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久留米青春ラプソディ vol.1

このところ、まじめに記事を書いてたので、少し筆休め。

僕のおバカ青春期シリーズ。

僕が中学3年生の頃のお話です。

その頃の僕は、というか僕らは思春期の真っ只中。

その頃、興味があることと言えば、スケボーに、ろくでなしブルース、グリーンデイに、そして、女子への興味。

ことさら、女子への興味は今振り返っても人生のピークだったかもしれない。

そんなどこにでもいる中学生。

ただ、ちょっとだけ、元気がはみだしていた僕らは、先生に厳しくご指導いただく事も多々あれば、それにムカついて学校を抜け出し、サボることもしばしば。

その日も先生から「校舎内で自転車を乗り回すな!」という極々当たり前のご指導を頂き、少しの反抗心から学校を抜け出し、親友と2人で彼の家に向かっていた。

そんな帰り道、いつも通る神社の傍に、一つの段ボール箱が置いてあった。

親友は突然、その段ボール箱を思いっきり蹴飛ばした。まぁ、ある種のストレス発散なんだろう。

おいおい、やめとけや。

僕がそう言った時、散らばった箱の中身を見て、僕らの時が止まった。

箱からこぼれ出したもの、それは大量のアダルトビデオだった。

その頃の僕らにとってアダルトビデオは、決して軽々しく手に入ることはない、奇跡のお宝だ。

次の瞬間、阿吽の呼吸とはまさにこのことだろう。

2人は一瞬にしてこぼれ出したビデオを箱に戻し、その段ボールを抱きしめて走り出し、近くの神社に駆け込んだ。

緊張と興奮、喜びと後ろめたさ、もうあらゆる感情が入り乱れ、とにかく冷静ではいられなかった。

そして、あたりに人がいないことを確認すると、僕らはついにそのパンドラの箱を開けた。

もうそこは夢の世界。ネバーランド。
15歳男子の夢がいっぱいに詰まっていた。

うわぁ…

まじで…

うそやん…

そんな言葉しか見つからない中、少しずつ冷静さを取り戻した僕らは、いたってまじめに今後の運用方針について話し合った。

僕らがない知恵を絞りに絞り、決めたルールは「お一人様2本までルール」。

まず、2本レンタルし、その返却とともにまた新たな2本を借りることができる。

しかも、交換する時は互いに報告・承認を受けねばならない、という謎の掟付き。

今考えると、そのルールの意味は、この貴重な宝物を安定的かつ長期的に楽しむためのルールだったのだと思う。

それから30分くらいかかっただろうか。

ようやく僕は迷いに迷って、これだという2本を選んだ。

いわゆる女優物というシンプルにかわいいだけで決めた安易なチョイスだった。

そして、相方に目をやると彼も満足いく作品に出会ったのだろう。満足げな顔で僕を見た。

僕はおもむろに聞いた。

「お前なんにしたん?」

すると、彼は真っ直ぐ僕を見つめ、キラキラした瞳で僕にそのパッケージを見せた。

それを見た僕は凍りついた。

そのタイトルは、

「絶叫 ダッダーン!」

恐らくもう、そのCMを覚えている人さえ少ないだろうが、「ダッダーン!ボヨヨンボヨヨン」というフレーズで一世を風靡した「ピップ社のダダン」という栄養ドリンクのCMをパロディにしたアダルトビデオだった。

パッケージにはそのCMに出てくるような謎のムキムキでグラマラスな外国人女性が裸で滝の前にいる、確かそんなパッケージだった。

彼があんなにあった沢山ある素敵な宝物の中から、なぜそれを選んだのか。

その作品のどこに惹かれたのか、どんな内容なのか、僕には全く理解できなかった。

でも、彼はパッケージの裏面までしっかり確認した上でそれを選んだのだ。

もう、僕にはそれ以上何も言う権利はない。

そう、彼には自由に選ぶ権利がある。

僕はその時、初めて他人を尊重するという、大切なことを身をもって学んだんだと思う。

人生、どこに学びが転がってるかわからないものだ。

ちなみに、その宝箱のその後について。

1回目のレンタルをした後、神社の床下に隠して帰ったのだが、数日後、2回目のレンタルのために訪れた時、無常にも箱ごと無くなっていた。

僕らはそれはそれはショックで神主が盗んだと勝手に決めつけ、エロ神主という稚拙であまりに失礼なあだ名をつけた。

まるで、昔話のようなこのお話は、後に彼の結婚式の友人代表スピーチで、僕によって広く知られることになった。

そして、いつか、数十年後、もし彼が先に逝ってしまった時は、葬式でもう一度この話をしようと思う。

「絶叫、ダッダーン!」

この響き、まじで最高だ。

では、また。

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