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いつかどこかの思い出

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現実へのぼんやりとした上書きのようなもの
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#色彩

とはれずかたられず

 私は人の気持ちが分からない。そして、そうであるならばなおさら言うまでも無く、彼女の気持…

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不浸染

20□□年 ■月 □日  その日は確か海の日であったと記憶しています。連休であるというこ…

ひとなつの

「これから幾年かたったあとで ふと、あなたがその名を読むとするならば そのとき、私を、死…

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モノトーン・ブルー

『わたしは、青という色が好きではなかった』 『落ち着く色だ、知的な色だなんていくらでも取…

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空繭

「貴方に呪いを残す事にしました」  紫陽花で青白く染まる階段を下りながら、貴女は私の方を…

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結花

 彼女の姿が、見えた気がした。満開の桜の木の下、黒色に染め直した髪をなびかせて、艶やかな…

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事実恋愛

 都会において夜空が赤く染まる事があるのは、地上に明かりが有り過ぎるからだ、なんて事を何処かで聞いた事がある。僕はどろりと滲み出すようなあの黒赤色が好きではなかった。子供の戯言のように聞こえるかもしれないが、あれを見ていると、まるで世界が終わるかのように感じてしまうからだ。終わってしまう事は何よりも怖い。だから、僕はそれがどんな形であっても続いていく事を望んでしまうところがあるのかもしれない。  薄明かりの中を二人で歩く。外灯もなく足元すら覚束無い、暗い路を越えていく。もう

燐光

「貴女にとって私は何色に見えているのかしら?」  大学での講義の帰り道、彼女がいきなりそ…

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