戦争ゲームの話(5)

戦場が増えて戦況がぐちゃぐちゃになる前ぐらいの話なんだが、盟主が2代目から3代目に変わった。軍部のトップから外交のトップに。やっぱこれからは戦争より外交が大事だよね!というのが表向きの理由で、ほんとの理由は「離婚するかゲーム辞めるか選べ」と嫁に迫られたからだった。抜ける人や消える人はこれまでもいたけど、ついに最高幹部の1人までやめざるをえなくなったか・・・。いや実際この頃には流石に家族やら仕事やらに悪影響が出まくっており、さもありなんという話である。残ったのは頭おかしい人だけだった。

深夜になると、狂人達がハイテンションでガチャを回し始める。このゲーム、ガチャが1回600円だったかな?今のソシャゲの倍くらいした。そして今のソシャゲより遥かに渋く、最高レアは「引いたら一生大切にしろ」と言われていた。後にソシャゲ始めた時、SSRがポンポン出るのにびびったもん。一生レベルがこんな簡単に!?そのくらい渋くて基本はいくら突っ込んでもゴミしか出なかったんだけど、みんな発狂してるので「10連行きまーす!」「全部ゴミでしたー!」「ゲラゲラ」とかやってた。なんだこのゲーム。

そんなある日、知らない同盟から書簡が来る。「はじめまして!〇〇同盟の盟主をしている××と言います!早速ですが、来週から攻め込むんで、宜しくお願いします!」ほほう、中々礼儀正しく好印象だが、言ってる内容は全然好印象じゃない。何言ってんだこいつ。なんでウチに攻めるの!?ウチら何かした!?「いえ、このゲーム、期間決まってるんで、終わるまでにマップの中心を目指して、どこまで進めるか試したいと思ってます!まっすぐ中心を目指してたら貴方達にぶつかりました!対戦よろしくお願いします!」なんでそんな魁!男塾みたいなことしてんの!?

が、外交班ー!なんとか口八丁で戦争を回避してきてー!みんなは中心進軍同盟との隣接地帯に進軍ー!砦を並べてプレッシャーをかけるんだ!え?そんな余裕ない?仕方ないから戦場の兵を優先的に回していいよ!こっちの戦争回避が今は最優先なので、その為に全力突っ込む。戦争回避できれば丸ごと残る兵なので大丈夫だ・・・後は外交班を信じろ・・・!

砦を並べてプレッシャーをかけた効果もあったのか、なんとか戦争は回避できた。「このままアレと戦う?それより回避した方が中心に近づけると思うよ?」と説得したら「そうですね!そうします!」と避けてった。危ねえ。次にぶつかる同盟さんには気の毒だが、泥沼の戦いを強いられている俺達の方がもっと気の毒なので、堪えて下さい。

全く、なんでこう次から次へと・・・「元盟主ー!資源が欲しくないですか?」ん?そりゃ戦争続きでカツカツなので資源は欲しいけど、たくさん資源が出るような美味しい土地は軒並み取られて埋まっちゃってるし・・・「まだ諦めるのは早いですう。確かにこの辺は既に埋まってますが、マップの端っこ、辺境の方はプレイヤーも少なく、美味しい土地がたくさん余っているのです!」そうかもしれないけど、そんな遠方にどうやって行くの?「ふっふっふ、実はあたしは前からこっそり辺境に道を伸ばしていたのです!」おま、作戦本部に内緒でなんてこと・・・「つまり、今なら辺境に領地があるので、あたしらの誰でも一気に辺境まで飛べるのです!」な、なんて美味しい話だ・・・!資源は欲しい・・・みんなも欲しいだろう・・・行っちゃうか、辺境・・・!

という訳で、資源目当ての遠征軍に参加したい人は来てねー。あれ、みんな兵が無いとか言いつつ持ってんじゃん。まあ細かい事は言いっこ無しや。さあ、現地の手柄は切り取り次第じゃー!進めー!資源取り放題だー!なんて事をやってたら地元の同盟から書簡が来る。んー?辺境の田舎同盟が何の用かな?うちの傘下に入りたいのかな?「ちょっとアナタ達、うちらの地元でなにしてるんですか!?」見て分からない?侵略してるんだけど。今忙しいから話は今度でいい?「う、うちのバックには四大同盟の一つがついてるんですよ!うちらを蹂躙したら彼らが黙ってないですよ!」

はっはっは。何を言うかと思えば、そんな馬鹿な・・・説明すると、このサーバには四大同盟と言われる大きな同盟が4つあり、最後はこの4つが戦ってゲームが終わると言われていた。完全に格上の大国達である。で、そんなゲームシステムにおける同盟とは別に、同盟同士で結ぶ紳士協定みたいな同盟もあった。この場合はシステムで守られてないけど、「うちらはここと同盟してます」と周知する事で陣営を明らかにするんですね。もちろん軍事同盟の意味合いもあり、どこかが戦争になったら紳士協定を結んだ同盟も巻き込まれます。

で、この田舎同盟はそんな大同盟と紳士協定を結んでる?そんなはずは・・・とその大同盟を見に行くと、確かに紳士協定結んでた。まじで?はい、みんな、侵略ストップー。緊急会議ー!これこれしかじかなので、ちょっと攻めるのはまずいっぽいです。引き返そう。「えー!せっかくここまで来たのに!?」「コツコツ道を伸ばした労力を返しやがれですう!」「もうそんなの気にしないで蹂躙しちゃおうぜ!」もうみんな蛮族になってる。いやまあ気持ちは分かるんだが。ていうか、中央の大同盟がほんとにこんな辺境まで来るか?田舎同盟も来ると思ってるか?仮に来るとしても一週間ぐらいかかるし、そんだけあればこの辺を火の海にする事はできますよ?

という訳で、ここでも緩急織り交ぜた交渉が始まる。いや田舎同盟の盟主さんね、うちらも手ぶらでは帰れんのですわ。しかもそちらの立場も分かる。そこで、ここからここまで線を引いて・・・この線より東がウチ、それより西には攻め込まない、という約束でどうです?「うーん、それだとちょっと・・・もう少し線を東にズラせません?」じゃあここまで引くので、飛び地でココとココ頂けません?「ところで、今うち攻撃されてるんですけど」ちょっとー!休戦交渉中にぶっこみとかほんとやめて!?もう少しで纏まるから落ち着くんだ、どうどう。

なんとか交渉は纏まって、遠征メンバーにも資源を割り振る事はできた。あぶねえ。きっと向こうの盟主もメンバーから「なんであいつら残ってるの!?」「大同盟に蹴散らしてもらおうよ!」とか言われてたんだろうなあ。メンバーは好き放題言うからなあ。しかしやっぱり強気にはなり切れなかったか・・・まだこのゲームの紳士協定がどこまで有効か分からんしな・・・うちらが同情されてただけかもしれんが・・・なんにせよ、資源が手に入って良かった!

とかやってるうちに、1ゲーム目も終わりの時期が近づき、戦争は佳境を迎えようとしていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?