ジョセフが好きです【前編】

 こんにちは。お久しぶりです。

 許されるなら『ジョセフ・アンド・アメージング・テクニカラー・ドリームコート』の素晴らしさを全世界の小学校で講演して回りたいと企んでいるオタクです。

 この度幸運にも『ジョセフ』を観劇する夢が叶い、この幸福を自分の中だけでとどめておくことが困難になりました。つきましては、微力ながらジョセフのこんなところがすごいぞ楽しいぞ全国民観に行ってくれ、というプレゼンじみた感想文を書いていきたいと思います。東京公演もあとわずか、既にご覧になった方にも、まだチケットを取るか迷っている方にも、ジョセフに行きたいと思っていただくきっかけの一つになれば幸いです。


 この作品は全編歌で構成されたミュージカルになっています。踊りながら歌いっぱなしの演者さんたち体力どうなってんの。そんなわけで(?)、曲に沿って見どころやここが好きだったな、面白かったなと思うところを書きます。

 ちなみに『ジョセフ』の原作となっている旧約聖書の創世記あらすじをゆるくまとめた記事(ところでヨセフは、顔も容姿も美しかった。(2022.4.9追記)|うさを|note)もありますので、物語のあらすじが知りたい方はお時間あればそちらも覗いてみてください。個人的には、観劇前に少しでもあらすじを知っているほうが楽しめるかなと感じました。


Prologue / All Dream Will Do

 ナレーターが子どもたちに読み聞かせる形で物語を始める一曲。舞台設定の簡単な説明の役割も担っています。ダブルキャストのナレーター、シルビアさんと平野さんそれぞれに一声目からお二人の個性が出ていて面白いです。

  何と言っても見どころはせり上がりジョセフ。薮宏太さんの脚が5メートルあるということがよくわかります。スモークもくもくの現実離れした登場ながら、子どもたちに優しく語りかけるように「この世界変えられるさ」「好きな夢を見ればいい」と歌うジョセフ。大好きです。ちなみにここの手話を交えた振り付けはまた後ほど登場します。


Jacob and Sons ~Joseph’s Coat

  壮大な家族紹介の曲&例のコートの登場シーン。この曲で完全に『ジョセフ』の世界にどっぷり浸される感じがします。アンサンブルの兄弟たち・妻たちの声量に圧倒されてるうちにカラフルトンチキコートが現れて、知らない名前の色が連呼されてて、気がついたら好きな人が舞台のど真ん中で長い裾を華麗になびかせていました。どういうことなの。演者さんのアドリブ的動き、装置、小道具などそこかしこに遊び心がちりばめられてて目がいくつあっても足りない!!円盤化はよ!!!

 薮担さん的見どころは間違いなく「僕はハンサム 僕はスマート もはや歩く芸術品」と歌い上げるジョセフです。説明が野暮になるほど歌詞がそれなすぎる。


Joseph’s Dreams

 大いなる兄弟喧嘩の原因になるジョセフの夢の話。パッパのロッキングチェアに座って朗らかに「将来僕だけえらくなっちゃうのかな~はっはっは」って笑ってるジョセフが無邪気でのんきでかわいい。数分後に奴隷にされちゃうんだけどね。キックボード乗ってはしゃぐ32歳もかわいい。

 あと曲として、ジョセフの夢の話部分は8分の6拍子、兄弟たちがその話に辟易してる部分は4拍子で明確に色分けされてるんですよね。パンフレットの薮宏太さんのコメントから気づいたことなんですけど、ジョセフという主人公を際立たせるための工夫がこういう形で出ているんだと気づけて嬉しいです。あとその主人公に好きな人が選ばれているという贅沢が改めて嬉しい。


Poor, Poor Joseph

 ジョセフかわいそうなんだけどちょっと笑っちゃうパートその1。兄弟たちに殴る蹴るの暴行を受け殺されかけ、最終的にエジプトに売り飛ばされちゃうところです。とばっちりでヤギも引きちぎられます。ただここも曲の力で内容のむごさを忘れるくらい元気に駆け抜けて行きます。謎の明るさに元気出る。

 穴に埋められるところ、兄弟2人にひょーいって持ち上げられてぽーいって投げられちゃうジョセフが軽そうすぎてびっくりします。あと回を追うごとに殴られ方が上手くなっていってる気がする。いい加減にしてください性癖です(小声)


One More Angel / Hoedown

 兄弟たちがジョセフがいなくなったことを父さんに報告したあと、祭りのように踊り狂う一曲。エンターテインメントisこれ!みたいな派手さとテンション、大好きです。初見からすごく好きなシーン。

