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NovelAIについて弁護士の先生に聞いてみた!


はじめに

 記事を開いていただき、ありがとうございます。
 お初にお目にかかります、ローウィンと申します。

 私は生成AI、特にイラスト生成AIに関するニュースを追っているのですが、今回、それを関する記事を書いてみようと思い、この記事を執筆しております。

 今回、私は「NovelAI」について調べたことを書いていこうと思います。

本題:「NovelAI」って著作権的に「アリ」なのか?


 
今回の記事を読んでくださっている方はだいたいご存じだと思いますが、NovelAIは有名なイラスト生成AIです。アメリカ合衆国のデラウェア州に拠点を置く「Anlatan社」によって運営がされています。
 オリジナルの画像を生成することはもちろん、「キャラクター名」や「キャラクター名+特徴」を入力すると、そのキャラクターのイラストを生成してくれます。有名なものだとピカチュウとかですね。

 この点に関して、(NovelAIに限らず、イラスト生成AI関連で)様々な意見があることをよく見ます。
「版権キャラクター(のデザイン)が出力されるようなAIは大丈夫なのか?」
「いやいや、それはAIに指示を出したものに責任があるので、AIの提供者に責任はない」
 といったような意見です。

 こういった意見を見て、私自身も何が正しいのかわからない状態にあったため、今回、
「日本の著作権法に詳しい弁護士の方」(以下、先生A)
「アメリカ合衆国の著作権法に詳しい弁護士の方」(以下、先生B)
にご相談をさせていただきました。
 また、「匿名でなら記事を書いてOK」とご許可をくださいました。本当にありがとうございます!

結論

 結論から述べますと、
NovelAIのようなAIをネット上で公開、運営すること」は

①    日本の著作権法の考え方だと著作権侵害に当たる可能性が高い。
②    アメリカ合衆国の著作権法の考え方だと、著作権侵害に当たらない可能性が高い。
③    「Anlatan社」はアメリカ合衆国のデラウェア州に拠点を置いているため、アメリカ合衆国の法律が適用される可能性が高い。
(※投稿者調べ。「公益社団法人著作権情報センター」より「(前略) なお、著作物が利用される際の法律の適用に関しては、例えば、日本の著作物がアメリカで利用される場合にはアメリカの著作権法が、逆にアメリカの著作物が日本で利用される場合には日本の著作権法が適用されるのが原則です。」との情報がありました)
(参考URL: https://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime5.html)

 となるようです。
 それぞれ、先生のご意見を紹介していきます。

①  日本の著作権法の場合

 先生A曰く、
「どんな生成AIを使っていたとしても、そもそも生成物がどの作品とも類似していないのであれば、ユーザーは責任を負うことはない。」
「ある特定のプロンプトを入力すると、その作品が必ず出力される場合は、サービス提供者が責任を負う場合もある」
「ただし、「プロンプトと画像の結びつきが薄い場合」は、サービス提供者が責任を負わない場合もある。」
 とのことでした。
 具体的には
「ピカチュウと入力してピカチュウの画像が出力される場合、ユーザーも著作権侵害をしているが、NovelAIの運営元も著作権侵害をしている」
「黄色いネズミで、電気を放って、尻尾がギザギザしているというようなプロンプトで、たまたまピカチュウの画像が出力されるような場合は、ユーザーは著作権侵害をしているが、運営元は著作権侵害していない」
「前提として、私的利用に限る場合はユーザーは責任を負わない。運営元が責任を負う可能性はある。」

 と言う風に考えられるようです。

②  アメリカ合衆国の著作権法の場合

 先生B曰く、
「NovelAIの提供者には、著作権侵害は認められないと考えます」
 とのこと。
 
 その理由として、以下のようにご意見をくださいました。
 
≪ここから引用。強調表示は投稿者編集≫
「アメリカ著作権法においては、キャラクターであっても文字的キャラクターは著作権の保護を受けませんが、絵画的キャラクターは著作権の保護を受けます」
「NovelAIの使用によって、他人の著作物の複製物が作成可能です」
「しかし、アメリカ著作権法においては、NovelAIの提供者がその複製行為者ではなく、NovelAIを使用して現に当該複製物を作り出したユーザーが複製行為者に当たります
「複製行為者は直接侵害者として、著作権の直接侵害責任を負います」
「NovelAIの提供者は間接侵害者として間接侵害責任を負うことがあるにとどまります」
≪引用ここまで≫
 とのこと。
 
 では、間接侵害者としてどうなのかというと、それも条件を満たしているとは言えないようです。
 理由を簡潔に説明すると、「NovelAIは、著作権侵害にも使えますが、著作権侵害にしか使えないものではないため」とのことです。
 
 
≪ここから引用。強調表示は投稿者編集。誤字、脱字と思われる部分は修正しています≫
≪また、少し長いため、前略、中略しています≫
(前略)
「NovelAIは、プロンプトに他人の著作物を特定する指示が入っていれば著作権侵害物を作り出しますが、そうでなければ著作権侵害物を作り出すとは限りません」
「言い換えれば、NovelAIは、著作権侵害にも使えますが、著作権侵害にしか使えないものではありません」
(中略)
したがって、NovelAIの提供者には、著作権侵害は認められないと考えます
≪引用ここまで≫
 とのことでした。

私見

 今回の先生のご意見には、私自身、とても驚き、非常に興味深いものでした。
 国によって著作権法が異なるとはいえ、全く正反対のご意見をいただいたためです。
 
 あくまで私個人の受け取り方になりますが、日本の考え方は、AIの提供者が責任を負うケースを、他者の著作物を「簡単に」生成できるかどうかを重視しており、一方で、アメリカ合衆国の場合は、著作権侵害「のみに」使えるかどうかを重視しているようです。

ユーザーの方へ

 この記事を読んでくださっている方はほとんどが日本在住の方だと思います。
 そのため、イラスト生成AIのユーザーの方は、先生Aの言葉の
「どんな生成AIを使っていたとしても、そもそも生成物がどの作品とも類似していないのであれば、ユーザーは責任を負うことはない。」
「前提として、私的利用に限る場合はユーザーは責任を負わない。(後略)」
 この2点を抑えておけばよいと思います。
 すなわち、
「AIを使うこと自体は著作権侵害ではない」
「生成物が類似していないのであれば著作権侵害ではない」(※さらに言えば類似していても依拠性がなければ侵害にはならない。侵害になるには類似性と依拠性の両方が必要なため)
「類似していても(例えば版権キャラのイラストなど)、私的利用に限るのであれば著作権侵害ではない」という認識で良いと考えます。
(※ただし、「版権キャラのAIイラスト」を公開(≒私的利用でない利用)する場合は、手描きと同じように二次創作の扱いになるので、各版権元のガイドラインを見て、気を付けて行いましょう。AIイラストだから悪いのではなく、類似性と依拠性が認められる可能性が高いためです。)

最後に

 今回の先生方の解説は、あくまで見解の一つであり、裁判の判決ではないということには注意してください。実際の裁判では、もしかしたら異なる判決、判断が行われる可能性もゼロではないので、今回の記事は参考として読んでいただければ幸いです。
 そして、この記事の執筆にあたり、相談をしてくださった先生方に改めて感謝を述べさせていただきます。
 また、この記事を最後まで読んでくださった皆様方にも、感謝を申し上げます。
 
 それでは良きAIイラストライフを!


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