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LIGHT&DISHES ラボ・ディナー 会vol.6「手ぬぐいは節目節目のメモリアル」レポート

3月12日(火)に〈LIGHT & DISHES Lab. ラボディナー会 Vol.6〉を開催しました。この事業は、月に1度さまざまな分野で活躍するゲストスピーカーを迎え、共に食卓を囲みながらそれぞれの世界観を学び合う会です。
今回は「手ぬぐいは節目節目のメモリアル」をテーマに、
株式会社かまわぬ専務取締役の高橋基朗さんをお迎えしました。
 

手ぬぐいブランド「かまわぬ」の由来

江戸時代、町奴たちが好んで身につけていたという”かまわぬ”柄。その後、歌舞伎役者七代目市川團十郎が舞台衣装に用いたことでさらに庶民の間で大流行しました。その庶民に愛される柄にまで浸透したストーリーに由来し、手ぬぐいブランド「かまわぬ」のロゴにしました。「何もお構いできませんが気軽にお立ち寄りください」という意味を込めて現在、国内に直営店6店舗を構えています。
手ぬぐいが身近な生活の一部になった理由の一端に、手ぬぐいブランドかまわぬの広くさまざまな分野との交流が一役かっています。

団体・企業とのコラボレーション

今回のテーマにした「節目」。団体や企業、個人が何かの記念や節目の時に記念品としてオリジナルの手ぬぐいを依頼します。高橋さんは、最近印象深かったのは歌舞伎役者、中村橋吾さんとのコラボレーションだと言います。中村橋吾さん自身が、世襲ではないところからこの世界に入り、型に嵌まらない活動から歌舞伎を多くの人に伝えたいという志のある方。かまわぬの多分野とのコラボレーションが手ぬぐいの伝統文化を広く伝播しているように中村橋吾さんの活動に共感するところがあるのだと。そして、クライアントのそれまでの歴史や、その時の潮流を知り、後も続いていくクライアントの活動の一端に関われるのも手ぬぐい屋冥利なだと言います。これまで、アパレルからエンターテイメント、アート、デザイン、飲食など多様な分野とのコラボレーション実績があり、山梨の老舗ほうとう不動、サントリー、ロック・フェスの中津川ソーラー武道館など依頼に至るまでのきっかけなどもお話しいただきました。幅広いクライアントとのつながりもかまわぬの特徴なのです。


コロナ禍を経て新たな取り組みと活動へ

2020年、新型コロナウィルスの感染は、どの業界にも影響を与えました。かまわぬは各店舗での対面接客が難しくなり、今後どのように営業活動をしていったら良いか岐路に立たされました。そこで初めてオンラインショップの開設に至り、その結果驚くほどの実績に繋がり、新たな市場を築くことになっていきました。著名なキャラクターとのコラボレーション柄などは発売直後に売り切れになることも。
その一方、かまわぬ実店舗の存在意義を再考するきっかけにもなりました。モノを購入する行為だけならオンラインの便利さや低コストに実店舗は太刀打ちできない現実。そこで実店舗は「体験」を強みに新顧客獲得の場、オンラインはリピーターのお客様へのアプローチの場という大きな役割を与え共存していく方向で運営を行っています。
 

かまわぬが考える”手ぬぐい”のこれから

伝統工芸の世界で必ず話題になるのが、作り手問題。かまわぬの手ぬぐいに欠かせない”注染”の染め技術、そしていくつもの工程を経て完成に至るには、熟練の技術が必要とされます。国内では、かつては数多あった工場も作り手の継承が出来ずに廃業を余儀なくされたところもあります。かまわぬでは、これまで職人の希望者を染工場へ紹介してきましたが、これからは国内のみならず海外で生産し、その国でも販売していけるような仕組みも検討しています。多くの人に愛される伝統柄から、時代や地域を反映する独特の柄の手ぬぐいは、それを手にする人のアイコンの一つにもなり得ます。そして使いこむほどに愛着が湧くのも手ぬぐいの魅力です。「TENUGUI」というワードが国境を超えて人々の大切なアイテムになっていく可能性を持っていると高橋さんは話します。
 
 
編集後記
集まった方々のバックグラウンドは、今回もバラエティに富んでいました。手ぬぐいが商売道具でもある落語家さんや、伝統文化が大好きなクリエーター、食の未来を支える企業の方や、そしてアパレル関係の方まで。高橋さんの細やかな心遣いと少し恥ずかしそうに語るご自身の活動。そこが彼が愛される所以で、場を和ませる空気を持ってらっしゃるのを感じる時間でした。参加者の中で、かまわぬのオンラインショップについて「温かみがありホッとする」と話してくれた方がいました。それも体現されている高橋さんの存在は、歴史ある企業を支え革新し続けていくためにとても大きいと改めて感じました。「みなさんにとって節目は?」という質問をすると、一人の方が「今が節目」と。するとみなさんが同感だというのです。毎日、節目を刻み生きていくということなのかもしれません。今回は、参加者の皆さんに高橋さんからてぬぐいのプレゼントがあり、どんな柄が手に渡るかは開封するまで分からず、開けた瞬間の皆さんの喜びとホッコリとして笑顔が印象的な会となりました。
LIGHT & DISHES 谷田 宏江
 


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