【読書】大治朋子「歪んだ正義 『普通の人』がなぜ過激化するのか」

「歪んだ正義」という本を読んだ。心理学の知見を基にテロなどの現実問題がなぜ生じるのかについて検討した1冊であり、著者の新聞記者としての視点と研究員としての視点がうまく活かされているように思えた。

1つ疑問に思ったのは、日米関係が悪くないのはなぜなのかという所である。中東を含め色々な地域で紛争が起こっており、そこには相手国に身内を殺されたような人もいる。このような遺族は相手国の殺害者だけを悪者として認知するのではなく、相手国全体を悪者として認知しがちである。そのため仮に両国間で和解がなされても、遺族は相手国に対してネガティブな気持ちを持っていることは珍しくないはずである。翻って日米関係を見てみるとアメリカ軍に親族を殺害された日本人や、日本軍に親族を殺害されたアメリカ人はいるはずで、そのことが両国間の関係を悪化させても良いはずなのにそういう空気があまり見えないのはなぜなのかなと思った。

その他この本をもとに起こりうる未来について思ったのは、2021年に東京オリンピックが仮に開催された場合、東京オリンピックを阻止するという正義感を基にして何らかのローンウルフ的行動をとる人物が現れてもおかしくないのではないかということである。もちろんそうした行為は良くないが、東京オリンピックを阻止したいという気持ちはわかるという点で一部から支持される可能性があり、承認欲求を一定程度満たすと予想される。ウイルスももちろん大きなハードルであるが、こうした治安面でも十分な管理がなされている必要があるなと思った。

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