から川下までできる、など)

「貢献」

その仕事がどれくらいの他人の生活に影響を与えられるか?が幸福度には大いに寄与し、綺麗事のようだが、人のためになることは自分のため(幸福感向上)になる。

他人のためにならない仕事は世の中にないが、重要なのは、自分の行為が他人の役にたった事実が可視化しやすいかどうか。(例えばエンドユーザーとのふれあいがある、など)

③悪を取り除く

こちらはそれほど目新しいものではなかったが、ストレスを感じやすい職場の条件として以下の2つを挙げていた。

「時間の乱れ」労働時間や出勤時間の乱れで健康リスクが増大する

「職務の乱れ」仕事や報酬に一貫性がなく、心理的安全性が確保されず体調を崩す

④歪みに気づく

いろんな要素を知った上で、そこから正しい意思決定をするためには、綿密なデータ分析ではなく、意思決定のプロトコル(手順)を決めておくほうが600%も正しい決定を下せるというデータがあるらしい。

人間は様々なバイアス(確証バイアス、アンカリング効果、フォーカシング効果、サンクコストなど)から逃れられないため、バイアスは必ずあるという前提を持たなくてはならない。(一番困るのは、自分だけは大丈夫と、限られた情報だけで意思決定を行ったことにも気づかないケース。)

バイアスを少しでも取り除くためには、プロトコルが必要になるとのことで、時間操作系プロコトル(10分後、10ヶ月後、10年後どう感じるか考え、総合的に判断する等)、視点操作系プロトコル(自分の意思決定についてまるで他人のことのように書いてみる等)が紹介されていた。

⑤やりがいを再構築する

「人生に成功する秘訣は自分が好む仕事をすることではなく、自分のやっている仕事を好きになることである」(ゲーテ)

この章の扉に書いてあった上記の言葉がすべてな気がした。

なんとなく将来性が不安、同期がやめていっている、本当に今の仕事が正解なのか分からない等、今の職場に関する悩みは特に時間があるときに押し寄せてくるものである。

この章では、いまの職場にいていいのか判断するために「仕事満足度尺度」が紹介されていて、その結果いまの職場はそこまでひどくなかったと気づくケースは珍しくないとのこと。(おそらく私もこのケースに該当する。)

その場合、今の職場をいかによくするか、今の仕事にやりがいをみいだすかにエネルギーをそそぐべき。

それには、ジョブクラフティング(自分の仕事を価値観に基づいて捉え直す方法)が有効である。

ジョブクラフティングとは、ざっくり言うと、自分の実務的な仕事の内容/割合を書き出し、その仕事を通じて自分が組織や世間に対してどのような役割を果たしたいのかを考え、そのニーズを満たすアクションを考えるというもの。

かの有名な「3人の石切り職人」の例でもわかるとおり、自分の仕事の役割の捉え方は非常に重要で、ジョブクラフティングで、自分の役割を再設定した結果、前向きな行動、周囲の問題を積極的に解決する姿勢、主体的に取り組む感情の増加が見られるようだ。

結局のところ、、

本書の後半にも記載があったが、キャリアの80%はおもいがけない出来事で決まるので、がちがちに決めずに大きな方向性だけ決めてあとは流れに身を委ね、日々のタスクに集中することが大事だ

無計画なまま享楽的に生きるのではなく、かといって適職の幻を追い続け、「自分が本当にやりたい仕事とは?」「自分にとってベストな仕事とは?」と日常的に悩むのでもなく、目の前の選択肢についてしっかりと考えたら、あとは人生の流れに身を任せるのが幸せな生き方だと思う。

さいごに、

膨大な文献を基に書いていて、面白い本の作者はどんな方なのか気になって調べたところ、鈴木祐さんという、「日本一の文献オタク」の異名をもち、健康・心理・科学に関する最新の知見をブログで発信している方らしい。

他の本も面白そうだったので、またぜひ読んでみたいと思う。

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