見出し画像

絶対に乗らないと決めた営業だった、けれど


この営業には絶対に乗るもんか


そう思っていた。はずだった。



僕の大学の近くには、DAISOがある。言わずと知れた、あの100円ショップだ。

全国展開に成功し、100円ショップという市場で天下を取った(僕の勝手なイメージですが)。他の大手100円ショップに比べて、店舗数が明らかに多い。ここにもDAISO、あそこにもDAISOだ。

そして僕が広島に来てから初めて知ったことなのだが、DAISOは広島創業の会社らしい。なので広島には、DAISOがたくさん。僕の大学近くのエリアも、しっかり制圧しているというわけ。


そのDAISOに、よくお世話になっている。

DAISOでは水切りネットなどの生活用品を買うこともあれば、むき甘栗などの食べ物を買うこともある。いろんなものが揃っていて、本当に助かる。一人暮らしの学生にとって、こんなすばらしい店はない。

買い手が「ありがとうごぜえやす」と思えるから、そりゃあ全国展開しても、お客さんが来るよね。



日頃からありがたく利用させてもらっているDAISO。

あたりまえだけど、その店舗によって店員さんが違う。見た感じ、店員さんのほとんどは、アルバイトの方だ。コンビニとおなじ。

シフト制でコロコロ変わるので、ふつうは、店員さんがどんな人だったのか覚えることはない。だけどある時、印象に残る店員さんに出会った。


メガネをかけた女性の方で、たぶん年齢は40代ぐらい。

いつものように商品をレジに持って行ったら、その方に「レジ横にあるお菓子も一緒にどうでしょうか」と、あきらかに台本丸読みのような売り文句をかけられた。声に抑揚がなく、棒読み。申し訳ないけど、言わされている感がすごい伝わってくる。


「あ、大丈夫です」


購買意欲が湧かなかったので、正直に断った。この営業を何十回、何百回かけられても、レジ横にあるお菓子を買わない自信がある。家に帰った後、むき甘栗を食べながら、そう思っていた。



その後も何回か、あの女性の店員の方にレジを通してもらう機会があった。

そのつど、例のあの台本丸読みで棒読みの売り文句をされる。相手も売る気は、まったくない。レジ横のお菓子が売れたとしても、時給は上がらないからだろうな。

「こんなんで、ぜったい買わないよな」と思いながら、毎回「大丈夫です」と断る。これで買った人は、はたしているんだろうか。そんなことを思いながら、DAISOをあとにする。


ある時、研究室に置いていた紙コップがなくなったので、頼みのDAISOへ買いに行った。

レジに並んで待つ。あっ、また例のあの店員さんが、今日のシフトに入っているではありませんか。

自分の番がきた。くるぞ。


「レジ横にあるお菓子も一緒にどうでしょうか」

いつも通り、台本丸読みで棒読みだ。安定の。

なのに。

「あっ、このブラックサンダーもお願いします」

と、この日は思わず言ってしまった。

・・・


なんでだろう。ぜったい買わないって思ってたのに。

根負けしてしまった。

何かあの営業のなかに、巧妙なトリックでも隠されていたのだろうか。

インフルエンザについてですが、おかげさまで、ほぼ全回復しました。明日から外に出られるので、うれしいです。DAISOは行かないよん。そして気づけば、今年も残すところ、あとわずかになっていました。インフルエンザさん、貴重な数日を返してください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?