5歳長女の熱湯やけど記録 #147

年長の長女が火傷した。
朝の食卓、「ジブンンデ!ジブンデ!」なんでも自分でやりたい娘が電気ケトルのお湯を、味噌玉が入った汁椀に入れようとしていた。
彼女の手にケトルはまだ少し重く、立ち上がって持ち上げた時にバランスを崩してしまった。
熱湯が下半身にかかり、娘は叫んだ。瞬間的に彼女を抱き上げ洗面所に移動して流水で急冷。
泣き続ける娘の腰と左下腿に水膨れができだした。

その状況を目の当たりにした夫は「何やってるんだ!」と怒声をあげた。
彼は緊急事態に弱い。
明らかにイライラとした表情で、「病院はあなたが連れて行って」と言い放たれた。
いつもの夫は育児に協力的で、発熱時には看護休暇をとり、子どもを病院に連れて行ってくれる。いつも本当に助かっているし、あてにしていたのだが、この時ばかりは、想定外の出来事に取り乱して怒っているだけだった。

私は、夫の態度はともかく、やけどの部位が、顔や手でなくてよかった。
この程度で済んでよかったと思うと同時に、出勤時間が迫り、シフト調整と大量に抱えている仕事のタスクをどう処理しようかと思い悩みながら、出勤時間の調整を職場と行い、病院を検索した。

子育て中の母親たちにとって、子どもの病気やケガですぐに受診できる病院の存在ほどありがたいものはない。

その日は魔の木曜日。
私が住むエリアでは、木曜日は休診の医院が多く、診察してくれる医院を探すだけでも一苦労だ。

かかりつけの小児科が木曜日の午前診療をしていたため、電話で問い合わせてみると、やはり小児科でなく皮膚科受診を勧められた。
ありがたいことに、木曜日に診察している近隣の皮膚科を教えて下さり、また受診までの応急処置の方法と痛がるようなら、自宅にある発熱時用の座薬や頓服薬を服用してもよいとアドバイスしてくださった。
大丈夫だと自分に言い聞かせながらも、とはいえ突然の非常事態に内心では緊張していた私は、いつもお世話になっている小児科医のアドバイスに随分と救われた。
かかりつけ医があってよかったと心底思った。

しばらくして娘も泣き止み、皮膚科の予約、受診の目途がついたころ、夫もようやく落ち着いてきて、自分が休みをとって娘の面倒を見る、皮膚科にも連れていくから、私に「仕事に行っていい」と言い出した。
ほっとした。
正直なところ、子どもが心配な気持ちよりも、仕事のことで頭がいっぱいだった。
たまたま月末で忙しいだとか、監査前だとか、シフトに迷惑をかけたくない(保育士は配置数が決まっているので、時間帯によっては別の保育者に勤務をお願いしなければならない)なんて、言い訳がどんどんでてくる。
こんな時くらい休んで娘にしっかりと付き添いたい気持ちもないわけではないが、やはり仕事を優先してしまう自分がいる。

「あんなに熱いお湯やったのに、これだけで済んだのだから、超ラッキーやね」
「ママは仕事に行くけれど、病院に行って、しっかり食べて、しっかり寝たら治るし大丈夫!」
こんな言葉を何度となくかけて、出勤のため自宅を後にした。

大人が動揺すると、子どもも必要以上におびえてしまう。
大人が「大丈夫、大丈夫」と声をかけてあげると、子どもは安心する。

最近の長女は、高いところによじ登ったり、狭いところに入り込んだり、危険行動がちょくちょく見受けられて、そのたびに声はかけても、聞く耳がなかった。
彼女にとって今回の火傷は「危ないことはあかん」ということを身をもって知るよい機会となった。

次回へつづく

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