「小品」を吹こう#9 《メンデルスゾーン=シュテックメスト/「歌の翼に」幻想曲》
まぁ~、とんでもなくサボってしまってました。
年明けてけてから何故か分からないことに忙殺されていて、これじゃいかんと思いながら今に至ってます。
「忙殺」って心を亡くして殺される、って書くので夢の中で内観?していて本日ようやくいろいろと整理整頓して少し上向きになっています。
いや、全然暇でした!って言うと良いみたいです(;^ω^)
この期間、私みたいな人結構いるのではないかと思っていますが、どうなんでしょう?
さて本日はメンデルスゾーン作曲、シュテックメスト編曲の「歌の翼に」による幻想曲です。
参考動画 https://www.youtube.com/watch?v=eCZF-ogQKXI
タイトルが長い!
編曲者がいるとたびたびタイトルが長くなりますね。
この曲もフルート界では有名な曲です。
私は2度目の発表会の時に与えられた曲で珍しくトラウマの無いとても好きになった曲で、1度目の発表会で吹いた「アルルの女」のメヌエットより断然吹いていて楽しかった記憶があります。
なんたって、アルルの女は難しい。
アルルの女のようなインターバルの激しさや複雑さはほぼないので基礎がほぼ出来てきた初級段階から生徒に吹かせるにはとても良い曲です。
さて、今までなんとなくお勉強的な感じでこのシリーズを取り上げてきましたが、とある方から言われた一言に救われ?ちょっと感え方を変えてみることにしました。
今後また変わるかもしれませんが、今回のこの記事から、小難しい音楽的解釈は置いておいて、私なりの感じ方やイメージしたものをどのように表現したいか、またテクニックなど問題がおきそうなところのひとつの練習方法等をとメインにしていこうかなと思ってます。
楽譜上守らなければならないことはきちんと守った上でのことになると思います。
それではここから・・・
この曲が生まれるまで
この曲にはまず詩がありました。
ハイネ(1797年-1856年)というドイツ出身の詩人の晩年に刊行された「歌の本」の中にある「歌の翼に」という詩にメンデルスゾーン(1809年 - 1847年)曲をつけた、とされています。以下Wikipediaから引用↓
というような素敵な詩でピュアな感じでにとても癒されますよね。
さらにこの歌をドイツのシュテックメストが幻想曲として編曲したという流れです。
シュテックメストについては詳細は分かっておりませんが、一般的に言われているのはフルート奏者、および作曲家だったのではないかと言うことです。
作風はフルートの魅力を生かすように短いカデンツの部分もあり華やかさも加わってます。
タイトルについての疑問
さて、この曲のタイトルについて触れておきたいと思います。
上のような経緯をたどって生まれた曲の題名はドイツ語で《”AUF FLÜGELN DES GESANGES” FANTASY》とあり、このまま直訳すると『”歌の翼で”ファンタジー』(Google翻訳による)となります。
私はいつも小品集などに書かれている日本語訳のタイトルはこれで良いのだろうか?と常々感じておりました。
いつも変なところに拘ってしまうのは良くないと思いつつもYouTubeに動画をあげるようになってから更に疑問符が大きくなっていきましたので調べてみました。
楽譜に書かれている日本語タイトルにバラつきがあり、今日では多分『「歌の翼」による幻想曲』が一般的です。
しかし、元のハイネの詩のタイトル、またはメンデルスゾーンが作曲した声楽曲のタイトルは「歌の翼に」という「に」がついているのです。
そして、中の詩においては「で」という助詞が使われています。
なので、ハイネの詩が元だとすれば、「歌の翼で」というタイトルなのではないでしょうか?
シュテックメストのフルート版に至っては「歌の翼」で「に」や「で」という助詞が省かれてますね。
日本語ってある意味とても曖昧に表現できるところがあるので厄介です。
「拘るな!」「もっと違うことに視点を向けろ」と言われそうですけれど(笑)でも気になる。
「に」を使うとき→目的
「で」を使うとき→手段
と国語で習ったように思うので意味が全然違いますが・・・・。
詩を読む限りは目的になるのでは???
ですので、本当は「歌の翼で」というのがしっくりきますが?
ということは「”歌の翼で”による幻想曲」になるのでは???
ファルベの動画のタイトルはそんな疑問が含まれて「”歌の翼に”による幻想曲」としましたが、どうなのでしょう?
