【読書】瀬名秀明「ポロック生命体」

瀬名秀明さんの「ポロック生命体」という本を読んだ。AIの創造力が人間を凌駕するとき、我々はどのようなことを思いどのように対応するのかという話。炭鉱のカナリアになりうる作品であると思った。以下、感想を2つ。

ずっとある画家が書いたと思っていた作品が実はAIによって描かれていることが分かったとして、AIではなく人間が作品を書くことの意味はあるのだろうかという問いが投げかけられていた。この問いは将棋にも当てはまると思う。高度な棋譜を鑑賞したいのであればAI同士が戦った棋譜を見ればよいのにもかかわらず人間同士の棋譜を見るのはなぜか。それは人間同士の闘いというドラマがあるからであるのか。もしそうなら、全く将棋のことは分からない人間というハコを用意して、将棋を指すときだけはAIが脳内にインストールされているという状況だとどうなるのだろうか。など色々と考えた。自分は楽観的なので、どれだけAIが強くなったり創造的になったりしても、人間が作った作品はなくならないのではないかなと思う(似たような話をオードリーか誰かのANNで話していた気がするがデジャブだ…)。

もう1つ。今の芥川賞や直木賞はでは、人間が人間の作品を選ぶというシステムになっている。でももしAIの描いた小説の方が面白くなったらどうなるのだろうか。AIの描いた作品を選ぶ能力を作家は持ちうるのか。新人を発掘するという意味であるなら応募をAIの書いた作品に限定するという可能性もあるが、人間の作品が相対的に面白くないのであれば出版社も人間ではなくAIの書いた作品に力を入れるかもしれない。どうなることやら。これと似た問題が実は将棋でも起こっていて、新手や新戦法に対する賞(升田幸三賞)をAIの手が受賞するようになってきた。これからどうなるのか分からないがある意味で善悪を超越した手、例えば正確に対応すれば悪手だけれどもミスすると一気に逆転するような勝負手、などが受賞することになるのだろうか。

ほんのあと数年で起こってもおかしくないようなことが書かれているように思えて面白かった。

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