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『悪い女の子』である私を、どこまでも連れて行ってくれる靴を探して


いい子は天国に行ける。でも悪女はどこへでも行ける

メイ•ウエスト

ちょっとだけ昔の話


両親の言いつけを守り、周りの人から「本当に立派で『いい子』だね」と言われ続けていた私だったが、本当はいい子なんかでいたくなかった。
市内から出ることを許されず、一人で電車に乗ったこともなかった。

「どこにも行けないんだ」
この街から一生出ることなく、ぼんやりと死んでいくのかなと思っていた。

それが、大学生のある日ひょんなことから県外に出ることを許された。
しかも一人で。

何度も時刻表を確認して、切符を握りしめて、ドキドキしながら東京へ行ったあの日。
無事に用事を終えて家に帰って「私って、もしかして本当はどこへだって行けるのかもしれない」と頭の中に初めてそんなことが浮かんだ。

その日からずいぶん経った今、それは確信に変わった。
自分の足でどこまでも行ける私のことは、きっと悪い子なんだろうけどあの頃よりだいぶ好きだ。

靴がない!

そんなわけでいろんなところに行くようになった私だが、問題が一つあった。

靴が見つからないのである。

自分でも驚くくらい、本当に足に合う靴が見つからない。
親指と小指にマメができるのは日常茶飯事。
サンダルを履けば足の甲がずるずるになる。
高校生の頃に履いていたローファーは踵がすっぽ抜けてよく転びそうになったし、
就職したてのころ、窮屈なパンプスを無理やり履いていたら親指にひょうそができて手術する羽目になったっけ。
運動靴でさえつま先が入らない、足の甲が痛いなどトラブルが続き、ぴったりサイズを見つけるのが難しい。

しかも、厄介なことに私は一日25000歩くらい軽く歩いてしまうタイプなのである。

Q.サイズの合わない靴でそれだけの歩数を歩くとどうなるか。
A. 足の爪が取れる。(親指、人差し指、小指)

20代前半ではそれでも何とかなった。
しかし、いよいよ30歳も近くなった今、いったん傷ができると回復に時間を要するようになり、そんなことは言ってられなくなってきた。

「まともに歩ける靴が欲しい」
「どこまでも歩いて行ける、かっこいい靴が欲しい」

かれこれ3年くらい靴を探し続け、100足チャレンジどころか120足くらい試してすべてダメ。

私に合う靴ってこの世にないのかもしれない。
ちょっと妥協してそれなりの靴を履き続けるしかないのかしら。

そんなとき、この記事を発見した。

https://www.jimon-jitou.com/jimon-jitou-fashion/post-5004

ほう、機械計測でデータを見せてくれるのか。
しかもシューフィッターさんが靴を持ってきてくれると。
これはうってつけのサービスでは?

「都会ってなんでもサービスがあるんだねぇ便利だね」とありがく予約しようとしたら土日がすべて埋まっている。
次に行けるのは一か月後..……

待てない!!私は一刻でも早く靴が欲しい!

平日しか予約が取れないんだよなぁ。

しかも5月の平日で予約ができる日ってもう限られてるじゃん。

あ、私の誕生日は予約が空いてるんだ。。。
平日だったので普通に仕事をしようと思っていたのだけど、

けれど。

頭の中で何かが『この日に行け』と言っている。
なんだかわからないけど、この日に行ったら絶対気に入る靴が見つかる気がする。

突然スピリチュアルな話になって申し訳ないが、私に訪れるこの手の『予感』はいいことも悪いこともものすごく当たるので従ったほうが吉なのである。

一応、靴が見つからなかった時の保険としてずっと行ってみたかった山の上ホテルのランチを食べに行く予定も入れておいた。
見つからなくて悲しい思いになってしまってもホテルランチで上書きできるし、もし見つかったら嬉しさ2倍になる。

ということで、直前に有休を取得しちょっと変わった誕生日を過ごすことにした。

いざ、YourFIT365へ

伊勢丹の素敵すぎる雰囲気に若干のまれつつも靴売り場に到着。
売り場のお姉さんに名前を告げてドキドキしながら待つ。
ちなみに「こんな靴がいいな~」のイメージ。

1. 靴タイプはレースシューズかローファー
2. カラーはブラック
3. 美術館、観劇に行くときに履いていきたいのでドレッシーな感じがいい
4. 足が痛くならない(重要)

あれが足を計測する機械

「お待たせいたしました!」と呼ばれて軽くシステムの説明などを受けていざ計測。

ちっちゃいシール貼られてる私の足


そして計測したデータがこちら

私の足の形

店員さんに言われたことをかいつまむと
* 足の大きさはほぼ同じ
* 日本人の足幅の平均が1Eなのでそれよりも2回り大きいサイズ
* 土踏まずが結構高いので、足の甲が開いているタイプだと足が食い込んで痛くなる可能性がある。

おいぬ「あのう、私アンケートに『ローファーが欲しい』って書いたんですが、今の話聞くとローファー全く向いてないですよね?」
店員さん「そう、ですね..……とはいえいくつかご用意できると思うので、もし合えば。」

