流体力学を熟知した元野球少年
野球少年だった。
意外かもしれないけど、小・中は野球をしていた。高校野球は勇気がなかったので、やらなかったけど。
大学に入ってから、友達とキャッチボールする機会が何回かあった。大学の敷地内の芝生で軽くキャッチボール。
最後にやったのは、たしか2月の中旬だったと思う。
その中で僕だけが元野球部だったので、ボールを投げたときにそのボールの伸びに驚かれた。
「まって、すごい。めっちゃシューって風を切り裂く音が聞こえるんやけど」
「えぇ、そうなん?野球部にいたからこれが普通のことやと思ってた」
ボールを投げる時、ボールが指から離れる最後の瞬間にバックスピンをかけたほうが、伸びのある球を投げられることを僕は知っている。
綺麗な縦回転でなおかつ回転数が多いほど、ボールが浮いたような軌道になる。元プロ野球選手の藤川球児さんはあまりにボールが伸びるので、「火の玉ストレート」と呼ばれていた。
ストレートを磨き上げまくることで、それがついに魔球となったのだ。スロー映像を見てみると、ボールをリリースする瞬間、指にボールがしっかりとかかっていて、綺麗なバックスピンがかかっていることがわかる。
バッターはストレートが来るとわかっていても、ボールの下を振ってしまい空振りする。それぐらいボールが浮いているように見えるのだ。
野球部に所属していたときは、経験則から伸びのあるボールの投げ方を知っていたが、今ならなぜそうなるのかという理由を理解している。
流体力学だ。
大学3年のころ、流体力学の授業を受けていて、なぜバックスピンをかけることでボールが浮いたような軌道になるのかがわかった。
その原理はマグヌス効果とよばれるものが関係している。
ボールにバックスピンをかけたときに、ボールの上下で空気の流速差が生じ、この流速差によってボールの上下に圧力差が生まれる。この圧力差によって、ボールに揚力がはたらき、ボールがバッターの手元で浮き上がっているように見える。
実際は重力があるため、ボールがピッチャーから放たれたあとは、少しずつ落下しているのだけど。
野球観戦をしていると、ボールの球速はそこまで速くないのにバッターが空振ることがあるが、あれはバックスピンがしっかりとかかったストレートだからだ。ボールが手元で浮き上がるので、ボールの下を振ってしまい、豪速球でなくても空振りしてしまう。
ホームランを打つ時も、ボールの真ん中より少し下を狙ってバックスピンをかけているが、これもマグヌス効果だ。マグヌス効果によって揚力がはたらき、大きなアーチを描いて遠くまでボールが飛んでいく。
なぜその動作を行うのかということを理解してスポーツができる(観戦できる)。これは物理学を学ぶことの醍醐味の一つだと思う。
今後、草野球などでピッチャーをしてくれと頼まれれば、バックスピンをかけることを意識して投げる。バッターにマグヌス効果の恐ろしさを思い知らせてやりたい。
それと、
この記事にもマグヌス効果がはたらいて伸びてくれんかな。
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