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幼なじみの咲月#6【想像できる】

〇:そろそろ帰るぞ

咲:えぇー、もうそんな時間

時計を指さすと口をプクウと膨らませる。

咲:なんか今日時間早くなかった?

咲:さっき来たばっかなのに・・・

〇:さっきって・・・

一人暮らしのオレの部屋で半日くらいまったり過ごしたが帰る時は大抵不満げだ。

〇:また来週な

咲:うん・・・

これ以上ないくらいに眉をたっぷり歪ませながら返事をする。


高校卒業まではきちんと門限を守る。

恋人数歩手前のオレ達がなんとか守っている事だ。

5歳年下の咲月から突然の告白をされてからもう一年以上が経過する。

咲月は高校生だし気持ちに応える事はできないと伝えた結果、じゃあ卒業まで我慢するというカウンター拡大解釈をくらう事になった。

その辺の詳しいところは前の話を読んでもらうとして・・・



玄関で靴を履いてから熱っぽくこっちを見て両手を広げる。

咲:んっ

・・・・・・

咲:んんっ

・・・・・・

早く来いという事だろう。

抗えるはずもなくふらふら近づくと咲月の細い両腕がぎゅうっっと巻きつく。


咲:ふふふふ、充電充電///

〇:はいはい;;




満足したのか顔を上げるが、まだひっついたままだ。

頭に手をのせて撫でてみると満足そうに目をつぶってからようやく離れる。

甘い香りにやられながらもなんとか平常心を保つ。

危ない危ない;;



いつものようにさつきを家まで送り届ける。

仕事以外ではあまり使わない車の助手席はオレの中ではすっかりさつきの席になっている。

車の中では赤信号の度に助手席から手が伸びてきて左腕をツンツン突かれる。

帰りたくないなーとか

まだ一緒にいたいなーとか

そういうさつきの脳内が容易に想像できる。

さすがに可愛すぎるだろ/////

行き先を変えてしまいたくなる衝動をなんとか抑えてさつきの家に到着する。



咲:今日も送ってくれてありがとう

〇:ああ

咲:じゃあね;;;さつきっちゅ

ちゅっ;;

投げキッスの後にいつものように頬でリップ音が鳴る。


いつも思うんだが;;;

これ、投げキッスいる/////?

〇:おやすみ/////

咲月が車を降りて三歩下がってからゆっくりとアクセルを踏む。

左折する前にバックミラーに目を向けると安定の両手をブンブン振っている咲月。



さつきとの時間が終わってしまった事に寂しさを感じつつ、

助手席の空いた車内で盛大な溜め息をつく。

はあぁぁ・・・・

よく今週も我慢できたな;;;オレ



咲月を送り届けて家に帰るといつも目を向けてしまうものがある。

「咲月の卒業まであと  日」

部屋の隅でちょこんと鎮座しているカウントダウンカレンダーだ。



カレンダーを捲る行為は気づけばオレの朝ルーティーンになった。

咲月への想いを自覚している今となっては、枷であり自制が効いている事を確認できるツールでもある。

これを毎日見てるからなんとか我慢できていると言っても過言ではない。

いずれにしても今のオレには必要なものだ。


さつきが毎週一人暮らしのオレの家に遊びに来るようになってから、割と早い段階でご両親に挨拶をさせてもらった。

「付き合う前提であそんでもらってる」とか

「高校卒業と同時にあっちも卒業」とか

さつきがご両親に色々話していると聞いていたので、とにかく親としては心配だろう、そう思っての事だ。

反対されていないとは聞いていたが、まともに会うのは数年ぶりだ。

そんなオレとの再会を2人はとても喜んでくれた。

詳しいところは割愛するが、応援してるから2人の好きなようにと・・・

門限とか卒業までプラトニックとか別にいいからねと・・・

その時は自分の気持ちもはっきりしていなかったしなんとも曖昧な返事になってしまったんだが、

さつきへの気持ちを自覚するのにそれほど時間はかからなかった。


お互いの気持ちが分かっているなら我慢する必要ないんじゃないか・・・

今まで何度自問してきたか分からない。

それでも5歳差のさつきと今後の人生を長く共に過ごす事を考えたら、

2人で決めた事を守っているというのはご両親も安心してくれるんじゃないだろうか。

だからオレの中ではさつきの卒業まで我慢する事に意味はある。


そう思いつつも今まで何度も危うい時はあった。

一番危なかったのは味見と称してふいに唇を舐められた時だ。

さすがに毎回やられては我慢する自信は無い。

その時に味見は今後禁止というのはちゃんと言っておいた。

さつきはたいそう不満そうだったが。



さつきと週末を一緒に過ごすようになってから平日の感じ方も変わった。

週末に幸せに感じる事ができるのは仕事のある平日のお陰と言っていいだろう。

おはようとかおやすみとか短めのメッセージのやり取りをするだけだけど

それだけでその日の仕事を乗り切ろうという気力が沸く。

そしていつからか金曜の夜は少し長めにビデオ通話するようになっていた。





いつもより遅い帰宅をしてさつきに電話をかける。

咲:〇〇お帰り。お仕事おつかれさま

〇:ああ、さつきもお疲れ。ごめんな今日遅くなって

咲:ううん、大丈夫だよ

〇:テストどうだった?

咲:へへー、今回はばっちり

〇:へぇ、そりゃよかった

咲:赤点無かったから明日はいっぱい褒めてね



基準そこか;;と思いつつ咲月の嬉しそうな顔が容易に想像できて笑ってしまう。

ん?

そこでようやくさつきのカメラがオンになっていない事に気づく。

いつもはすぐになるんだけどな。

一つ違和感に気づくと他にも気になる事が・・・

いつもより大きめな声の反響とか・・・

さっきから聞こえるちゃぽちゃぽって音とか・・・

〇:さつき、今ってさ・・・

咲:え、お風呂だよ

〇:え、あっ、そうか。ごめん;;;

風呂で電話するのは普通なのか;;;

5歳差でこういうところも感覚が違うんだろうか;;;

〇:後でかけなおすよ;;;

咲:え、待って待って切らないで。もうでるとこだから

焦ったようなさつきの声と同時にざぱぁっと浴槽から上がる音がする。

お風呂を出てタオルで全身を拭いて・・・

いけないと思いつつ耳から入ってくる色んな情報から今のさつきの姿を想像してしまう。

これは逆に話してた方がいいな・・・


〇:あの、明日なんだけどさ

咲:え、なんか予定ある?会えない?

〇:あ、そうじゃなくて買い物付き合ってもらっていいか?

咲:え!うん、いいの?

〇:さつきがよければ

咲:ふふ、〇〇とお出かけだぁ

まだ彼女じゃないのにデートは申し訳ないというさつきの謎の線引きがあるので、一緒に出掛けるのは買い物の時くらいだ。

線引きについてはお互いさまだが・・・


咲:何買うの?

〇:あぁあ、えっと色々見たいのがあって。ショッピングモールがいいかなと思ってるんだけど

咲:うんうん、嬉しい!!

〇:じゃあ明日は車で迎えに行くから

咲:え、いいの?

〇:ああ、何時くらいにする?

咲:何時でもいい!朝でも夜でもっ!!

〇:じゃあ昼前くらいかな;;;

咲:うんうんっ!!!


スマホから発せられる興奮気味の声から容易に想像できてしまった。

まだお風呂から上がったばかりのさつきの姿が;;;


【続く】




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