おひとりさま・ひとりっ子による実家のたたみ方 #3
いよいよ、いざという時の対応をどうするのか(どうしてほしいのか)
両親からヒアリングすることになる。
けれども「死」や「介護」を前提としている話だけに切り出しかたが
難しい。
両親だって兄弟姉妹や友人の訃報に接する機会が多くなっているので、
いずれ自分にも回ってくることはわかっている。
しかし、いざ自分自身の話となると、あまりいい気持ちはしないだろう。
お互いに落ち着いて話し合うために、客観的な数字や事実を混ぜることに
した。
期間の目安
厚生労働省の簡易生命表によると、平均寿命は男性81.09歳、女性は87.14歳(平成5年)。
WHOが発表した世界保健統計によると、日本人の平均寿命は男性81.5歳、
女性は86.9歳。そして健康寿命は男性72.6歳、女性75.5歳(2023年版)。
父は既にどちらの平均寿命も超えている。
つまり、明日いきなり介護が始まっても、まったく不思議ではない。
介護は始まったら終わりが見えないというけれど、
せめて何らかの目安はほしい。
そこで厚生労働省の人口動態統計月報年計(概数)の概況にある
「性・年齢(5歳階級)別にみた死亡数」を見てみる。
これによれば実際に死亡した年齢幅は男性が85〜89歳、女性が90〜94歳
の時期である(令和5年(2023))。
我が家の場合は、父の年齢をふまえて少なくとも5〜6年程度を想定した
検討を提案することにした。
相場感の把握
低所得者であれば公的補助などが受けられ介護費用を抑えられるけれども、「普通の会社員」として定年まで働いてきた父のような場合は自分たちで
賄わなければならない。
介護費用で一番費用がかかりそうなものは住まい、つまり介護施設である。
そこで、大手高齢者施設検索サイトで東京都の高齢者施設の相場を調べて
みた。
介護付き有料老人ホーム:入居一時金=2,000万円~3,000万円
月額利用料=30万円前後住宅型有料老人ホーム : 入居一時金=905.5万円
月額利用料=30.9万円サービス付き高齢者向け住宅(以降、サ高住):
入居一時金=286.2万円
月額利用料=30.2万円
留意すべきは上の相場の前提が1人部屋ということ。
我が家は幸か不幸か両親が揃っているので、倍を見積もっておく
必要はあるだろう。
マヂか。
もちろん2人部屋がある高齢者施設(サ高住)もない訳ではない。
入居一時金=655.7万円 、月額利用料=32.4万円が相場だ。
しかし、施設数は一気に少なくなるうえ、居室面積も30㎡前後。
これまで50年近くも一軒家で暮らしてきた両親が狭い空間で
顔を突き合わせて生活することなど到底想像できなかった。
判断ができなくなった時に備えて
子供にとって一番困ることは、高齢の親が意識不明や重度の認知症などで
判断能力が失われたり、意思表示が困難に陥ったりした場合だ。
資産の処分や移転ができなくなるのはもちろん、口座凍結となり、生活費や
医療費の支払いすらできなくなる可能性がある。
その対応策として「成年後見制度」と「家族信託」がよく知られている。
さらに最近、いくつかの銀行では「予約型代理人制度」(銀行によって名称が異なる)といったサービスも利用できるようだ。
そこで、それぞれのデメリットの情報を確認した。
「成年後見制度」のデメリット
後見を開始するには家庭裁判所での手続きが必要
申立手数料や後見登記手数料などの諸費用がかかる
専門家を成年後見人にした場合、報酬負担が生じる
家族以外が後見人となった場合、家族の希望や意向が反映されないこともある
家族や親族が成年後見人になった場合、裁判所への報告など後見業務負担が大きい
後見制度を一旦開始してしまったら中止できない
「家族信託」のデメリット
本人の判断能力が低下する前に締結が必要
手続きにかかる経費や専門家への報酬など諸費用がかかる
受託者の義務負担が重い(帳簿等の作成、報告、保存など)
介護や食事の世話など、実際に暮らしを支援する行為に対応していない
「預金債権(⚫︎⚫︎銀行の▲▲口座など)」を信託財産として設定できない
「予約型代理人制度」のデメリット
本人の判断能力が低下する前に金融機関の窓口で手続きが必要
介護や食事の世話など、実際に暮らしを支援する行為に対応していない
代理人に取引移行した後は本人取引ができない
我が家の場合は、「家族信託」か「予約型代理人制度」のいずれかで大丈夫そうだった。
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