他の方の動画にはの「"歌の翼”による幻想曲」になっているものが多いですね。
見ているとどんどん意味が違うく思えて気になってくるんですよね・・・。
いやいやまて、こうなると”歌の翼”をくくらずに「歌の翼による幻想曲」、または、「による」は手段に使われることもあるので「で」と「による」と意味が重複するので、括るとすると「”歌の翼による”幻想曲」、となるのではないでしょうか?
YouTube動画のタイトル、もしかしたら直すかも!!(;^ω^)
こうなると、翻訳というのは難しいですね。
いつもアップしているブログ記事、なんか文章変じゃないですか?と言われそうなほど助詞の使い方を間違っている私が言うことじゃないかもしれません・・・。
静かな幻想の始まり
はじめはテーマを変化させた形の前奏ですが、この曲はアウフタクトで入りますので、フレーズはいつもアウフタクトを意識しましょう。
8分の16拍子というのは綺麗に流れていくリズムですが、割と皆さん苦手ではないでしょうか?
流れていくように演奏しなければならないけれど、四分音符が伸びてしまったりするのは、八分音符の刻みがしっかり身についていないからかもしれませんので、最初は8分音符でカウントして歌ってみましょう。
冒頭にAndante tranquillo となってますので、静かに歌いますが、この詩を読むとこのtranquilloがどのような静かな表現を要求しているのか少し分かると思います。
私はとても静かだけどとてもキラキラとして前向きなエネルギーを感じます。
ただ、気をつけたいのはスタッカートで、ここは鋭くならないようにコロコロと転がすような明るく軽い音で繋げていきたいです。
スタッカートは短くということよりも、「軽く」を意識するように、
そして決して吹きすぎないこと。
前打音がところどころにありますが、アクセントのように強くならないように、「あ、指が勝手に動いちゃった」くらいの気持ちで何気なく。
フルート演奏の見せ所カデンツァ=クロマティック
そして、次に本来のテーマへ引き継ぐ橋渡しとなるクロマティック(半音階)ですが、この曲で初めてのクロマティックをマスターする人も多いはずです。
もう指の順番が決まっているので、クロマティックスケールをまだマスターしていない初級の人は踏ん張り時です。
最初から早くしようとしないで、ゆっくり運指を覚えていきましょう。
高音Eでフェルマータで十分延ばしたあと高音Eから1オクターブ下のDまでの下降形です。その中にある音符はいくつあるでしょうか?15個ありますのでまず見やすいように3連符のブロックを5つ分けて練習、その後4連符ブロック前後を繋げる練習、そして(4連符ブロック3つ+3連符ブロック1つ)というようにブロックを広げて練習します。
どんな練習方法でも構いませんが、効率よく覚えていける方法を工夫してみましょう。
あと、私がよくやったのは、右手の下降形、上行形の指の動きを覚えてしまい、その後左手だけの動きも覚えていって、左手から右手に移行していく様子を自分で観察しながら繋げていきました。
瞬時に楽譜を読める人は「あ、これは半音階だ」って分かるので、後は指を当てはめれば良いだけになるのでやっぱり初見で譜面を読む力と全スケールを身につけておくことをお勧めします。
動きにくい指のところは繰り返し、しかし力が入っている場合が多いので力が入らないくらいの速度から指に覚えこませます。
慣れてきたら高音Eの音からゆっくりはじめ一気に早く下っていくようにし、中音Dで少し留まってブレスをして次の展開へ繋げます。
ここでは、まだカデンツで時間が解放され伴奏もなくなり、まだフルートに自由な枠が存在しているので8分音符も次のTempoに戻す合図のためにほんの少し遅くしながらピアノへ渡してあげます。
さぁ、必ずやあなたもクロマティックの名人になれるでしょう!
テーマは静かだけれど生き生きと歌いたい
テーマに入ってからは歌うようにのびのびとフレーズを意識して吹きます。
ハイネの詩を思い浮かべて、優しく清々しく・・ガンジス川の流れの彼方のように・・・
うーん、しかし、ガンジス川見たことないぞ(笑)
というか、すぐ思い浮かぶのはインド、そしてガンジス川での沐浴・・・
人がいっぱい沐浴していて濁っているイメージが・・・でも、詩にあるようにきっとガンジス川の彼方には美しい光景があるのでしょうね。
よく、このメロディー部分はそんなに難しくないと言って何も考えずにつまらない演奏をしてしまいがちですが、聴いてくださっているお客さまに「あ、聴いたことある曲だ!」と耳を傾ける部分でもあるので、丁寧に響かせて風に乗せてあげるようなイメージで吹いてください。
フルートから、ピアノからの引継ぎ
さて、テーマが吹き終わり、ピアノの間奏がフルートの終始音、開始音アウフタクトまで含めて5小節間あります。
あれ、どこから入れば良いのだ???と頭が真っ白になったりしてませんか?
