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絵描きのインプットとアウトプット

 ビジネス系YouTuberなんかを見ると、インプットとアウトプットの比は3:7が良い、という話をよく聞きます。これは記憶の定着効率の最大化についての話なので、何にでも適用できる訳ではありません。ただ、絵の上達に関しては、「インプットよりアウトプットのがずっと時間がかかる(かけるべし)」という意味で、当てはまるように思います。

 私自身も何度も繰り返しているのですが、絵を描いていて上達したいときにやりがちな、間違った行動があります。それは「目的が具体化されていないインプットばかりして、アウトプットに活かさない」ことです。

 ここでいうインプットの例を挙げれば、教科書を読むこと、映画を見たり、ゲームをする事、YouTubeで講座動画を見ることも当てはまります。

 目的が具体化されないインプットの何が問題かというと、アウトプットに活かさないので定着しないからです。

アウトプットに活かさないので定着しない

 例えばyoutubeの講座動画では、一線級のプロ絵師、プロ漫画家、プロアニメーターがノウハウを提供しています。その内容は非常に具体的で、即戦力にできそうなように見えます。
 しかし、実の所はかなり一般化、抽象化されています。これは当然で、講座動画(に限りませんが)は、ある程度の人数に共通するノウハウを提供しなければなりません。要は、それを見たあなた自身が、具体的にどうするかまでのノウハウは定義してくれないのです。

 仮にアウトプットに活かすとすると、まず第一段階として、抽象化されたノウハウをかみ砕いて具体化しなければなりません。
 つまりこうです。
 講座動画「まず1影をざっくり落とします(抽象的・一般的)」
→Aさん「光源が右上なので、首の下や胸の下、スカートの下に影を落とそう。あと前後感を出すために、左脚と右腕は丸ごと影落とそう(具体的)」

 よくTwitterなんかでは「講座の通りにやってもうまくいかない」という声が聴かれます。それは至極当然で、講座は、上のAさんに対して、「光源が右上なので、首の下や胸の下、スカートの下に影を落としてください。あと前後感を出すために、左脚と右腕は丸ごと影落としてください」と指示することは有り得ないからです。

 第二段階として、具体化した情報を基に、手を動かして実践する必要があります。その過程は、例えば以下のようになります。

Aさん「首の下や胸の下、スカートの下、左脚と右腕は丸ごと影落とそう。あれ?なんか微妙だな…講座はどんな感じでやってるんだろ(一時停止しつつ見返す)」

Aさん「よし、じゃあここにも影を落とすか。んー微妙…もっかい見てみよ。あとこの絵描きさんの他の絵もメイキング漁ってみるか」

Aさん「ダメだ―全然うまくいかねえ!」

Aさん「…ん?この絵なら参考になるんじゃね?あ、そういうことかー!寝るわ!」(ここまで3日くらいかかってる)

Aさん「…なんか1日経つと微妙だな…まあ今回はこれくらいで完成させるか」

~半年後~

Aさん「あれから何度もあの動画のやり方で作品作り続けて、やっとそれっぽくできるようになりましたわ」

 上述の通り講座動画では一般化した情報しか提供できません。加えて、言語化しづらい実際のブラシの動きなどは、目で見て盗むしかなかったりします。上記のAさんのように、一見簡単に実践できそうなノウハウも、実際は時間をかけて試行錯誤し、ようやく習得できるようになる、ということは良くあります。というか、半年はいわずとも、1週間以上はかじりつくくらいしないと習得できない事がほとんどです。

 つまり、インプットをアウトプットに変換するには、時にはこのような気の遠くなる試行錯誤が必要になるのです。講座動画を見るだけ~のように、インプットするだけではどうやっても定着のしようがないし、すぐ忘れてしまいます。したがって、最初に書いたように、必然的にインプットよりアウトプットの時間が圧倒的に長くなります。

 これまで述べたことから、インプットはアウトプット主導であるのが一番有効ともいえます。思い描いた絵を描くアウトプット作業で何か分からないことがあったとき、初めて教本やら講座動画やらを見るのです。こうすることで、無駄なインプットをしただけで満足する間違いを避け、効率的に上達出来ると考えます。


 

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