 兄弟の一人がいなくなったにしちゃあ明るすぎだろと冷静になると思うんですが、とりあえずアンサンブルの皆さんの素晴らしいダンスを単純に楽しんじゃうのがおすすめです。本当に自然に手を叩きたくなる。兄弟たちの一人一人違うけど全体で統一感のある衣装も必見です。


Journey to Egypt

 エジプトキャラバンに引きずり回されるジョセフ。ファラオ役小西さんがマジで楽しそうに演じる酒浸りの親分は必見です。Poor,Poor Josephをエジプト音階アレンジしてあるALWさんの茶目っ気も好き。

 個人的にはなんでもできるジョセフが「役立たず」と罵られているのが新鮮でした。そんな深刻なこと考える場面じゃないんですが、読み書きができて顔もいい、おまけに特別な能力も持ってるジョセフでさえ、その能力を必要としない人にとっては単なる役立たずなんだなあってふと思いました。それはそうと手首縛られてる成人男性の推しをお金積んで観ることができる世界線どうかしてる。


Photiphar

 ジョセフかわいそうだけど笑っちゃうパートその2。今度はエジプトの億万長者ポティファーに売られたジョセフです。芋洗坂係長さん演じるポティファーのフォルムがツボすぎてミニチュアの置物欲しい。
 出だしのてててててて、てててててて、の音が1回目の公演の帰り道、頭から離れなくなったくらい曲として好きなナンバーです。

 そしてお待たせしましたベッドシーン(誤解)です! 悪女のポティファー妻にえげつなく言い寄られて終始ヒエ…ってなってる青年ジョセフたまらんかわいい庇護欲。美男美女が絡み合ってるはずなのに完全に空気がコメディなところ超面白いです。もはやバカ殿の世界に見えてくる。


Close Every Door

 私を救ってくれた曲です。贔屓目とか大げさとか思われるかもしれませんが、この曲を知らなかった私では越えられなかったと思う山場がちょうど一昨日から昨日にかけてありました。もう限界だ何もかも投げ出したいどうすればいいかわからない、と思ったときに「生きるか死ぬかの命の答えはこの世の遥か果てにある」という歌詞が胸に浮かんできました。
 今の私にとってはこれが限界で、今が最悪だと思ってるかもしれないけれど、最後の最後になってみれば最悪な今日が必要だったとわかる日が来るのかもしれない。訳詞の高橋亜子さんがどんな解釈でこの詞を書かれたのかはわかりませんが、少なくとも私にとっては、今抱いている苦しさ辛さはいつかきっとなくなるものだし、無理に払拭する必要もないと言ってくれているように感じました。
 この歌詞に救われたおかげでどうにか無事にジョセフ3回目を観ることができて、心を回復させてこんな感想も書くことができるようになりました。ジョセフは地球を救う。健康にもいいです。皆さんもぜひジョセフを体験してください。

 薮宏太さんの歌が好きで、劇場へ足を運ぶチャンスがある方にはこの曲を聴くためだけにでも、どうか劇場に行ってみてほしいと思います。一オタクの切実なお願いです。一人でも多くの人にこの曲が届いてほしい。


Go, Go, Go Joseph

 第一幕を締めくくるこれまた豪勢な一曲。牢獄でどん底のジョセフが希望を取り戻します。最初こそしっとり始まるんですが、一幕のトリだけあって最終的にとにかくきらびやかで賑やかになります。六男ナフタリ役の大山さんがTwitterで「年末かと思う」とおっしゃるほど。確かに紅白のマツケンサンバみすら感じますね。いやこれ年末に観たいな。円盤化してください。
 どん底にあるジョセフを立ち上がらせるきっかけになるのが、子どもたちの手話です。覚えておいででしょうか、冒頭でジョセフが子どもたちに「好きな夢を見ればいい」の言葉と一緒に伝えたものです。すごいよね……なんか……エモじゃん……(語彙力の終焉) すごく好きな演出です。過去の自分に救われるような演出って少年漫画感もあって胸熱よね。

 4/25夜公演ではだいぶお客さんも訓練されてきて激ムズ手拍子が揃っててビビったんですが、もうわからなくてもとりあえず楽しい気持ちをそのまま手拍子に乗せちゃえば楽しくなれると思います。日本語が終わってる。正直毎度楽しすぎてこのあたりは若干記憶が飛んでます。まだジョセフ牢獄にいるはずなのにこの楽しさはどういうこと。



 とりあえず一幕はこのあたりにします。何せ脳みそがハッピーになっているので順番の取り違えや記憶違いがあるかもしれません。それは劇場に観に行ってみてあいつ言ってること違うじゃないかと鼻で笑っていただければ本望です。

 ジョセフの物語がたくさんの人に届きますように、そして大千秋楽までカンパニーの皆様が無事に走り抜けられますように、片田舎のオタクは一生懸命祈りつつ感染対策をします。
 ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました!!

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