【ショートショート】 チャリンチャリン太郎

チャリンチャリン。

どこまで行こうか。
小さい体でペダルを漕ぐ。
買ってもらった新しい自転車。
海か山か、やはり夏は海だと太郎は思い東へ向かう。
じりじりと焼ける肌、普段は家で冷房をかけてゲームしてる太郎には気持ちがいい。

太陽が天に昇る。まだ海に着かないか。
自転車を漕いでいる足、ハンドルを握る手が暑さと疲労で悲鳴をあげている。

お手伝いして貰ったお小遣いでジュースを買う。
喉を通る甘い飲み物が心地よい。苦い飲み物を飲んで気持ちよさそうにしてるお父さんが信じられない。ジュースの方が良いのにと太郎は思った。

まだ、海に着きそうもない。
電話して迎えに来てもらおう。
今はもうあまり見なくなった公衆電話にチャリンと小銭を入れる。
お母さんになんでそんな遠いところに一人で行ったの!だの言われたが時間が切れて通話が切れた。
次は海まで行けるよう頑張るぞー。
そう言ってベンチに腰かける。

チャリンチャリンという音は消えていた。

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