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Vol.2|擬似レモンスカッシュ感覚

#マガジン独白  |Vol.2|気の抜けた炭酸飲料

I Feel, レモンスカッシュ感覚
僕の中で稲妻
一生求む感覚 そう 例えばラブ
例えばポップ 第六感でときめいて
──Base Ball Bear「レモンスカッシュ感覚」


先日、CCレモンの2Lペットボトルを買ってきた同居人に「それどんな味?」と聞いたら怪訝な顔をされた。一瞬その意味が分からなかったが、自分ってCCレモン飲んだことないのか、と後から気付いた。

いわゆる炭酸ジュースを飲んだことがほとんどない。長いこと炭酸が苦手で、コカコーラも、ファンタも、三ツ矢サイダーも一度も飲んだことのないまま大人になった。

飲めるようになったのは酒を飲むようになってからだ。そのため自分にとっては炭酸=アルコールである。居酒屋のサワーは割られているからかそこまでキツくないので、初めての飲みの席でとりあえず分かりやすそうなオレンジサワーを飲んだら、意外とすんなり飲めた。

こうやって普通の炭酸を飛び超え、炭酸+アルコールに先に適応した自分は、普通なら通るべき炭酸ジュースにほとんど縁がない青春時代を送ってきた。

でも当時聴いていた音楽は炭酸入りまくりだった。中高生の頃にずっと聴いていたバンド、Base Ball Bearの歌詞には「レモン」という言葉が多数登場する。レモンの入った飲み物を飲む機会なんてほとんどなかったくせに、爽やかさ120%の炭酸ソングを聴いて高校のクソ熱い坂を毎朝登っていた。飲めもしない炭酸とそれに伴う清涼感を音楽で補う、言わば擬似レモンスカッシュ感覚を味わっていた。

こうして文字通り気の抜けた青春時代を送ってきた自分は、今も本当のレモンスカッシュ感覚がどんなものか知らない。嬉々としてコップにCCレモンを注ぐ同居人は、本当の青春の爽やかさ・輝き・煌めき・憧れの色々を知っているように見え(大袈裟ではない!)、それが何だか癪で、奪うように一口飲んだ。

こんな美味いものを!
飲んでこなかったんかい!!

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