#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門「窓をめぐる物語」第4話 メガネ(4)
パンを買った帰りに、初めて見て、その日からだよ。おなかの中が見える人に気が付くようになったのは。いつもじゃないけど見えるんだよ。お父さんと電車に乗って映画を観に行った時もそう。お父さんと電車の座席に並んで座っていたら、誰かに見られている気がした。目の前の席には、太った女の人が肩に小さなハンドバッグをかけたまま背筋を伸ばして座ってた。女の人の目は、僕なのか、僕の頭の上の方にぶら下がってる丸いつり革を見ているのかよく分からない。だけどおなかは、ちょうど僕の正面だったからよく見えた