#078〔伝説巨神イデオン〕

伝説巨神 イデオン
1980

最近になって、1話から全て観た。
改めて作品を観た感想としては、やっぱり面白い作品であった。

全39話で終わってしまったのが、悔しい限り。
もう少し、イデオンの世界観に浸っていたかった。

…しかし、何よりもツラいのは、味方の少なさである。

突如として、ソロ星に襲来してきた
バッフ・クラン軍に対して、
地球サイドの戦力の貧弱な事、貧弱な事。笑

主人公 ユウキ・コスモは、
この事件により、父親を失っている。

味方は、3機に分離出来るイデオンと、
大型戦艦 ソロシップのみ…以上だ。
(人員は、それなりにいる。)

この味方の余りの少なさに対して、イデオンを付け狙う
バッフ・クラン軍は、推定、数万~数十万規模の軍隊である。

しかしコスモ達が、バッフ・クラン軍の追撃を
かわしながらも、何とか生き延びていけるのは、
紛れもなく、イデオンの並外れた性能のお陰だろう。

イデオンと、ソロシップの為に、バッフ・クラン軍は、
何人の兵を失ったのかは知るよしもないが、
果てしなく、甚大な犠牲があった事は理解出来る。

イデオンが、後のアニメーション作品に与えた影響は大きく、
僕が知る限りでは、

機動戦士 Zガンダム
トップをねらえ!
新世紀 エヴァンゲリオン
機動戦士 ガンダムSEED 

これらの作品は、ほぼ間違いなく、
イデオンに強い影響を受けている事だろう。

機動戦士 Zガンダムも、富野監督の作品であるが、
イデオンの物語のあちこちに、
後の Zガンダムへの布石ともとれるような
セリフや、設定が組み込まれていたりする。

機動戦士 ZZガンダム の合体シーンも、
もしかしたら、イデオンの3機合体シーンの
影響下にあるのかもしれない。
(…ザンボット3の可能性もあるが。)

思えば、ガンダムSEED の序盤~中盤にかけての戦いは、
最新鋭戦艦 アークエンジェルと、ストライクガンダム、
支援戦闘機であるスカイグラスパー (大気圏内可動機) や、
MA メビウス・ゼロ (宇宙専用機) のみに対して、
彼らを追撃している、大軍を擁するザフト軍の構図もまた、
イデオンの世界観を彷彿とさせている。
(SEED では、味方は戦艦入れて、実質3機のみ!)

戦闘に慣れていない、軍の下士官、民間人の連合体と、
あらかじめ、戦闘訓練が施され、
より組織的に追撃している、ザフト軍という構図もまた、
ファースト・ガンダムや、イデオンの物語によく似ている。

別作品を描いてきた監督達の、イデオンと富野監督に対しての
強い敬意が込められているのは、明白であり、
これらは一種のオマージュであると、僕は受け取っている。

それにしても、コスモの戦闘能力の高さには改めて驚かされる。

あの巨大スーパーロボットのメインパイロットを
務める彼は、まだ若干、16歳。
スーパーロボット大戦をプレイしている頃は、
まだ、気がついていなかったのだが、
イデオンは各メカに2人、計6人くらいで動かしている。

コスモは、他の5人を指揮し、彼らに指示を出しながら、
目の前にいるバッフ・クラン軍と激しい戦闘をしつつ、
母艦である、ソロシップを守りながら戦っている…。

いくらイデオンであり、チームワークもあるとはいえ、
超有能な高校生である事は間違いない。笑

このような事は、ファースト・ガンダムの主人公である、
アムロ・レイですら、やっていなかった事だ。

アムロ・レイもまた、
宇宙世紀を代表とする、戦いの天才であるが、
コスモもまた、戦いのセンスは天才的である。

例えば、防御戦術として、イデオンを分離、
ドッキング・アウトしつつ、敵の攻撃を回避したり、
その逆で、イデオンを分離させつつ、攻撃するといった、
凡そ、常人離れした戦いのセンスで、
バッフ・クラン軍の戦闘メカを叩きのめしていくのである。

未知の発掘兵器であるイデオンには、不明な点が多く、
後から、地球サイドが取り付けた武器をメインで使用する。

ミサイルと、グレンキャノン、そして『格闘』…以上だ。
(ホントに、これしかない。)

物語は、イデオンよりも遥かに小型の戦闘メカや、
同サイズの戦闘メカとの、果てしない戦いが繰り返されていく。

イデオンゲージが光り輝く時、超強力な武器も使うが、
そもそも、そのゲージをコントロールする事は出来ないし、
『イデ』の気分次第で、全く使えなかったりする。笑

アムロ・レイよりも、コスモの方が、
明らかに『気苦労の絶えない戦いだった』に違いない。


ソロシップ内での人間関係は、非常に複雑である。
皆、戦争によって家族を失い、中には戦災孤児もいる。

言い争いが絶えないし、誰しも余裕がなく、
いつも、誰かがイライラしているような環境下だ。

戦災孤児である子供のひとりが、食事の最中に、
『誰も優しくしてくれない!』と言いながら、
泣きわめく姿は、非常に鋭く、また哀しい表現である。

それでも、イデオンのパイロットのひとりでもあるモエラが、
甘えん坊で、臆病な男の子を気に掛け、強く叱り飛ばしたり、
最後にその男の子もまた『強い男になる!』と、
涙ながらに、彼に誓うシーンもまた、強く印象に残る。

地球サイドにいた、ソロシップも、
やがて地球サイドからは、反感を持たれて孤立し、
広い宇宙をさすらう、長い旅路を続ける物語である。

バッフ・クラン軍とも、お互いが理解し合う事はついに無く、
お互いが、お互いを憎みながらも、戦いは終わらない。

それでも、ソロシップの艦長である、
ジョーダン・ベスは勇敢で、正気を保った男だったが、
当の敵対勢力が、話し合う気持ちが0なので、
いつまで経っても、戦いが終わらない。

ソロシップの仲間達も、次々と戦死していき、
その事実を前にして、仲間達は涙と失望を繰り返していく。

そして、その涙と失望の、何倍もの強力な怨念をもって、
また再び、戦いの場へと足を踏み入れていくのである。

ニュータイプが出る、出ない、それよりずっと以前の問題で、
『言葉を交わす』事や『互いの意思を通わせる』事すら、
満足に出来なかったのが、イデオンに出てくる人類の本質。

物語の終盤 カララに対して、その父が話しているのは、
『否定』と『憎しみ』と、果ての『拒絶』でしかない。
血を分けた親子ですら、もはや『会話』が成立していないのだ。

『第6文明人』と呼ばれる、イデオンを作った謎の人類もまた、
似たような事が原因で、滅んでしまったのだろうか?

そのような『知性無き人類』の姿を、遠く近くで眺めながら、
『イデ』は一体、何を思ったのだろうか?

個人的には、ソロシップ 艦長 ジョーダン・ベスが、
1番のお気に入りのキャラクターになった。
(カッコよくて、いい男である。)


THE END 


























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