【読書】國分功一郎・熊谷晋一郎「責任の生成ー中動態と当事者研究」

「<責任>の生成ー中動態と当事者研究」という本を読んだ。素晴らしい。今年読んだ本のなかで一番おもしろかったかもしれない。読んでよかった。

色々面白いポイントがあったが、まず責任という概念は人工的に生み出されたものという指摘が面白かった。一部誤読の可能性、というか戸田山先生の本で読んだことと混ざっている可能性があるが、責任概念がないと人間社会を維持する上でちょっとした問題が起こるかもしれない。例えば、誰かに暴力を振るった人がいたとしてその人に責任を帰属するのが通常であるが、人間に自由意志なんてものはないんだから責任を帰属させることなんてできないとなってしまうと、誰もが責任を問われず好き放題できる世の中になる。だからこそ、責任を問い罪を償わせることで更生させることを目指す。

しかし、本書では責任を免除すること(免責)によって却って罪を引き受ける(引責)ということが指摘されており面白かった。暴力を奮ったあなたが悪いと言われると言い訳したくなるけれども、暴力を振るわせるに至った状況や環境が悪くてあなたは悪くないと言われると責任を引き受けても良いかなと思えるだろう。

当事者研究という現場を大切にする熊谷先生と哲学という理念を大切にする(ように見える)國分先生が対話する形式の本書は、抽象的な事象を現実に即した形で説明し、現実の場面を抽象的に説明するという往復が心地よく、抽象的でありながらも分かりやすい稀有な1冊となっていると思った。

読んでよかった。

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