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米フットロッカー、アトモス買収について

米フットロッカーがアトモスを約400億円で買収したというニュースが報道され、スニーカー業界に衝撃が走った。
私はそのニュースを見たときに、テクストトレーディングカンパニーのアトモス事業を買収したのだと思ったがどうやらそうではないらしい。

一部限定モデルや別注モデル、定番商品を除けばどこのショップでも在庫が残り、セールで売り飛ばすしかないのが現状。特にリテールショップでは値入率を考えれば4割引を切ると赤字になってくるだろう。
ECの売り上げが60%を越えるアトモスであるが、実店舗の赤字をカバー出来ていると私は考えていなかった。

【6月既存店売上高】
ABCマート:84.4%
チヨダ:74.9%
ジーフット:74.1%
ファーストリテイリング:80.8%
しまむら:92.5%
ゼビオ:91.3%
アルペン:86.2%

靴業界は主に昨年比20%ダウン。
Youtube内で本明社長も触れていたがABCマートが客単価おそらく¥5,000~¥7,000。アトモスは¥10,000くらいではないだろうか。
そういった意味では純粋にアトモスが20%ダウンと考えるのは難しいかもしれないが、他の小売りが厳しい中で独り勝ちはないだろうと思っていた。

但し、フットロッカー、リチャード氏の「アトモスはデジタルに強みを持つブランドで、若年層およびスニーカーカルチャーに大きな影響を与える存在だ。今回の買収で急成長するアジアパシフィック市場事業を強化し、アトモスのさらなる成長を図る」という言葉にもあるようにデジタル事業を高く評価している。
単純に高単価商品の方が一件当たりの送料を考えれば、EC販売向けではあるので、客単価が高いアトモスとEC事業の相性が良いのも事実。
メインの客層がネイティブデジタル世代なのでその点でも利はあるだろう。

現状、170億円の売上高をキープしているテクストトレーディングカンパニーではあるが、コロナ過で閉店した店舗も多かった。ECの売上で落とした分をカバーしたというのは間違いではないと思うが、経常利益は下がっている、または出ていないというのが私の最終的な見立てである。

単純に設備投資が大きいだろう。急激に一つの事業を拡大すれば資金がかかるのは当然のこと。
しかし、その思い切りとタイミングが抜群に良かったと私は思う。
恐らくフットロッカーからの買収の話は昨日今日の話ではないだろう。少なくても1年以上前に、挙がっていた内容ではないか。
今後の事業成長、会社の存続にはフットロッカーの力がテクストトレーディングには必要だった。そして、それだけの価値がある企業だと示すための1年間だったのであろう。
そういう意味では本明社長の男を見たといっても過言ではない。

若い人々の中にはアトモスで働きたいと思っている方も多いかもしれない。
アトモスに限らずあのショップで働きたい、あのブランドで働きたい、アパレルをやってみたいという子も沢山いるだろう。
しかし、そこで何をやりたいのかをよく一度考えてみて欲しい。
販売員になりたいのか、バイヤーになりたいのか、デザイナーになりたいのか、人事をやりたいのか、経営に携わりたいのか。
何故急にこんな話をしたかと言えばアトモスは、事業の成長と共に人も成長させなければならないのではないかと考えるからだ。

どれだけECに資金をかけ、優秀な経営陣がいたとしても現場のスタッフが創業の2000年から変わらないような体制で働いていてはあまりにもお粗末だ。
ぼーっと立って、他のスタッフとおしゃべりしているようなアルバイトを入れ替わりで採用しても残るのは本当に気力がある一部の子だけだろう。もしかすれば才能の芽を潰すことに繋がるかもしれない。
フットロッカーにはぜひ、ここにメスを入れて欲しいと思っている。丁寧な接客技術等を言っている訳ではなく、現場のスタッフがやる気を持って働けて、ステップアップが目に見えるようなアメリカなりの人事評価制度を導入して欲しいのだ。
日本の小売業界が厳しい今、テクストトレーディングカンパニーのような企業は本当に貴重である。これからの若い担い手の為にも、そしてスニーカー業界の為にもぜひ、頑張って欲しいと私は思っている。

最後に一人のスニーカーフリークとして思うのは、これまで国内流通が無かったモデルが今回の件で少しでも手に入りやすくなればいいなあなどいう夢のような話である。

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