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もう、それにしか見えない

「うどん、巻きつけてるみたい。」


最近、よくみかけるこれ。

ひとつ結びした髪にぐるぐる巻きつけるだけでおしゃれになれるというアイテム。

ただの紐なのかと思っていたら、中にワイヤーが入っているので不器用な人でも簡単に扱えるのだとか。

先日、3COINSに行く機会があったので探してみた。あった、あった。これだこれ。さっそく購入し、家に帰ってつけてみた。

「見て見て、どう?これ。」と夫に見せた結果が、冒頭のそれである。

白いヘアアクセサリーってあんまり持っていないから、思い切って白を選んだ私がバカだった。うどんって、うどんってなによ。

「いや、お昼にうどん食べたから…。」

こういうことは前にもあった。

フードワンピースっておしゃれだし、楽そうでいいなぁといろいろ探していた。

私が選んだのは、茶色。ネット通販で買った。着てみると、中がボアになっていてあたたかい。なかなかいいかも。

「見て、見て。どう、これ?」さっそく夫に見せに行った。

ジャンジャンみたい。」

「え?」

いないいないばあの、ジャンジャン。」

「ジャンジャンって…。」

「ジャンジャンって茶色でしょ。」

「いや、確かに茶色だけど。私、スカーフ巻いてないし。」

「ジャンジャン、可愛いよ。」

「いや、その可愛さは目指してないし。」

そう、私が目指しているのは「可愛いお母さん」なのであって、ジャンジャンじゃないのだ。

夫のことばに傷つきはしたものの、せっかく買ったのだし、何度か着用した。けれど、そのたびに「ジャンジャン」と言われる。さすがの私もめげた。

「最近、ジャンジャン着ないね?」

結局、ジャンジャンのワンピースはお蔵入りになった。

漫画「あたしンち」が好きで、よく読んでいた。

何巻だったかは忘れたが、こんなエピソードがあった。

娘みかんがオレンジのダウンベストを着ていた時のこと。

なにそれ、救助ベスト?」母の放った一言がこれだ。

「そんな風に言われるともう、救助ベストにしか見えない…。」と、うなだれるみかんだった。

これと一緒だ。こちらとしては「可愛い」「素敵」と思って選んでいる。それなのに、まったく別の”可愛くない”ものに例えられるというのは心外極まりない。そしてそれがまた言い当て妙であるために「もう、それにしか見えない」のだ。さっきまでの「可愛い」「素敵」はどこかに吹っ飛んでしまって、もう帰ってきてはくれない。

白のワイヤーポニーがお蔵入りしないことを願うばかりだ。

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