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寿命定年希望制

1
大病院の広い休憩スペースで知り合った女性患者同士が意気投合
車イスベットの女性の所には、知り合いだという人が近付いて来て
席に座り紹介した
「実は、私はこの世を去るトレーニングをしてるの」
それを聞かされた彼女は驚き、詳細を尋ねた

よかったら見てみる?、といわれ病室に
「では今回は、声に出してやってみますね」
「さぁ瞑想に入りましょう、全身が発光するのを待ち観想しましょう」

「もう十分に発光してます」
「そうですね、では、上部から大量の水が流れて来て
身体を押し流してくれるようにします
ウォータースライダーのように
両腕の脇を絞め、両手を前で組み、リラックス状態で構えて下さい」

「ゴゴゴゴゴという音が頭の上の遠くからします」
「そうです、3秒程で、身体を流しますよ」
そして、女性の身体は流され、肉体から離れた

2
「さぁ、身体から抜けました、今あなたの自己は
霊体には8、肉体には2の状態です
その状態をよく観察して下さい」

「では、想念で、霊体と肉体の間を行き来してみて下さい」
「不思議、何とも不思議」
「そうですね、では相互の割合を7対3、6対4も試してみましょう」
「はい」

「さてでは、一時的に9対1にしてみましょう
許可は出ています、ここからは聖霊の許しが出ているので、私もお手伝いします」
「ああ、体の方にはもう自分はいません、なんとか言葉だけを話せるようになっています」

「そうです、これは1歩手前で、10対0では、完全に肉体から切り離されます
さぁ今日はここまででいいでしょう
親族の方々への面会や、色々伝えたい事もあるでしょう
その後で、現世を去る事にしましょう」

3
「去る時は、少し処置をします
弛緩状態から、排泄が起こらないように、癒着をします
それから、腐敗しないように、処置もします
これで終わりです、、後は天使達が導いてくれるでしょう」

「トレーニングを続けて来たように、去った後は
全てを想念で対処し続けて下さい
それはどこまでも続けて行くスタンスです
今日のトレーニングはここで終了です」

静かに目を開いた女性は、一連の状況を
唖然と見ていた彼女の方を見てほほ笑む感じだった

その後、広い休憩スペースで、彼女は女性にあらゆる質問をした
女性は具体的詳細を説明し、もうこの世を去る準備が出来ていると告げた

4
女性が去る日、彼女は傍に立ち会った
それは彼女以外誰も知らない

医師も看護婦さん達も
他には誰もいない、会話はテレパシーで行われ
それは彼女にも聞こえるように配慮してくれていた

そして女性は静かに、この世を去った
彼女は、悲しくはなかったし、涙もなかった
体脱の時、女性は、彼女に視えるように何度も
傍に立って視せていたからだ

霊体になった女性は、介助が必要な車イスの状態からは解放されていた
去った状況を視ていた彼女は、ふとナースコールを押そうとしたが
霊体の女性が
「私が看護婦さん達に呼び掛けてみるから視てて」と言った

5
それから看護婦さん達がやって来て
後はドタバタとし始めた
彼女は、自分の病室へと戻った

女性はある事を言っていた
「看護婦さん達の中には、霊感がある人達がいるので
分からないようにバリアを張っている
私が去った後は、バリアは解除される」と

また女性は言っていた
「この世は女性達が降下して来るような所ではない
私はそんな世界からやっと去る事が出来るw」と


現世を去り、戻る事のない人達がいる
穢土の汚わいの世界を去り、戻る事のない人達がいる
肥溜に美しい花を投げ入れる愚か者は、本来はいない

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