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龍つながり? 猿沢池と室生龍穴神社

今年は辰年ということで、社寺でもあちこち『龍キャンペーン』をやっている。

その流れが来たのか、先日「猿沢池に住んでいた龍が春日山経由で室生龍穴神社へ移った」話に辿りついた。『古事談』である。

さらに、鎌倉時代の説話集「古事談」には興味深い伝説が記されている。春日大社と一体だった興福寺のすぐ南にある猿沢池には龍神がすんでいたが、采女(うねめ)(女官)が身投げしたために水が穢(けが)れ、春日山へ移ったというのだ。

「古事談」が記す龍の伝説には実は続きがある。
春日山へ移った龍はやがてそこも穢されたために今度はさらに山深い室生(奈良県宇陀市)へと飛んだ。伝説は興福寺の勢力拡大を示すともされるが、室生は古くから信仰があり、平安時代には京都・貴船神社とともに朝廷から崇敬され雨ごいが行われてきた。

産経新聞 2023/12/24 命の水求めた切実な祈り 絶大な「春日」龍神信仰 より


ガイドでは采女が猿沢池に身を投げた話や采女神社が一夜で向きを変えた話は定番の案内に入っている。

春日大社の一の鳥居の北側にしか榊がない話も、聞かれればする。「猿沢池の龍が鳥居に止まって休憩する時に、尻尾が当たってこそばがるから南側にはつけない」

そう説明しながら、猿沢池に龍おったんか?と疑問がわいて来たのを調べないままになっているのを思い出した。

かつて猿沢池にすまわれたという龍神、善女龍王は春日大社の宮に入る前、頭を北にして一の鳥居で休憩をしていたとか。

 鳥居に龍の尾が垂れ下がると、榊(さかき)が邪魔になって龍が嫌がるので南側の榊が取り外されたのだそうです。現在でも春日大社の一の鳥居には、龍神に配慮して榊が片方にしかありません。古くから伝わる信仰がうかがえます。

デジタル奈良新聞 2024/01/10  春日大社「五大龍神めぐり」を体験 より


北側しか榊がない、枯れてるけど。

猿沢池の龍神って善女龍王だったのね。
善女龍王と言えば、空海と守敏の神泉苑での祈雨対決で出てくるお方。

そしてまた3月に春日大社の奥の院の龍王珠石と名前の場所を訪れたのを思い出した。

この神社のすぐ西側には、「龍王珠石」と呼ばれる石がたくさん積まれたエリアがあり、ここには雨ごいの竜王として知られる「善女竜王」が尾玉を納められたという伝説が残されており、この竜王は興福寺近くの猿沢池からこの地を経て、更に室生寺のある室生の地に渡ったという由緒ありげな伝説も残されています。

奈良まちあるき風景紀行 より
龍王珠石(春日大社)


善女龍王はその後、春日山の香山(こうざん)に入ったとか。
そう言えば、去年、ガイドの下見のために何回も歩いた春日山原生林に高山神社があった。
香山とはあの辺りか?

高山神社(春日山原生林)


点がいくつも浮かび上がって来て、それぞれがつながって線になる感じ。

そして最後に室生龍穴神社。
これも昨年、ソムリエ試験の400字対策に歩いたから鮮明に覚えている。

龍穴神社の拝殿正面には「善如龍王社」の扁額が掛かっていた。



善女龍王が住われてると言う吉祥龍穴

つまりは、

猿沢池には龍(=善女龍王)が住んでいた。
采女が身を投げて池の水が穢れたので、龍は春日山へ移った。
その途中で春日大社の一の鳥居で休んだ時に尻尾がこそばゆかった。
それから春日大社の奥の院で尾玉を納めて、春日山に入った。
が、後に春日山も(死体を捨てるようになって)穢れたので、龍は室生まで飛んで吉祥龍穴に住むようになった。

!これでストーリーが流れた!

善女龍王と言えば祈雨の神様だし、稲作の盛んな奈良には切り離せないものだ。当時の人の雨に対する思いはどれ程のものだったか。

また当時の興福寺の勢力はもの凄く、室生寺は当初興福寺の別院であったし、大野寺磨崖仏も興福寺の僧が発願した。

更に采女を寵愛した帝は平城天皇説があり、采女の身投げは奈良から京都へ都が移ったことを悲しむ奈良の民の心情を表したものではないかと言う説もあった。

「猿沢池の龍が春日大社経由で室生龍穴神社に行った」なんて突拍子もない話に聞こえても、その背後には人々の意識の集合体があり、複雑に絡み合って物語を織りなす。

そういう背後にあるストーリーを語れるガイドになりたい。
でも、要注意!
ただの「蘊蓄(うんちく)たれ」になってはいけない。


先日、車でTSUTAYAの横を通りかかったら、奇しくも「室生龍神の珈琲屋」と言うサインが目に入った。
舩越珈琲と言うらしい。

龍神様のお導き!とばかりに入ってしまった。
室生寺門前でやっていたのだけど、4月からここで営業しているとのこと。


龍神ブレンド。
久々に美味しいコーヒーを堪能した。



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