【読書】リチャード・セイラー&キャス・サンスティーン「実践 行動経済学」

 セイラーとサンスティーンによる書籍「実践 行動経済学」という本を読んだ。人は合理的な選択をしているわけではないので、ちょっとした仕掛けで人の選択なんてすぐに変わってしまうという本であった。「実践」と本のタイトルにあるように、こうした人の性質を活かしてより良い意思決定を促進していこうという気概を感じた。

 この本を読んで思い出したのは、最高裁判所裁判官国民審査である。総務省のホームページによると、以下のように書かれている。

・裁判官ごとに、辞めさせたい意思があれば「×」を記載し、なければ何も記載せずに投票します。

・「×」が記載された票が、何も記載されていない票の票数を超えた場合、その裁判官は罷免されます。

 Wikipediaによると今までで「×」と書かれた割合は最高でも15.17%なので、非常に多くの方に支持されているということになる。しかし、このとき何も記入しなかった人は、辞めさせたい意思がないからチェックを入れなかったのかもしれないし、単に関心がなかっただけかもしれない。なので、「×と書かれていない=支持」と想定しているこの制度はちょっと怪しいと思っている。もし「×と書かれていない=支持」なのであれば、ルールを以下のように変更しても同じような結果が得られるだろう。

・裁判官ごとに、辞めさせたい意思がなければ「◯」を記載し、なければ何も記載せずに投票します。

・ 「◯」が記載された票が、何も記載されていない票の票数を下回った場合、その裁判官は罷免されます。

 個人的には、ナッジで人の行動が左右されている身近な例であり、もっと議論されても良い事柄のように思われる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?