私は子供の頃の発表会でピアノとの初音合わせの時、ピアノのアルペジオに耳を奪われてすっかり数えるのを忘れて入れなかった記憶があります。
ここはしっかりとした予習が必要です。
小節数を数えるのも良いのですが、そうすると自分の中で音楽として流れなくなってしまいますので、次のところを意識してピアノの音を聴いてみましょう。
ピアノパートを眺めてみましょう。
アルペジオのパターン、そこにCrescendo、フルートの入る2小節前からdim.して次はppと書かれています。
この場合ppとなったところがフルートのアウフタクトで始まる小節の頭です。
ですので、ピアニストにppに入る手前にほんの僅か落ち着いて弾いてもらうと目印になり分かりやすくなります。
あ、また始まるな!と準備できます。
そして次は変奏された展開が待っていますね。
ここはフルートを引き立てる部分でもあるので良くさらいましょう。
アルペジオが多いので、展開されている音を読み込めばそんなに難しいところはないはずですが、音符が込み入ってくると一気に恐怖心で吹けなくなるパターンに陥りやすいですね。
落ち着いて読んでいきます。
最初は吹けない箇所、または小節だけを繰り返しゆっくり練習してみましょう。
続けてミスなく吹けないときは、もしかするとそれは目が固まっているかもしれません。
目が一点に留まっていると広くフレーズを見渡せないので指にまで動きが伝わらなくなって停止してしまうのです。
視野を広くして前後の小節を繋げて吹けるように動体視力を養いましょう!
さて、今度は2度目のカデンツァですが、今度は半音階の下降ではなく、アルペジオの下降ですので、実はこちらの方が厄介だったりします。
でも、レドラファの繰り返しなので、口頭で「レドラファ・レドラファ」とスラスラと言えるようにしておくとすぐできます・・と思います。
高音レと中音レは指使いが変わりますがそこだけ意識します。
実はここは真面目に動かさなくても良い替え指があります。
レドラの次ファから下のレまで右手の4(薬指)は押さえたままで吹けます。
動かしても良いですが、少しでもバタバタさせたくない人は4の指(右手薬指)を押さえたままでをチャレンジしてみてください。
※アルテ2巻後半では小さく、4---と書いてるところは押さえたまま演奏する練習が掲載されてますのでアルテを持っている人は開いて見直しておくと良いです。後々いろんな場面で使うと非常に楽になります。
2度目のカデンツァが終わるとまたピアノの間奏がありますが、今度は前回より1小節足りなくのんびりしてられません。
スコアを見ると今度はCrescendoはあるけど、ppと書かれている小節はフルートが始まると同時ですので、ピアノにお願いはできません。
ですので、前回と同じく一小節にアルペジオのブロックが2つ入っているのでピアノの音を数えながら音色をよく聴き覚えておくようにしましょう。
よくあるのが、数えはじめる箇所です。私はフルートの終始音から△を2つずつ書くやり方で数え始めますが、もしかすると次の小節から数えると間違わないかもしれません。それでもピアノの音色を覚えておく方が良いですね。ピアノを弾ける人は弾いてみるのが一番です。
ここまで辿り着いたらあとは最後に向かって進んでいこうと思ったら、、おっと、また間奏がありますね。
ここはもっと余裕がなく2小節間しかないけれど、その方がちゃんと入れると思います。
ここは数えて入ってもぎこちなくなりません。
一曲全体を通してピアノが静かにアルペジオが流れている上にフルートが優しくキラキラした音を乗せていく感覚が良いと思います。
リラックスして軽く歌うようになれれば、歌の翼で素晴らしい世界へ連れていけるのではないでしょうか?
最後は静かに、でも希望に満ちたため息のように終わります。
まとめ
ざっくり私的に演奏するうえで気を付けている点が以上のようになります。
この曲はどんな場にもしっくりはまる曲としてセットリストに入れてますし、発表会でも映える小品のなかの一つとして必ずレパートリーに入れておきたいものですので、是非チャレンジしてみてください!
気が付けばすごく長くなってしまいました💦ちょっと長すぎましたか・・・
次回はドビュッシーの「小舟にて」ですが、これは振り返りや反省などもちょこっと紹介します。
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