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今週の妖怪4
今週も妖怪達を紹介していきたい
千々古(ちぢこ)
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毬のような妖怪
城下町に現れては跳び跳ねては東に西に移動する
飛ぶときに奇妙な音をだす特徴がある
千々古は太平百物語という江戸時代の怪談話に登場する
ある城下の大手御門で夜になると妖怪が現れるという噂があり人々はその場所を避けて通るようになった
その妖怪を千々古という
小河多助という侍が、この妖怪の正体を見てやると大手御門の辺りを見張った
すると噂通りに毬のような物体が現れて上下左右に跳び跳ねる
多助はその毬に狙いをすませて刀を振るった
毬はバッサリと真っ二つになる
捕らえてみると、その正体は本物の毬だった
毬の中には鈴が入っていて両端には縄がついていた
つまり何者かが、両端から縄を張って毬を動かしていたのだ
ようするにイタズラである
妖怪とされる物の中にはこんなパターンもある
高女(たかおんな)
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遊女屋などの二階を覗き込む女の妖怪
嫉妬深くて男に相手をされない醜女がこの妖怪になるといわれている
遊女屋を覗いて驚かすだけで特に何もしない
無害な妖怪
しかし一説には和歌山県の高女房と同じ存在なのではないかとする説もある
こちらは恐ろしい妖怪
ある木地屋(きじや)という木細工の材料屋の女房がいた
男以上によく働く女だった
しかしこの女は妖怪で人に化けて生活していた
使用人や子供達もこの女に食い殺されてしまった
この女は怒ると2メートル程の体格になり、何故か夜になると井戸へ飛び込み下半身が伸びて井戸の底に足が付いた程だという
木地屋の主人は命からがら、逃げ出したという
一つ目入道(ひとつめにゅうどう)
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江戸の芝高輪(現在の東京都港区)に住んでる貧乏な医者がいた
あるとき、この医者に身綺麗な侍の一行が現れて「家内に病人が出たので来診して欲しい」と依頼を受ける
医者は用意された籠に乗ったが、何故か目隠しをされた
そのうち大きな屋敷へとたどり着いた
目隠しを取り部屋で待っていると一つ目の茶坊主がお茶を運んできた
さらに2メートルはある一つ目入道が部屋に入ってくる
医者は恐れ震えていたが、仙女が現れて医者を別宅に招く
そこでは山海の珍味、美酒が並べられ天上の音楽が流れている
医者は警戒しながらも、酒を飲み酔っぱらい意識を失った
気がつくと医者は自宅に寝ていた
夢かと思った医者だが
隣にいた妻がこう言う
「今朝、酔っぱらったあなたを赤鬼、青鬼が籠に乗せて自宅に送り届けました」
何が起きたのか医者はさっぱり分からなかった
この話は近所でも語り草になったそうだ
大百足(おおむかで)
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昔、飛騨国(岐阜県)で人が山奥でたびたび行方不明になっていた
村人達が捜索すると山奥に大きな穴が空いていた
ここが怪しい
そう考えた村人達は腕の立つ浪人を先頭にし穴の中を探索した
すると不気味な物が穴から出てきたので浪人が刀で切付けると
それは数十メートルもある大百足だった
浪人と村人が一斉に襲いかかり大百足を退治した
百足の話は各地方に多く語られており、百足が虫にしては奇妙な生物なので妖怪扱いされていたのだろう
大抵は大きな百足として化けてでてくる
滋賀県にも有名な大百足の話がある
藤原秀郷が橋を渡っていると、橋の中ほどに長さ60メートルの大蛇がいた
誰もが大蛇を恐れ橋を渡れず困っていた
しかし秀郷は平気で大蛇を踏み越えていった
すると大蛇が呼び止める
「わたしは瀬田川に住む龍王です
あなたほどの勇ましい人には出会ったことがない
どうかわたしの敵を討ち取るのに力を貸してはくれぬだろうか」
敵とは三上山を七巻半もするという大百足だという
秀郷は大百足退治の約束をした
龍王は秀郷を竜宮城へと招きもてなした
もてなしにより秀郷は酔っぱらってしまった
そのとき大百足が竜宮城へと攻めて来たのだ
秀郷は大弓を手に戦う
しかし一の矢、二の矢は跳ね返されてしまう
南無八幡大菩薩と念じて放たれた三の矢が大百足を射抜き大百足を倒した
お礼にと秀郷は、龍王より太刀・米俵・赤銅の撞鐘など多くの褒美を授かる
なかでも米俵は、米を取っても尽きることがなく人々は秀郷のことを「俵藤太」と呼ぶようになったという
今回の妖怪紹介はここまで
また次回