店員さんに「足のトラブルが起きやすい箇所、欲しい靴のイメージ」を細かく擦り合わせて10足ほど持ってきてもらう。


靴を待っている私

そして時間が惜しいのでじゃんじゃか履いていく。
いろんなタイプの靴を履かせてもらった。
なんと10足中7足、足が入らなかった。
足が入った靴はこの3足だけ。

私の足、すっごいわがままだな。
と若干悲しくなりつつも足が入った3足の品番を抑えてもらい一度外へ。

紀伊国屋書店へ行きエスカレーターを上る。
実は心の中ですでに「この靴のデザイン、いいなぁ」と思うのがあったのだけど、予算がオーバーしているがゆえに買うのをためらっていたのだ。

2階、3階、4階..……
さっき撮らせてもらった写真を見ながらフロアを歩いていて、「あれ?」と思った。

さっき履いた靴。歩いた時、足の裏全然痛くなかったな。
つま先がぎゅうぎゅうにならなかったよな。

今履いている靴を見た。
デザインもすこぶる気に入っているチャイナシューズ。
可愛くてお気に入りだけどたくさん歩くことを前提に作られていないから、たくさん歩けないんだよね。

頭の中で何かが囁いた。

『さっきのあの靴を履いて、山の上ホテルでランチ食べたくない?』

..……確かに、あの靴履いていったらすっごいかっこいいだろうな。
でも高いんだよね。

『あんた、なんのための靴が欲しいの?『どこへでも行ける靴』が欲しいんでしょ。あの靴だったら本当にどこだって行けるよ。あんたが行きたいところなら、どこへでも』

やっぱりそう思う?

『あと靴のフルオーダーよりは安い』

だよね。

「もう一回だけ履いてみてそれで決めるわ」

新宿紀伊国屋の階段を降り、伊勢丹に戻った。
品番を控えてもらった紙をさっきの店員さんに渡そうと思ったが、あいにく接客中で、別の店員さんに渡して持ってきてもらった。

やっぱり履き心地がいい。そしてデザインがかっこいい。
店員さんからブランドがどんな靴を作っているか、デザインのこだわり点といったお話を聞かせてもらって俄然愛着がわいてしまった。

「これなんだな」と思った。

「これ、ください。履いて帰りたいんです。今日、誕生日で、この靴で歩いていきたいんです」
そう告げると店員さんはぱっと顔を輝かせた。
「おめでとうございます!もちろんです!防水スプレーだけかけちゃいますね!」

靴を持って戻ってきたお姉さんと会計中お話ししていたら、さっき面倒を見てくれた店員さんが通りがかって、お姉さんが呼び止めた。
「あ!○○さん!!あのね、靴買ってくださったんですよ!」
「ほんとですか!やだ~~おめでとうございます!!私もその靴一番お似合いだと思っていて!素敵です!」
「ね~素敵ですよね!」
とお二人に小さく拍手してもらってちょっとだけ照れた。


思ったより伊勢丹で時間を使ってしまったので、急いで山の上ホテルへ向かった。
駅のホームで下を向いた。

新宿駅のホームで撮ったやつ

私の足、こんなかわいくなれるポテンシャルがあったんだな。
その日は歩きながら何度も何度も下を向いた。
素敵な靴が目に入るのが嬉しくて。

靴を買った後

普段の食生活と比較してかなりリッチなお昼をいただいた。

確かポークチョップ。パンもすごい美味しい
「野菜ってこんな深い味がする.…!?」とびっくりしたサラダ
素敵なカップとお紅茶
誕生日ケーキ。お皿からケーキすべてが素敵

靴を買った後 2

  1. あの後、家に帰って靴を脱いでまずびっくりしたのが「足が赤くなってない!?」ということ。革靴を履いたら親指と小指が可哀そうなくらい真っ赤になっていたのに、真っ白な足が出てきて心底驚いた。

  2. ブランドコンセプトを知りたいな、と思ってHP開いて、最初のページであっと息をのんだ。

ph7+[ピアッカセッテ]は個性的でありながら決して奇抜さは求めず、あくまで一つのファッションアイテムとして、履く人の魅力を引き立たせるためにあります。
完成された木型のフォルム、美しいヒールのシルエット、質の良い素材、ディテールへのこだわり、機能(製法)とデザインのバランス、
そしてフィニッシュ( 仕上げ)、それらがひとつとなったph7+[ピアッカセッテ]。
ジェンダーフリー・ジェンダーミックスなそのデザインには過剰なディテールはなくクールで洗練されたフェミニンな女性にこそふさわしいマニッシュスタイルです。

ph7+[ピアッカセッテ]を履く女性もまた感性が高く、モードに敏感でありながらもトレンドだけに流されない確固とした個性があります。

その一足が自分に自信を与えてくれるものであることを理解し、それを選ぶ力を持っているのです。

ph7+ コンセプト

その一足が自分に自信を与えてくれるものであることを理解し、それを選ぶ力を持っているのです。

ブランドのほうから「自信を持ちな!」と背中を押されてしまった。
嬉しすぎる。
そうだよね、だって「私が選んだんだもん」ね。
どこまでも行ける相棒をさ。

3.その週の週末に植物園へ赴き、うっかり2万歩強歩いたけど爪が取れなかった!すごい!足に合った靴ってこんなトラブルがないんだ、と感動した。

まだ履き始めて1ヶ月も経ってないけど、超ヘビロテしていて、美術館にも舞台へも履いていった。本当にどこへでも行ける靴だ。
今までは足のトラブルが怖くて運動靴を履いていたけど、今度は旅行にも一緒に行ってもらいたい。素敵なところに一緒に行こう。

たくさんいろんなところへ行こうね。

https://twitter.com/Miyakochan1111/status/1668766301190512641

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