【読書】山口裕幸・髙橋潔・芳賀繁・竹村和久「経営とワークライフに生かそう! 産業・組織心理学 改訂版」

「経営とワークライフに生かそう! 産業・組織心理学 改訂版」という本を読んだ。幅広く読みやすい1冊であり、これぞ概論という印象を受けた。一方で、ある特定のトピックについて深く学ぼうという人にとっては物足りないと思われるので、各章の末に記されている書籍を読むほうが良いだろう。

個人的に興味深いと思ったのはアンカリングについての議論である。例えば洗濯機の値段を予想するとして、直前に99999という数字を見た人と直前に1111という数字を見た人とでは、前者の方が高い値段を予想するといった現象をアンカリング効果といい、全く関係ないはずの数字が1つの基準として作用し、後続の意思決定や予想に影響を与えるという現象を意味する。

この話を聞いて思い出したのが、鈴木もぐらや岡野陽一といった借金大王である。鈴木もぐらは借金700万円が、岡野陽一は借金1000万円がそれぞれベースラインとなっており、借金がその値よりも少なくなるともうちょっと借金をしても良いような気分になるという。多くの人は借金0円を基準として借金をするか否かの意思決定をするのに対し、彼らは数百万円が基準になっているので、なかなか借金も減らないのだろうと思われる。

さらに、0円というのは不思議な力を持っているので、借金0円から借金1万円へのステップはなかなか抵抗があるのに対し、借金700万円から借金701万円へのステップにはあまり抵抗がないのだろう。空気階段はキングオブコントから少しずつ世に出始めているので借金を返せる時期が来るのだろうが、700万円というアンカーに惑わされずご家族のためにも借金を返済して頂きたいところである。

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